ボブ・ウェルチ頌 | papirow(ぱぴろう)のブログ

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Something to remember today. 今日の日が流れて消え去ってしまう前に。

 このところ、ボブ・ウェルチの曲を聴いています。意外にヒット曲があるなあ、と気づきました。「センチメンタル・レイディー」とか「エボニー・アイズ」とか、あるいは「プレシャス・ラブ」とか。ユーチューブでも聴けます。
「プレシャス・ラブ」のイントロは、ちょっと聴くと、稲垣潤一の「想い出のビーチクラブ」かしら、と迷いますが、でも、すぐに1970年代当時の、あのひょろりスマートなボブ・ウェルチが美女たちに囲まれながら、余裕綽々で踊り歌うイメージが頭のなかに広がってきます。ブルース・スプリングスティーンの汗くささや、U2の雄叫びなどとはおよそ縁遠いところにある、肩の力の抜けた、お洒落でダンディな大人のポップ・ロックの世界で、不況下で就活や婚活に励む現代の若者たちには想像しづらいかもしれませんが、かつてはそういう雰囲気のなかで青春を生きた世代もあったのでした。
フリートウッドマックやパリスの主要メンバーで、ソロでも活躍したボブ・ウェルチは、先月6月7日に、テネシー州ナッシュビルの自宅で、胸を撃ちぬいた遺体で発見されました。ピストル自殺で、遺書も見つかっています。
 自分が聞いた報道によると、ボブ・ウェルチは、亡くなる3カ月ほど前に脊髄の手術を受け、医師からよくなる見込みのない旨を宣告されていて、これから先この不自由なからだの自分を介護する苦労を奥さんにかけたくないと奥さんに話していたそうで、つまり奥さんの未来の長い苦労を慮って、銃口を胸に当てた、ということのようです。自殺の動機は単純でなく、異説もあることでしょうが、もしも主要な動機がその通りだったとすると、ボブ・ウェルチは最後まで彼なりのダンディズムを貫いたと見ることもできます。
「プレシャス・ラブ」の印象的な一節、
「For your love, your precious love,I'd do anything, yes I would.
(きみの愛のためなら、きみの尊い愛のためなら、ぼくはなんだってするよ、ああ、するとも)」
を口ずさみながら、彼は銃を手にとったのかもしれません。そう考えていくと、一見単純素朴と見えるこのラブソングの歌詞が、意外な深さをもって胸に迫ってきます。
いまは亡きボブ・ウェルチの音楽と人生を祝福したいと思います。
(2012年7月17日)