「パパ 当選したよ」 #31
「こんにちは~」
「はーい」
「高橋さんからご紹介頂きました、吉川と申します。」
「あ~、お聞きしてますわ。 少々お待ち下さいね。開けますから。」
遠藤さんの奥様が玄関を開けて出てこられた。
「あれ? 吉川さんてこんなにお若い方でしたの?」
インターホンを押して対応したのは雄太君だ
「いえいえ、私はボランティアでお手伝いしている者です。吉川さんはこちらの方です。」
「そうですの、お若いのに政治にご興味があるって立派ですわね。」
「ありがとうございます。吉川さんとこの町を変えたく応援しているんです。」
「まぁ、どうぞ中へお入り下さい」
「失礼します。」
応接間に通され、しばらく待つ事になった。
「雄太君て度胸あるね」
「何でですか?」
「私は、未だにインターホンを押すときに緊張するんだ・・・・」
「そうなんですか? 僕は全然平気です。 だって悪い事している訳ではないですから」
その通りだ、別に決して悪い事をしている訳ではないんだ。
自信を持っ て堂々と進めばいいんだ。
「パパ 当選したよ」 #30
「そうだね、それはいい案だ。若い人が集まってくれれば、注目されるしね。」
「市内の友人に声を掛けてみますよ。」
「えっと、それは嬉しいんだけど、ちゃんとみんなに会わせてもらってもいいかな?」
「面談ですか?」
「面談とかじゃなくて、私の考えをちゃんと話しをして、それでも応援していいって思ってからにして欲しいんだ。ただ知り合いからの紹介だからって無条件に応援するのっておかしいでしょ?」
私が昔から疑問に思っていたことだ。
候補者のことを何も知らないのに、知り合いの依頼だから投票するって言うのはいかにもおかしい。
「確かに、票は増えにくいかもしれない。でもそうして応援してくれているひとの一票の方が確実でしょ」
「言われていればそうですね。じゃ友人に会ってから決めてもうらいましょう。」
雄太君がキチンと理解をしてくれた事が嬉しかった。
「明日は、朝大丈夫なの?」
「はい。」
「じゃ、明日の朝からビラ配りの手伝いをお願いしていいかな?」
「大丈夫です。まかせて下さい」
「それじゃ、明日の朝5時に事務所に来てもらえる?」
「5時ですね。 で、今日はこれからどうするんですか?」
「今日? これから、紹介してもらったお宅にお邪魔しにいくんだけど。」
「ぼくも一緒に行っていいですか?」
「いいけど、退屈かもよ。」
「吉川さんがどんな話しをするか、相手がどんな質問するか聞いてみたいんです。」
「まぁひとりで回るより気が楽かもね。」
そんな気楽な考えでOKをしたが、これが意外と(と、言ったら失礼かな)凄い事になっていった。
「パパ 当選したよ」 #29
「それはね・・、その前にお茶でも入れようか。多分長くなると思うからね。」
「あっ、僕が入れますよ。お手伝い初日ですから。」
「そう、ありがとう。じゃお茶の葉やコップの場所を教えるね。」
手際よくいれたお茶を二人で飲みながら、話しはじめた。
「えっと、まず何で立候補しようと思ったかだよね。」
「はい。」
「それはね、一番のキッカケはまず子供の事を考えたからかな。」
「お子さんおいくつなんですか?」
「まだ、幼稚園だよ。」
「そうですか、お小さいんですね。」
「息子がね、あっ、ひかるって言うんだけど、これからこの町で成長していく中で、いつまでも住み良い町でいて欲しかったんだ。」
「住み良いって、暮らしやすいと言う事ですか?」
「住み良いって色々な意味があると思うんだ。都会的なのも住み良いだし、自然が残っているのも住み良いでしょ。」
「そうですね、確かに」
「私はね、ありきたりかも知れないけど、都会と地方の融合された町作りがしたいんだ。」
「融合ですか・・・・。すこし難しい言い方ですね。 都会と地方がともに感じられる町、なんてどうですか?」
「あっ、それいいね。演説やビラには少し堅いかなと思っていたんだ。今度からそれ使わさせてもらうよ」
「なんか、ちょっと嬉しいです」
「で、何をしたいかって言うとね、まずはもうこれ以上の都市開発は抑えたいんだ。でも、開発を抑えると少子化がどんどんすすんじゃうでしょ。」
「そうですよね。どうするんですか?」
「開発区域と自然保護区域をはっきり分けていきたいんだ。」
「区分化ですね。」
「そう。判りやすく言うとね、ディスニーランドみたいにね。」
「なんですかそれ?!」
「ディズニーランドって、キチンと区分けされているでしょ。各テーマごとに。ここはジャングルクルーズです、ここはファンタジーですよ・・・って。それと同じように、この地域は自然がちゃんと残ってますよ、この地域は住居やインフラが整備されてますよってね。そう分けたいんだ。」
「なるほど。」
「でも、なかなかうまく伝えられなくてね。それにこんな小さな町だけど利権が結構からんでるから、またややこしくてね。先輩議員の半数以上が建設関係の会社のひとでしょ。 それも関係があるらしくてね。」
「そうなんですか。自分は今まで市議会に全然興味がなかったから、なんにも知らないです。でも、こうして吉川さんのお手伝いをした初日に色々わかってきました。」
「そうなんだよね。私が、私みたいのが市議会選挙に立候補する事で若いひとが興味を持ってくれたら、ほんと嬉しいんだ」
「そうですよね。吉川さんの選挙ボランティアは若い人中心で集めましょうよ。」
たったひとり助っ人が来ただけで色々な案が出てくる。
これが参謀っていうのかどうかはわからないが、雄太君みたいな若いひとが一緒に考えてくれたら、すごく幅が広がるだろう。
始めたばかりの政治活動ではあるが、手がかりがつかめたような気がした。
