癌患者モラ夫の闘病中、辛かったことがいくつかある。
その最たるものが「食ハラ」
私はそもそも料理が好きでない。
当然、己も食べるから単に「必要不可欠なこと」としてやってきた。
結婚後初期の頃は、モラ夫も食事にうるさい奴ではなかった。
大阪某所のマンションに住んでた時、隣に生鮮専門のスーパーができた。
肉はどうやったか忘れたけど、野菜やら魚やらが良質で非常に安かった。
私は毎日のようにそのスーパーに行った。私の好物の「ちりめんじゃこ」なんか、ニイちゃんが升にてんこ盛りに入れてくれた。
で、毎日「お造り」を買い、日々宴会状態だった。今思い出すと懐かしいな。
奴は関東出身で、私は関西やから、最初から味の違いはあったが、昔はそれをいちいち指摘することもなかった。
モラ夫の舌が肥えてきたのは、2000年以降に第2の会社に入って、取引先のニイちゃんと「北新地」に繰り出すようになってから。
そら新地の店の食いもんと私のクソ料理は雲泥やろ。
味付けやらにいちいち文句言うようになりやがった。
その時から料理がさらに嫌いになった。
癌になってからは、抗癌剤による「味覚障害」が加わって、モラ夫の食事に対する「こだわり」はさらに激しくなった。
しかし、味覚障害なんで、ある時は「味が薄い」といい、濃~~~~くしたったら、今度は「最近は関西風が気に入ってる」とかぬかしやがるし。
「酸っぱいのやったらイケる」ちゅうてたのに、ある日突然、「酸っぱいのはアカン」とか言い出す始末。どないせ~ちゅうねん。
しかも、ストーマ造設してるから、ウンコが固まるもんはアカンて。
人参は消化せんとそのまま出てくるからちゅうて食わん。
他にもキノコも豆類も消化せーへんとか言い出した。
ほな、何やったら食えんねん?
もう毎日何を作るか考えること自体が苦痛になった。「苦痛」以外の何もんでもなかった。スーパー行っても「あ~、イヤや」と思うだけになった。
さらに、2週間ごとの抗癌剤治療で通院してたが、その日は帰ってくるなり「腹減った~~」て言い出すし。
でもな、病院にはローソンもあるし、軽食とれるとこもあるし、持ち帰りもできるんやで。何で何か買うて来ーへんのか。
だから、通院日、私はてんてこ舞いやった。
モラ夫がいてないことはルンルンやったけど、やるべき雑用はてんこ盛り。
まずは掃除。こんな狭い家に「闘病」人がおる中で掃除なんかでけへんが。
いつ寝とるかも分からんし、しかも、コッチのやろうが掃除機を敵と見なして、
ワンワカ・ワンワカ言いながら掃除機に挑んできよるからな。
ちゅうわけで、モラ夫がおる間は掃除機は不可。
で、奴がおらん間に、コッチをベランダまたは庭に隔離してから掃除機をかけた。
しばらくはワンワカ・ワンワカうるさいけど、そのうち静かになる。
ほんで、その後で「腹減った~~~」のために昼食の準備。
点滴抗癌剤(FOLFOX、FOLFIRI)の時は、時間がかかったから余裕でできたけど、飲み薬(ロンサーフ)になってからは、もう時間ギリギリ。てんてこ舞い。休む暇もない。思い出したくもない。
今、「食ハラ」から解放されたことが一番うれしい。
またしても私は、味付けにこだわることもなく、「適当」に何か作って食えるようになった。楽ちん、楽ちん。