初めての方は、ぜひ1話目から読んでいただけると嬉しいです↓
妻は知らない
妻が旅立ってから20年、私は妻の知らない世界を生きてきた。
妻がくも膜下出血で倒れたのは1997年11月27日。
この11日前の11月16日 - サッカー日本代表が延長戦の末3-2でイランを下し、ワールドカップ初出場を決める。
中田英寿のファンだった私たち夫婦は、絶対にフランスに行くと話していた。
そう、ここまでは妻は知っていた。
だけど妻はフランスW杯を観ることなく、召された。
この4年後、2002年日韓W杯は私一人で観戦しに行った。
妻は知らない
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件。まるで映画を観てるような現実感のない映像。
ツインタワーにハイジャックされた旅客機2機が突っ込んで、多くの方が犠牲になったことを。
妻は知らない
2011年3月11日、東日本大震災が起こり、多くの方が被災され、日本が大きく変わったことを。
私は20年、妻の知らない世界を生きている。
妻は知らないんです
私が心の病を発病したことも 。
私が会社を辞めて独立したことも。
義妹が結婚して子供が産まれたこと、そして妻と同じくも膜下出血で他界したことも。
幼かった娘たちが東京の大学に通い、卒業し、教師になったことも。
妻は知らないんです・・・・。
20年という時間は長かった。
この20年間にはいろんな事があった。
はからずも20年前に止まってしまった妻の時間、
私の残された時間は、妻の分まで知らなければならない使命がある。
娘たちのこれからを責任を持って知らなければならない。
それが失くした人とともに生きることだと思う。
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