ariさんは遊んでばっか

ariさんは遊んでばっか

面倒くさいと思いつつ、好奇心は旺盛。
好きなこといっぱい、楽しいこと大好き。

化粧なんてどうでもいいと 

思っていたけれど

せめて今夜だけでも

きれいに なりたい

 

これは中島みゆきさんの

「化粧」という曲の冒頭の歌詞だ。

 

遠い昔、みゆきさんのファンだという職場の同僚男性の前で

この一節をふざけて歌ったことがあり

特に

 

「きれいにあせる なりたい~い~いあせる

 

の部分をみゆきさんの歌に似せて歌ったところ

鬼気迫る切実感があったためか、

はたまた少しariの声の音色がみゆきさんに似ていたせいだったか

大爆笑とともにものすごく大ウケした、という思い出がある。

 

とはいうものの、

ariは、昔から化粧というものが好きではなかった。

顔に彩色を施すというための粉だのクリームだの

蛾や蝶の羽根を覆う鱗粉のように思えたし

なによりも

自分を自分ではない

なにか上等なものに見せようとするちょっと姑息な行為のように思えて。

 

ariは以前カルチャースクールで礼法を学んだ経験がある。

講師は60代後半か70代前半ぐらいとおぼしき女性の方だったが

講座が始まってすぐに生徒に向かって

 

「女は肌です!!」

 

と自信たっぷりに断言した言葉を聞いた瞬間、ariは悶絶しながら心の中で叫んだ。

 

「授業料、返せ!!むかっ

 

「虎に翼」の寅子さんだったらやっぱり「はて?」と言っただろうか。

女性の肌は礼法と何の関係があったのか、今もってわからない。

わかったのは、この方の持つ自分を含めた全女性に対する価値観だけだった。

 

まあ、万事がそんな調子だったから、昔からおしゃれにはほとんど興味がなく、

従ってそういうことに絶えず強い関心を持っている人達からは

少し距離を置いていた。

 

それでも同調圧力に打ち勝つ勇気もなく

女性の身だしなみのひとつだからということで

就職2年目ぐらいからは自己流の簡単な化粧をするようにはなったと思う。

 

先頃のコロナの流行によるマスクの着用は

ariにとってはもっけの幸いで

嫌いな化粧をせずに済む免罪符を得たようで有り難かった。

しかし沈静化とともに免罪符の効力は失われた。

 

そんな折。

 

ariは、オニュが何かの動画の中で話している言葉を聞いた。

 

「もうすぐ撮影だから、きれいに撮ってもらえるように僕、頑張らなくちゃ」

 

この言葉を聞いて、ariは少し心がズキンとした。

そうか。きれいに撮ってもらえるよう彼は食べたいものを我慢したり節制して

メイクもバッチリして頑張るのかあ。

これもやっぱり、彼にとっては仕事をしていく上での努力のうちなのだな、と。

 

2022年8月、日本での活動のために宿舎についたばかりのオニュは

本当は疲れていて休みたかっただろうに

持ち込んだばかりの自分の荷物を実況しながら片付けているvlogをあげていた。

 

その中に大きめのチャック付きビニール袋にぎっしり入った化粧品やスキンケア用品があり、

本当に律儀に一つ一つ説明しながらそれらを片付けていた。

彼の飾らない人柄や真面目さが伝わる動画だった。

 

正直、男性に化粧や化粧品を語られることについては、

ariはまだ心のどこかに多少の抵抗感はあるのだが、

 

このvlogを見ていて

オニュのような職業の人がしているビジュアルのケアというものは

自分が人から美しいと思われたいというほどのちっぽけな煩悩というよりは

「皆さんにかっこいい姿をお見せできるよう頑張ります」という

本気で大真面目で切実な努力なのだとつくづく思う。

 

何でもネットで世界中に拡散される時代だが

レコーディングやダンス練習風景、ゲネプロなどでは

いくらアイドルとはいえども

カメラはあってもオニュも他のメンバーも私服ですっぴんのことが多いようで

何が何でも素顔がだめなんじゃなく、ちゃんと本気の度合いを使い分けている。

 

人気アイドルのビジュアル事情を

ariなんぞが自分に引き寄せて考えられる部分などありはしないが、

それでも、化粧をするという行為

それもある意味、自分が自分にしてやれるひとつの努力なのではないか。

自分はただ、この努力をしたくなかっただけではなかったのか、と

なにやら少しariは今までの自分に対して反省したのだった。

 

ariはいまだに、ちゃんとしたメイクの仕方なんて知らないし

今さらそんな努力が必要だろうかと誰かに嘲笑されるかもしれない。

それでも、

普通は出来れば公にはしたくない類いの努力について

オニュはなんの衒いもなく、あまりにも真っ直ぐに話すから

 

それまで頑なに凍り付いていたおばさんの心が

少し溶かされはじめたようだ。

 

そうか。

努力も悪くない。

 

ありがとう。オニュ。