父の仕事場への送り迎えは私の役割でした。

毎日片道1時間かけて車で勤務先の病院まで送って行くのは大変でしたが、高齢の父が頑張っているのだから私もこれくらいやらないと、という思いで送迎していました。

病院の待ち合い室で父の仕事が終わるのを待っていると患者さんの色々な会話が聞こえてきます。

「ここの先生いーのよー。何でも言うこと聞いてくれるの。薬も何でもいっぱい出してくれるから助かるわよ~。他の病院の先生なんて1週間しか出してくれないのよ。」
と年配の奥さんたちが話してるのを何度となく聞きました。

その度に、
「そういうのっていい先生っていうの?(-_-;)」
と疑問に思いながらいつも聞いていました。

そういう理由かどうかは知りませんが、待ち合い室はいつもいっぱいで、父は毎日100人もの患者さんを診ていました。

外来だけではありません。

小さな個人病院のため医師が少なく、外来の他、訪問でも診察し、入院患者さんも診ていました。

断れない性格で、いくら辛くても愚痴一つこぼさず、
「こんな年寄りを雇ってくれるんだから感謝しないと」
と言って毎日一生懸命働いていたのです。

でも、ある日、突然心臓が苦しいと車の中で呟き、帰りはいつもプールで泳ぐのが日課でしたが、その日はそのまま帰ることになりました。

その夜から毎晩眠れなくなってしまい、苦しさで起き上がれなくなりついには働きに行けなくなったのです。