Sさんに思いきって父のことを相談してみました。

私はクリスチャンなので苦しい時は聖書の詩篇三篇に支えられてると言って、うる覚えに暗唱してみせました。
するとSさんは、
「私は身を横たえて眠る。私はまた目をさます。主がささえてくださるから。私を取り囲んでいる幾万の民をも私は恐れない。」
と正確に聖句を暗唱してみせました。

驚いて、
「Sさんってクリスチャンなんですか?」
と聞くと
「私は教会に行ったことはないし、聖書も読んだことはありません。うしろの方が教えてくださるんです。」
と言いました。

「うしろの方って…💧」
と困惑している私にSさんは、
「熱田神宮にお参りをするとお父さんが良くなるとうしろの方がおっしゃってます。」
と言いました。

無知な私は、
「熱田神宮ってなんですか?」
と聞くと名古屋にあるとても格式の高い神社だということでした。

「名古屋なんてとんでもない。私は父親の世話で行けないし、ましてや父を連れてなんて不可能です。」
と言うとSさんは、
「そうですか…」
と残念そうにしていました。

夕方になって父の病室を訪ねると何だか様子が変わっていました。

部屋の中がとても明るいのです。
(電気かえたかな?)
と思っていると明るいだけではなく空気もとても爽やかに感じました。

すると後ろから元気な女性の声が聞こえてきました。
「今日からお父さんの担当になりました!よろしくお願いします。一生懸命お世話するんでお父さん元気にしましょうね!」
と米倉涼子似の背の高い看護師さんがガッツポーズをして立っていました。

慌てて挨拶をして名札を見るとなんと「熱田」と書いてありました。

熱田神宮にお参りに行けない私のために神様の方からわざわざ来てくださったのかと拝みたくなるほど感動しました。

この熱田さんは父のために本当に尽くしてくださり、食事時に行くと
「今日は7割まで食べさせられましたよ!」
と喜んで報告して、
「寝たままにさせると本当に寝たきりになるから」
と父を車椅子に乗せてあちこち連れ回してくれました。

そんな熱田さんに父は感謝一つしないばかりか酷い悪態をついて毒づいているのに熱田さんはそんなことは一向にお構いなしの様子で世話をしてくれました。

ものすごいポジティブエネルギーです。

そのおかげで父は食欲も少しずつ戻り、体力も付いて元気になってきました。