私がまだ幼かった頃、よく一緒に遊んでいた友達がいた。彼は悪童そのもので、いつも悪さをしては大人達に叱られていた。しかし、彼の顔はいつも澄み切った空のような笑みを浮かべていた。
その日も彼と遊んでいた。時は既に夕方で、門限も迫っていた。だんだんと沈んでいく太陽が、警告のアラームのように見えていた。
そんな時、彼は私に見せたいものがあると誘ってきた。
門限が、と断ろうとしたが何度も強く誘ってきた彼の語気に流され、私は彼に連れられ歩き出した。
頭には怒る母の顔がちらつき、気が気では無かった。やはり帰ろう、何か理由をつけて家に帰ろう、そういったことしか考えていなかった。
しばらく歩いて、時は既に夜。私は叱られることばかり考え、先を歩く彼の背中を見ることしか出来なくなっていた。体と足が鉛のように重かった。
「ついた」
彼がそう言った。顔を上げてみると、そこは河川敷であった。
「上見てみろよ」
言われた通りにすると、目の前には雲一つ無い星空が広がっていた。一つ一つの星が、全て視認できるくらいに輝いていた。ビルの明かりなどとは違う、自然の光。私にはそれが何よりも尊い物に思えた。
ふと彼の顔を見た。彼はいつものように笑顔を浮かべていた。一点の曇りの無い、純粋に空を見上げている顔。そのとき、彼はこの星空そのものだった。
悪童が見せてくれた美しい景色を、今でも覚えている。