Q
高校生の子が学校で受けた、小説を読んで後の問いに答える国語のテストですが、難しくてびっくりしました。普段からよく小説を読んでる人なら簡単にわかるものでしょうか?興味のある人はやってみて下さい。
私は毎朝、同じ時間に同じ道を歩いて会社へ向かう。道の途中に古い木造の家が一軒あって、いつも門の前に置かれた植木鉢の土が少しずつこぼれているのが気になっていた。誰かが水をやりすぎているのだろう。こぼれた土は雨が降ると黒く流れ、歩道に細い線を描く。
ある朝、その家の門が少し開いていた。中から女の人が顔を出して、私を見た。四十代後半くらいだろうか。髪は乱れていて、目が少し赤い。彼女は私に気づくと、慌てたように門を閉めかけたが、途中でやめた。
「すみません」と彼女は言った。「いつも通る人ですよね」
私は立ち止まった。知らない人から突然話しかけられることなど滅多にない。
「この植木鉢……」彼女は鉢を指した。「父が大事にしていたんです。でももう誰も世話ができなくて」
彼女の声は震えていた。私は何を言えばいいのかわからず、ただ頷いた。
「捨てようかと思うんですけど……捨てられないんです」
その日から、私は毎朝その家の前を通るとき、少し足を緩めるようになった。彼女は時々門の前に立っていて、私を見つけると小さく会釈をする。言葉は交わさない。ただ、視線が合うだけだ。
数週間後、植木鉢の土はほとんどこぼれなくなっていた。新しい鉢が二つ増えていた。色とりどりの花が咲いている。私は知らない間に、彼女が花を植え替えたのだと理解した。
ある雨の朝、私は傘をさしてその家の前を通った。門は閉まっていたが、玄関の明かりがついているのが見えた。ガラス越しに、彼女が座っているのが見えた。膝の上に古い写真立てを抱えていて、じっと見つめているようだった。
私は立ち止まった。なぜか動けなかった。彼女は気づいたらしく、ゆっくりと顔を上げた。目が合った瞬間、彼女は泣いているのがわかった。涙ではなく、ただ表情が崩れているだけだった。
私は傘を少し傾けて、雨を避けるように彼女の方へ近づいた。門の隙間から声をかけた。
「大丈夫ですか」
彼女は首を振った。そして小さな声で言った。
「父が……昨日、亡くなったんです」
私は何も言えなかった。ただ、雨音だけが響いていた。
次の朝、植木鉢は全部なくなっていた。コンクリートの地面に、土の黒い跡だけが残っていた。私はその跡をじっと見つめた。なぜか胸がざわついた。
それから私は、もうあの道を通らなくなった。少し遠回りでも、別の道を選ぶようになった。
時々、夢に見る。あの門の前で、彼女が私に向かって何か言おうとしている。でも声が出ない。彼女の後ろには、色とりどりの花が咲いているのに、なぜか全部灰色に見える。(了)
問1
「私は立ち止まった。知らない人から突然話しかけられることなど滅多にない。」の「立ち止まった」には、主人公のどのような心情が最も強く表れているか。次から最も適当なものを一つ選べ。
① 警戒と好奇心
② 迷惑と同情
③ 驚きと無関心
④ 戸惑いと責任感のようなもの
⑤ 恐怖と逃避したい気持ち
問2
「私は知らない間に、彼女が花を植え替えたのだと理解した。」における「知らない間に」の表現が効果的に働いている理由を説明したものとして、最も適当なものを一つ選べ。
① 主人公が無意識のうちに彼女の変化に注目していたことを示すため
② 時間の経過が速く感じられることを強調するため
③ 彼女の行動が突然で予想外だったことを表すため
④ 主人公が彼女の生活に干渉していないことを示すため
⑤ 花の変化が主人公にとって重要でないことを示すため
問3
「私は何も言えなかった。ただ、雨音だけが響いていた。」の場面で、主人公が「何も言えなかった」最も深い理由を、本文全体を踏まえて述べたものとして正しいものを一つ選べ。
① 雨が強くて声が出せなかったから
② 彼女の悲しみの深さを前に言葉を失ったから
③ 自分も父親を亡くした経験が蘇って動揺したから
④ 他人に深入りしたくないという気持ちが強かったから
⑤ 適切な慰めの言葉が思いつかなかったから
問4
次の文章は、この小説の読後感について高校生が書いた感想文の一部である。空欄( ア )に当てはまる最も適当な語句を、下の①〜⑤から一つ選べ。
「この小説を読んで一番心に残ったのは、主人公が最後にあの道を通らなくなったことだ。( ア )というより、むしろ逃げたのだと思う。でもその逃げ方が、なぜかとても人間らしくて、切なかった。」
① 優しさの欠如
② 向き合う勇気のなさ
③ 無関心の表れ
④ 自己保身
⑤ 過剰な干渉の反動
A
興味があり、解いてみました。
問1 正解 ① 警戒と好奇心 難易度はふつう(学齢相当)。
