空が熱を帯び、道行く人を包むある日のこと。
私は何をするでもなく、街を歩いていた。まだ幼い頃に住んでいた古いアパートはすでに更地になり、近くの用水路は干からびていた。足を動かすたびにジャリ、ジャリとコンクリートが音を立てている。その砂塵の一粒一粒が靴底に纏わり付き、後から熱を連れてくる。
とても、暑い日だった。
地面はどこまでも灰色で、遠くの景色はかすかに揺れている。
近くの駅まで来た。少し前まで何も無かったくせに、今はまるで大都会のような顔をしている。行き交う人をかわしながらふらふらと歩くと、日陰にたどり着いた。
そこは飲み屋街だった。真昼でも開いている店はあるが、人はまばらで涼むにはちょうどよかった。
自動販売機でコーラを買った。すぐに開けて喉に流し込むと、炭酸の刺激と冷たさが心地よく感じられた。近くに腰掛けながら空を眺めていると、風の流れに撫でられているような感覚がした。
少し遠くで足音がした。横を見てみると、老人が向こうから歩いてきている。暇を持て余しているのか、何かを待っているのか、ゆっくりと歩いていたその老人は、その場で何かを拾い上げた。
その様子を見ていると、こちらに気づいたのか、老人は拾った物を掲げた。それは日の光を受け輝いていた。小銭だ。
老人は笑顔のまま、どこかに去っていった。ゆっくりと過ぎていくこの1日の中で、喜びを見出す。それが小さな物であれ、大きなものであれ、人生を豊かにするにはそれが必要なのだ。コーラも、小銭も、その何かになにうる。
コーラを飲み終えた私は満たされた気分になり、帰路についた。
私は何をするでもなく、街を歩いていた。まだ幼い頃に住んでいた古いアパートはすでに更地になり、近くの用水路は干からびていた。足を動かすたびにジャリ、ジャリとコンクリートが音を立てている。その砂塵の一粒一粒が靴底に纏わり付き、後から熱を連れてくる。
とても、暑い日だった。
地面はどこまでも灰色で、遠くの景色はかすかに揺れている。
近くの駅まで来た。少し前まで何も無かったくせに、今はまるで大都会のような顔をしている。行き交う人をかわしながらふらふらと歩くと、日陰にたどり着いた。
そこは飲み屋街だった。真昼でも開いている店はあるが、人はまばらで涼むにはちょうどよかった。
自動販売機でコーラを買った。すぐに開けて喉に流し込むと、炭酸の刺激と冷たさが心地よく感じられた。近くに腰掛けながら空を眺めていると、風の流れに撫でられているような感覚がした。
少し遠くで足音がした。横を見てみると、老人が向こうから歩いてきている。暇を持て余しているのか、何かを待っているのか、ゆっくりと歩いていたその老人は、その場で何かを拾い上げた。
その様子を見ていると、こちらに気づいたのか、老人は拾った物を掲げた。それは日の光を受け輝いていた。小銭だ。
老人は笑顔のまま、どこかに去っていった。ゆっくりと過ぎていくこの1日の中で、喜びを見出す。それが小さな物であれ、大きなものであれ、人生を豊かにするにはそれが必要なのだ。コーラも、小銭も、その何かになにうる。
コーラを飲み終えた私は満たされた気分になり、帰路についた。