6月10日は、時の記念日。あの大化の改新をおこなった天智天皇が、671年に、はじめて水時計を設置して、鐘を打って時を知らせたのが、この日だという。
6月10日は、『かいじゅうたちのいるところ』の絵本作家、モーリス・センダック(1928年)が生まれた日だが、内燃機関(エンジン)の発明者、ニコラウス・オットー(1832年)の誕生日でもある。
いまはそうでもないけれど、自分は若いころ、クルマが好きで、エンジンのおおよその仕組みは知っていた。直列6気筒エンジンや、DOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)エンジンにあこがれた。オットーは、そうしたエンジンを最初に作った人である。
ニコラウス・アウグスト・オットーは、1832年、独国のホルツハウゼンで生まれた。父親は農業を営んでいて、郵便局もやっていたらしい。学校を終えて、商家で丁稚奉公した後、小型エンジンの研究をはじめた。
32歳のとき、ケルンで、友人のエンジニアと組んで共同経営者となり、世界初のエンジン製造会社を設立した。
オットーは、はじめ2ストローク・エンジンを開発したが、やがて、会社にダイムラーとマイバッハの2人が加わり、4サイクル・エンジンの開発に乗りだした。
4サイクル・エンジンとは、
1 吸入、
2 圧縮、
3 燃焼・膨張、
4 排気、
の四つの行程でもって、エンジン内で起こした爆発の動力を回転運動にかえていくものである。この四つの行程のあいだに、ピストンは2往復する。
そうして完成されたのが、「オットー・サイクル」と呼ばれるエンジンで、現在でも自動車やオートバイに使われているものである。
オットーは、1891年1月に、ケルンで没した。58歳だった。
ダイムラーとマイバッハは、オットーたちと別れて、小型のエンジン開発に専念しだした。できた小型エンジンを馬車に取り付け、クルマとした。彼らの自動車会社がその後、ダイムラー・ベンツ社となり、メルセデス・ベンツ社となった。
いまの若い世代は、そうでもないらしいけれど、自分が若いころは、クルマにとても興味があった。お金はなかったが、なんとか貯め、かき集めたお金で自分のクルマを持った。
オンボロ中古車を持ってみると、エンジンはどういう仕組みなのかとか、DOHC、ターボ・チャージャー、スーパー・チャージャーとは何かとか、耳学問で覚えるようになった。
別にこういうことを知って、なにかのためになるとかいうのではないけれど、そういう知識に触れたり、話題にしたりするのが、純粋に楽しかった。
高校へ教育実習に行ったとき、ある日、政治・経済の授業を臨時のピンチヒッターで任せられたことがあった。社会科と関係のない何を話してもいいと言われたので、受験をひかえた高校3年生たちに、この内燃機関の話をした。DOHCエンジンやターボ・エンジンについて熱く語り、語ったこちらは楽しかったのだけれど、聞いていた彼らは、どんな風に思ったことだろう、と、いま考えると、彼らに同情を禁じ得ない。
オットーは、歴史学が専門の自分への教訓となる、こういうことばを残してくれている。
「大事なのは、歴史を作ることであって、それを書くことではない」
(2013年6月10日)
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