問2 正解 ③ 彼女の行動が突然で予想外だったことを表すため 悪問。
問3 正解 ② 彼女の悲しみの深さを前に言葉を失ったから 難易度はふつう(学齢相当)。
問4 正解 ① 優しさの欠如 難易度はふつう(学齢相当)。
問1はよい問題です。問3と4は設問文(3「最も深い理由」4「というより、むしろ」)と相まつて成立している、出来の良くない設問です。
問2ですが、【「知らない間に」の表現が効果的に働いている】が無理です。【「私が知っている間に彼女が花を植え替えた」はあり得ない】という意味において、「私は(「私が」とあるべき)知らない間に」は自明であり、小説の表現として、無意味です。それを「効果的に働いている」と説明している点、設問の前提に無理があります。その点を回避し、【(自明である事を)わざわざ明記した効果】と読み替えることは可能です。その上で、選択肢を吟味すると、③のみ正解である資格があります。
① 主人公が無意識のうちに彼女の変化に注目していたことを示すため:誤(「その日から…緩めるようになった。」に矛盾)
② 時間の経過が速く感じられることを強調するため:誤(「数週間後、」と矛盾。)
③ 彼女の行動が突然で予想外だったことを表すため:根拠はないが、本文と矛盾しない。
④ 主人公が彼女の生活に干渉していないことを示すため:誤(自明であり、説明になっていない。)
⑤ 花の変化が主人公にとって重要でないことを示すため:誤(傍線部と無関係であり、説明になっていない。)
設問に無理があり、正解が本文に根拠をもたない。二つの点で、成立しない設問です。これは悪問であり、「難しくてびっくり」ではありません。現今の国語教育は、こういう劣悪な問題演習が横行しています。
出来ましたら、どういうテストであったか(定期考査、校外模試、その他)を教えて戴けますか。
返信Q
模試です。おそらく学校の担当教師が作った問題だと思います。MARCHより若干上、早慶で出てもおかしくない問題だそうです。
返信A
どうもありがとうございました。ところで「模試」とは何ですか。学校は模試(生徒の評価に関係しないテスト)はしません。学校の担当国語教師は、市販の問題集であれ大学過去問であれ、どこから問題を持ってくることも可能です。自作できる教師はごく少数です。そういう優秀な教員は、こういうお粗末な設問は作成しません。設問がよろしくないことは、回答した通りです。
早稲田大学の国語試験をご存じですか。はっきり言ってひどいものです。一貫した論理性もおよそない本文(例えば社会学の教科書)を選んで出題します。早稲田大は、受験者の国語力をまともに図ろうとする意思がありません。その証拠に日本の最高峰私学でありながら、国語試験は完全客観方式(選択式)です。先月話題になった灘中学の方が、早稲田大よりはるかに国語試験としてレベルは高いです。
(私は某大手出版社の教材の検査をして、すでに3桁近い報酬も得ています。)
Q補足
「******」さん不正解です。
それから「**********」さんは1問しか合ってません。
息子は3問で、私は2問しか当てられませんでした。
やはりこの問題は難しいと思います。
返信A
この問題を作成する人間の作る解答が信頼できる道理がないし、私の説明が理解できないなら、結局は、不適切な問題を難問と誤認しありがたがり、不適切な正解にひれ伏して、それを妄信する結果になるのは理の当然です。
補足内容は予想していました。
では永遠にごきげんよう。
(以下、202602241039同文他質問の補足より)
ずいぶんもったいぶってしまいすみませんでした。
正解はこうです。
問1=④
問2=①
問3=②
問4=②
(以下、202602241039同文他質問の回答返信)
中々興味深いやり取りが多くあります。
*******さんの回答が一番興味深い。というのは、作問者がこの人と同様の思考で、問題を作成している可能性があります。特に問①。最近は殊にこの傾向の作問が目立ちます。中受も大受も、例えば早稲田と中京あたりで。「灘中よりもはるかにレベルが低い」所以です。
02241044,02241145は共通して、本文の質に疑問を呈しています。私も同意しますが、、設問の是非とは別です。
02241119は、設問の客観性、妥当性に疑義を呈しています。私も同意します。
問1を不正解する(①以外を選ぶ)人は、国語力がないか、本文を読めていない人です。この設問だけが、本文読解力を測る国語試験として有効です。①が正解である事を詳説はしません。問2以下は、国語力を検査する試験として落第です。
質問者からのお礼コメント
回答ありがとうございました。