1/9・解放者、ボーヴォワール | papirow(ぱぴろう)のブログ

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1月9日は、フェミニズムの仏作家、ボーヴォワールの誕生日。
シモーヌド・ボーヴォワールは、1908年1月9日、フランスのパリの裕福な銀行家の家庭で生まれている。
彼女の一家は、敬虔なカトリックで、少女時代のボーヴォワールはとても信心深く、将来は尼僧になろうと考えていたという。
しかし、14歳のときに信仰心がくずれる体験をし、考え方を180度転換して無神論者となる。
ソルボンヌ大学で哲学を専攻したボーヴォワールは、メルロ・ポンティや、レヴィ・ストロースといっしょに教育実習をした後、教授資格認定試験の準備をしているときに、ポール・ニザン、ジャン・ポール・サルトルに出会う。
なんだか、フランス知識人のオール・スターたち一堂に会したような景色である。
後に実存哲学を掲げて20世紀思想界のスターとなるサルトルは、生まれつきひどい斜視で、小男だったが、ボーヴォワールと気が合った。
ボーヴォワールが21歳のころ、彼らは恋仲になった。
ある日、ルーヴル宮殿の庭のベンチに彼らは並んで腰かけていた。サルトルはこういったという。
「2年間のリース契約にサインしようじゃないか」
彼らは、正式には結婚しない、たがいに相手を束縛せず、自由恋愛を認め合うという特殊な恋人関係の契約を結び、それは2年だけでなく、生涯つづいた。

ボーヴォワールは高校の教師になり、仕事のかたわら、小説を書きはじめた。
35歳のとき、彼女は最初の小説『招かれた女』を出版する。これは、自分とサルトル、そして自分の教え子である姉妹とのあいだに起きた恋の三角関係、四角関係を小説化したものだった。

41歳のとき、代表作『第二の性』を発表する。
「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」
という有名な一節のある本で、「女性」というものを哲学的に考察した革命的な内容だった。
彼女のいわんとするところは、自分の理解の浅さをかえりみずいうなら、どうやらつぎのようなことらしい。
この男性中心の社会では、男こそが主体であり、絶対的な存在で、男がすべての価値基準を決めている。
男によって決められた「女の定義」を、女は引き受け、その定義にあてはまる「女」になろうとする。
女は他者であり、隷属的、相対的な存在である。
女は「第二の性」つまり、劣った性で、それは男によって都合がいいように作られた性なのである。
と、ボーヴォワールは、古代からずっと女に押しつけられてきた「女らしさ」「女の役目」といった概念のうそをあばき、女性たちは男たちの勝手な定義から解放され、自由になるべきだと説くわけである。

自分は歴史学を勉強していて、とくに米国の1960年代のコミュニティー史が専門なので、フェミニズム(女性への差別撤廃、女性解放論)についても、すこし知っている。
コミュニティー運動は、ヒッピー、学生運動、そして、ウーマン・リヴ(女性解放運動)とも時代が重なり、影響しあっているからである。
でも、自分が読んだのは、エリカ・ジョングとか、グロリア・スタイネムとか、米国女性が書いたものばかりで、フランスのものはほとんど読んでいなかった(不勉強なやつなのです)。
ボーヴォワールの名前は、もちろん中学生のころから知っていたし、その主張するところも、おおまかには知っていた。が、まともに読んだことはなかった。
もちろん、まずボーヴォワールがいて、そこから女性解放、フェミニズムが流れだし、世界に広がり、すこしずつ男女差別が取り除かれていったわけで、あらためて、えらい先人がいたのだなあ、と思うわけであります。

いまの日本の若い女性たちは、ボーヴォワールの恩恵を確実に受けていると思うけれど、果たしてどれだけの人が、それを意識しているかどうか。
昔から比べたら、ずいぶん女性にやさしい社会になったとはいえ、それでも現代の日本では、まだまだ女性への差別は多く残っていて、男性に有利なことが多く、改善の余地が有り余っている状態だと思う。
そういうことを、日本の男性も意識するべきで、その意味で、現代の中高年の男性こそ、ボーヴォワールを読む必要があると思う。
自分もちゃんと読んでみたいと思います。

ボーヴォワールは72歳のとき、サルトルの死をみとった。
そうして1986年、78歳で没している。
2人は、パリのモンパルナスの墓地に並んで眠っている。ひとつ墓石に、ふたりの名前が仲良く刻まれているらしい。
(2013年1月9日)



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『1月生まれについて』(ぱぴろう)
ボーヴォワール、デヴィッド・ボウイ、モーツァルト、盛田昭夫、夏目漱石、ビートたけし(北野武)、ちばてつや、ジョン万次郎、村上春樹、三島由紀夫など1月誕生の31人の人物評論。人気ブログの元となった、より詳しく、深いオリジナル原稿版。1月生まれの教科書。

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