中島みゆき、さん、について語るなんて、おこがましい。

本当に、語りつくせるような存在ではなく、語っていいほど、生涯を通して心酔しているわけではない。

 

なので、わたしが垣間見た、ちょっとしたホラーについてだけ、記録しておこうと思う。

 

ことの発端は、NHKアーカイブスで、中島みゆき、さん、のヒット曲を立て続けに聴いたことだった。

語るまでもなく、圧倒的なメッセージ性と、感情を揺さぶるメロディライン。

 

わー、やっぱすごいわー

 

実は、小学生の頃からアルバムを聴いていて、その当時の楽曲については、ほぼ暗唱できるくらいには聴き馴染んでいたのでした。

 

そこで、Spotyfyで全曲シャッフルをかけてみたのですが…

 

こどもだった当時は、中島みゆき、さん、の歌の歌詞など、これっぽっちも分かっちゃいなかったのだよね…。

 

 やまねこ

  女に生まれて 喜んでくれたのは
  菓子屋とドレス屋と女衒と女たらし
  嵐あけの如月 壁の割れた産室
  生まれ落ちて最初に聞いた声は 落胆の溜息だった

  傷つけるための爪だけが
  抜けない棘のように光る
  天からもらった贈り物が
  この爪だけなんて この爪だけなんて

 

「生まれ落ちて最初に聞いた声は 落胆の溜息だった」

 

 

 ファイト

  あたし男だったらよかったわ 力ずくで男の思うままに
  ならずにすんだかもしれないだけ あたし男に生まれればよかったわ

 

「力ずくで男の思うままに
  ならずにすんだかもしれないだけ」

 

 

わたしが就職したのは、男女雇用機会均等法が成立したあとのこと。

運良く大企業で働いている分には、男女のあからさまな差別を感じる機会はなかった。

それどころか、ゲタまで履かせてもらったかもしれない。

 

旦那はやさしくてうまいこと尻に敷かれてくれる、草食系おじさん。

 

女だから、なんて卑下する機会はなかったはずだった。

 

 

だから、なぜ?この歌詞に引っかかるのか? なぜ?わたしの痛みを歌ってくれる、と共感してしまうのか?

 

おそらく、

「生まれ落ちて最初に聞いた声は 落胆の溜息だった」

「力ずくで男の思うままに
  ならずにすんだかもしれないだけ」

これらの言葉は、公共の電波に乗せてはならない言葉なのだ。

 

小賢しい女は嫌われる。

(「逃げ恥」より)

同じく、女の権利を主張する女は嫌われる。

 

男女差別はない。性差はない。

これが、公共の電波に乗せて良い、公式見解なのだ。

 

でも、だったらなぜ、今わたしは毎日料理して、洗濯して、旦那の転勤につきあって退職(してないけど)したんだ?

 

 

王様の耳はロバの耳

なんて、現実で大声で叫んだら、あっという間に異物扱いされてはじき出される。

 

女は非力で卑怯で、媚を売る小賢しい動物だから、

嫌われると分かっていることなんて、あえてしないんである。

グロテスクな真実は、女でも男でも、見たくはないんである。

 

公共の電波に、だれもが目を背けたくなる異物を放り込み、

恐る恐る覗いたひとを虜にしてしまう。

見てはならないものを見せてしまう。

中島みゆき、さん、のホラーの世界。