この頃、心に止めていつも思っていた一つの出来事がありました。

その出来事は30年前にテレビのニュースで見たことでした。

ドイツの猟師さんが犬を4匹飼っていて、そのうちの3匹は血統書付きの立派な狩猟犬でしたが、残る1匹は名もない雑種犬でした。

雑種犬は山に捨てられていたのを可哀想に思って、おじさんが拾って飼っていたのです。

おじさんはとてもいい人で4匹を分け隔てなく慈しんで育てていました。

ある日、いつものようにおじさんは4匹を連れて森へ狩りに出かけました。

狩りの前に4匹をお座りさせて
「待て!」の命令をすると突然背後から大きな熊がおじさんに襲いかかりました。

犬たちはすぐにでもおじさんを助けたかったのですが「待て」の号令がかかっているので動くに動けず、ただおじさんが襲われているのをじっと見ているしかありません。

と、そこへ猛然と例の雑種犬が飛び出して熊に立ち向かって追い払い、勇敢にもおじさんを助けたのでした。

この4匹の中で本当に利口だったのはどの犬だったんだろうかと考えました。

言いつけをしっかりと守った血統書付きの狩猟犬だったのでしょうか?

言いつけを破りおじさんを助けた雑種犬だったでのしょうか?

4匹の中で誰かの言いなりではなく、自分の頭で考えたのは唯一「雑種犬」だけでした。

「誰かの言いつけをキチンと守るいい子ちゃんではなく、逆らってでも自分の頭で考えて行動しなければ熊に喰われてしまう。」
と、この雑種犬を通して強く思わされました。

病院とのやり取りの時は、いつもこの話を思い出して、
「考えなければ喰われてしまう。」
と肝に銘じて頑張っていました。