名著ということで、やはり先日高橋俊介さんからオススメいただいた『タテ社会の人間関係』を読了しましたので、紹介したいのであります。1967年に出版された書籍でありますが、現在でも十分通用する普遍の理論であります。
以下、要約。


この論文は、日本社会をフォーマル・ストラクチュア(formal structure)といったはっきりと制度化され、誰でも明確に捉えられる組織(学校・行政機関・官僚制・企業体組織)に主眼をおかず、インフォーマル・ストラクチュア(informal structure)という顕在的には現れていないが、実際の人間関係を規制する重要な役割をもつ、見えない潜在的な組織が社会の原動力と捉え、その分析を試みたものである。

その分析を行うにあたり、本書では社会集団の構成の要因を、資格(構成員に共通したもの、氏、素性、学歴、地位、職業、資本家、労働者、など)によるものと場(一定の職業集団、所属機関、地位域、など)によるものに分類し、どちらの要因で社会構造が構成されているかで、社会が特徴づけられている。日本社会の場合はいうまでもなく場で構成されている。例えば、日本では○○会社の古代さんが重要でり、○○という職種の古代さんは重要ではない。○○大学の古代さんが重要であり、○○という学部で○○を勉強しているといった部分はさほど重用視されないのである。これは、資格というより場の力が大きく働いているといえる。

その場の共通性によってうまれる集団には組織が生まれていく。本書では「タテ」の組織と「ヨコ」の組織という表現を使っている。「タテ」の関係は、親分・子分関係、官僚組織に象徴され、「ヨコ」の関係は、カースト、階級的なものに象徴される。場を優先する日本社会においては、いうまでもなくタテ社会となり、そのタテ社会での序列は平等主義を重んじる日本において、能力主義ではなく能力平等主義に端を発した年功序列であった。日本人は人間の能力は平等であり、誰でもやればできるといった考えがベースにある。例えば学歴主義を見てみよう。学歴で一律に個人尾能力を判定することは能力主義というよりも反対に能力平等主義である。なぜなら学歴で能力が違うということは、誰でも在学一定年数分だけ能力をもつということになるから、個人の能力差を無視した考え方になるからである。学歴一律主義や極端な学歴反対主義は、いずれも能力平等観という本質的に同じ信念から生まれており、違った表現をとるのは主張者の条件・利害が相反しているにすぎない。

このタテ社会と能力平等主義のデメリットは、実際に読んでいただきたいので割愛をさせていただきたいが、「ヨコ」社会の厳しさにふれ、「タテ」社会のメリットの部分を引用をもって説明したい。

「タテ」社会にある平等主義は個々人に(能力のある者にも、ない者にも)自信をもたせ、努力を惜しまず続けさせるところに大きな長所があるといえる。そして、「タテ」のリンクは、そうして努力をしてきた個人にとって、またとない上昇するためのはしごを提供をする。

例えば、日本を代表する大学である東京大学と、イギリスを代表するオックスフォード大学を比べてみよう。日本の東大は魚屋の子であろうが、水飲み百姓の子だろうが、実業家や教授の子供であろうが、東大というものを通過することで同列にたちうる。教育機関というものが社会層の差をなくすか、ミニマムにするほどの機能を日本はもちうるものである。しかし、後者においては、ジェントルマンの子弟はだいたいオックスフォードにいくから、オックスフォードの特色が出るのであって、労働者の息子はオックスフォードに行っても、下層出身者ということは一生ついてまわる。すなわち、教育機関というものは、社会層の差に対して、そして機能をしていないのである。
したがって、社会的に機能をもつものとして、学閥か階級かという対称がここにみられる。日本で学閥が避難をされることがあるが、階層間のモビリティ(移動)があるというよさは忘れてはならない。


筆者はグローバル化やダイバーシティなどに関心をもっているが、このような古典的な著書から日本社会の構造を知ることは必須であると読了した後強く感じた。日本のような単一的で同質的な民族からなる国は世界広しといえど見当たらないわけであり、このような組織にダイバーシティをインクルージョンしていくことは一筋縄ではいかないのである。また、日系企業が海外進出を行う際も、現地の人材を活用し、現地のマネジャとコミュニケーションをとる際も、我々の社会はどのような構造をもち、彼らの国の社会構造とどのように違うのか、を知っておくことはとても大事であると考える。
己を知って、初めて他者を知ることができる。この名著を読了した後、このように感じた。世界のフラット化が進むなかでビジネスを展開するには、我々は一体何者なのか、どのような民族であり、他国の方々とどのように違うのか、を理解することは最重要であるといっても過言ではない。そう思うため、この名著を強くオススメしたいのであります。


タテ社会の人間関係 (講談社現代新書 105)/中根 千枝

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