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彼女は彼女から妻になった。

 

 

結婚式の翌日、私たちは新婚旅行に出発した。

 

旅行先は私の希望で、スペインとフランス。

 

スペインに行きたかったのは、ガウディ建築を自分の目で見たかったからだ。

 

 

バルセロナ、トレド、グラナダと巡った。

 

 

美大出身の私は、欧州の歴史には多少の知識を持っていたが、

 

妻は正直、「なんのこっちゃ」という感じで、楽しみはほぼ料理だったと思う。

 

しかし、中学時代を考えると、ヨーロッパに二人でいること自体が奇跡のようだった。

 

 

 

旅行はツアーに参加していたので、同じ新婚の夫婦と仲良くなった。

 

福島のご夫婦で、結婚して苗字が変わったため、同姓同名になってしまったという稀有なご夫婦だ。

 

お互いの連絡先を伝え、その後、妻の一周忌にも来てくれたりと長い付き合いになるのだが、東日本大震災が起こってからは音信不通になってしまった。心配だ。

 

 

 

楽しかった新婚旅行を終え、私たちは新婚生活に入った。

 

私たちは賃貸の一軒家に住んだ。

 

私の県では当時、嫁をもらったら新築というような風潮があって、

 

正直、妻の親は不満だったが、実家の近くということもあり、納得してくれた。

 

 

 

毎日、誰かが遊びに来ているような賑やかな家だった。

 

ある日は明け方の4時頃、家の呼び鈴が鳴った。

 

何かあったのかと出てみると、酔っ払った私の友人だった。

 

彼は小学校教師のくせに自由奔放で放浪癖がある男だった。

 

「○○ちゃん(妻)のラーメンが食べたいんだよね〜〜」

 

こんな明け方に何を言ってるのかと怒ったが、今となっては楽しい思い出だ。

 

 

 

そんな楽しい日常、一度だけ妻が怒っていたことがある。

 

私が仕事だった日曜日、妻は私の荷物を整理していた。

 

その中に大学時代の恋人の写真があったからだ。

 

引っ越しの際に実家に置いてきたはずなのだが、母が忘れ物だと思い、荷物に入れてしまったようだ。

 

 

「ただいま〜〜」といつも通りに帰ってきた私に、妻は無言でいる。

 

なんのことだかわからない私は、「俺なんかした?言ってくれないとわからないよ。」と話した。

 

妻は無言のまま二階に行き、その写真の入った小さなアルバムを持ってきて、私の目の前においた。

 

「付き合ってた人がいたのは知ってるけど、普通処分するんじゃない?」と妻。

 

なんでこのアルバムがここにあるのかわからない私は、しどろもどろで、とにかく謝るしかなかった。

 

妻の気がすむまで誤った。

 

 

この時、初めて妻を怖いとおもった。

 

 

 

9, 結婚出産編 〜妊娠〜 に続きます。

 

 

 

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