ほの暗い日々が続き、うつむいたまま歩く日々の中、ふいに、窓が話しかけてきた。
「貴様はなぜここにいる。」
にらみつけるように銀の縁をゆがめながら、強い口調で問うてくる枠を、私は頬杖を突きながら見ていた。ガラスは雑多な方向に光を反射し、その光は私の目を眩ませた。
それから、窓はたびたび話しかけるようになった。聞かれることは決まって一つ。
「貴様はなぜここにいる。」
答えようがない。今ここに居る理由を説明できる人間などいるだろうか。ここは学校である。学ぶためにここにいるという説明は、真面目な学生にしか使えないだろう。私は意義も感じず、意味も考えず、ただただ何となく通っているだけの怠惰な学生なので、その説明は使えなかった。
私は行く先々でそれを問われ、無視を決め込んだ。いや、答えられなかったのだ。
どこにいても、何をしても、その理由なんて、わからなかった。
最初に窓が話しかけてきてから、二週間が経過したある日。木々は風に揺れ、空は澄み切っていた。
窓は依然として私に問いかけてくる。
「貴様はなぜここにいる。」
私はついにたまらなくなって、首を上げ、窓に話しかけた。
「外の景色を見せてくれ。」
窓はカラカラと音を立て、私と外の世界をつなげた。
風に舞う木の葉の音、鳥のさえずり、子供達の笑い声、暖かい日の光。世界が美しく見えた。いや、世界は元から美しかったのだ。
体を乗り出し、手を伸ばした。もっと世界を見たいと思った。ちょうど半分出かかったとき、私ははっと気づいた。
今何をしようとしていた?
体を戻し、もう一度窓に向き合う。
「私は、まだここにいなくてはならない。」
窓は、何も語らなかった。