∼ 車椅子 ∼

今まで
車椅子に
乗られている方の
気持ちに
寄り添ったことがなかった

車椅子のグリップを
初めて握ったときに
私は
心が「どきり」となった
「命」を
預かっているのだと..

御婦人のお宅から
スーパーマーケットまでの距離
それから
スーパーマーケット内の散策 
それはそれは
危険と隣合わせ

気がついたことは
自転車が
びゅんびゅんとすり抜けたり
大型車が
猛スピードで車椅子の横を
通り過ぎたりと
正直怖くてたまらなかった
スーパーマーケットに到着して
安堵したのもつかの間で
たまたま
気づいたことは
車椅子に座っている御婦人の
目線辺りに
歩きながら買い物をしている
買い物カゴが
サーッと横切る
危ない
顔に当たったら
どうするのよ、
まったくもぅと
思いながらの
今度は
買い物カートが
突進してくるも
ギリギリのところで
避けるという..
車椅子の御婦人は
目線が立っている人より低いのッ
だから
あまりいい気分はしないと思う
私でも
顔の前に何か振り回されたら
不愉快だし

スーパーマーケットを
なんとか散策出来たのだが
ここでもまた難関に直面する
立っている人よりも
目線がどうしても低いために
高い位置に置いてある商品が
みえないのだ
自分の手に触れて商品を
チェックしたくても
気を遣われてのか?
遠慮をしていたのか?
わからないが
私は
高い位置あるものを
事細かく説明し
手に触れて確認したいものを
渡してあげた
結局は
要らなかったんだけどね

「はんぺん」1個買うのでも
色んなブランドがある
欲しいものを
手に取ってみたいのは
皆同じことで
車椅子の人だけが
届かないから
これで
妥協とかしてしまうのは
違うって思った
だから私は
「はんぺん」のブランド
ぜーんぶ手に取り
ひとつひとつ
見せてあげた

もしかしたら
それって
おせっかいかもしれない
面倒くさぃと
思われたかもしれない
でもその御婦人は
「はんぺん」
ひとつひとつ
見てから
納得したものを
カゴにいれてくれた
人の波を避けながら
無事買い物は終わった
やはり買い物は
楽しくなきゃだね
とても学ぶ事の多い1日だったよ



∼ 手の傷 ∼

手が傷だらけなもので
見られるのが
恥ずかしいと
父に愚痴をこぼした

お酒を飲みながら
チラッと
私の手を見た父が
こう言った

「一生懸命、
働いてできた傷なんだから
恥なんて思っちゃ絶対だめだよ」

おやすみなさいの
挨拶をするとき
必ず
お互いの眼をみながら
「それじゃあね」と
微笑み
敬礼をするのが
恒例のスタイル
今日も
もちろん敬礼してね

帰り道、目頭が熱くなった
父のひと言に
優しさを感じたから