1月11日は、「あしたのジョー」を描いたマンガ家、ちばてつや(1939年)の誕生日だが、「塩の日」でもある。
これはご存じの方も多いかもしれない。
「塩の日」の由来は戦国時代にさかのぼる。
永禄11年(1569年)のこの日に、越後(新潟)の戦国武将、上杉謙信(うえすぎけんしん)が、宿敵である甲斐(山梨)の武田信玄(たけだしんげん)側に、塩を送ったとされる。
ことの発端は、駿河(静岡)の今川氏真が、敵方である武田領へは、今後、塩を売ったり運んだりしてはならないというおふれを出し、「塩止め」をしたことにはじまる。
この今川氏真という人は、あの桶狭間(おけはざま)の戦いで織田信長によって首を討ち取られた今川義元の息子である。父亡き跡、今川家を継いだそ当主が、一種の兵糧攻めに出たわけだ。
塩は海のある土地で作られるものなので、海のない山国である武田領の領民たちは困ってしまった。
その苦境を聞いた日本海側の上杉謙信は、それは卑劣なやり方だとして、
「われは兵をもって雌雄を戦いで決せん。塩をもって敵を苦しめることはせぬ。」
と言い放ち、越後の塩を敵方である武田側に送った、というのである。
上杉謙信は、武田信玄とは、北信濃の領有権をめぐって、12年間にわたって川中島でいく度も合戦した宿命の敵だったし、強力な軍事力を誇る武田側を封じる包囲網には大賛成だったが、領民の生活を苦しめる「塩止め」には与(くみ)しなかった。
ここから「敵に塩を送る」ということわざができた。
でも、実際に上杉側から武田側へ塩が送られたことを証明する記録もないとか、この美談は後に創作されたものだという説も聞くので、ことの真偽のほどは、よくわからない。
「敵に塩を送る」と聞くと、自分にはこんなことが思いだされる。
2003年、米国のブッシュ政権が、フセイン政権のイラクに対して大攻撃(イラク戦争)をしかけたとき、
「われわれは、独裁・弾圧のフセイン政権を敵としているので、イラク国民の味方だ」
と、一方で非人道的なクラスター爆弾を家々の上に雨あられと落としながら、同時に、食糧や衣料品の入った荷物をパラシュートを付けていっしょに落とすという滑稽なことをやっていた。
「爆弾で手足がふきとばされたら、この包帯で手当てしてくれ」
というわけである。
あれと「塩を送る」とは、ぜんぜん意味がちがうけれど、対比して考えると、戦国時代は、庶民にとってはとんでもないひどい時代だったけれど、まだのどかなものが残っていたのだなあ、と思う。そして、近代戦というのは、なんと殺伐としたものだろうと、目の前が暗くなる気がする。近年の日本をめぐる極東情勢が、その殺伐したほうへ着実に前進している気がするだけに。
上杉謙信の時世はこうである。
「四十九年一睡の夢 一期の栄華一盃の酒」
愛と平和を。
(2013年1月11日)
●おすすめの電子書籍!
『おひつじ座生まれの本』~『うお座生まれの本』(天野たかし)
おひつじ座からうお座まで、誕生星座ごとに占う星占いの本。「星占い」シリーズ全12巻。人生テーマ、ミッション、恋愛運、仕事運、金運、対人運、幸運のヒントなどを網羅。最新の開運占星術。
『1月生まれについて』(ぱぴろう)
ちばてつや、村上春樹、三島由紀夫、盛田昭夫、夏目漱石、ビートたけし(北野武)、デヴィッド・ボウイ、エイゼンシュテイン、スタンダール、モーツァルト、など1月誕生の31人の人物評論。人気ブログの元となった、より詳しく、深いオリジナル原稿版。1月生まれの教科書。
http://www.meikyosha.com