テンペストはハッピーミディアム、その三 | ぞうの みみこのブログ

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メインキャラターのプロスペロを演じたのは、イギリスでの初演でも同じ役だった、
バリトンのサイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)


見た目の存在感抜群で、入れ墨装束とも相まって、いかにもカリスマ性あふれる魔術師と言う感じだったのに、歌う部分はほとんどが,レシタティーブ的な役割で、
あんまり抑揚も無くって、お経のように聴こえてしまった。

オーケストラは歌の部分に対しての対位法的な技法が多く,オーケストレショーンなど、リブレットの内容にそった音色が駆使され,カラフルで楽しかった。

トーンペインティングにはたけていると思う。でも、それと平行して歌われる部分がなんとも平坦に聴こえてしまった。もっとアリア的に処理して、歌を全面に押し出すなり、はっきりしたモチーフをつかって、ドラマチックにしても良かったのではないかと思った。主役なんだし。

方や、メインキャストの一人、カリバンは(イギリスから、テナー:Alan Oke)大勢の群衆の前でろうろうと自分の不憫な立場を歌い上げるアリア的な部分をあたえられ、

王子のフェルナンド(合衆国, Alek Shrader)や娘のミランダ(合衆国、Isabel Leonard)のデュエット場面もあって大きな見せ場になっていたのに。

それとも、主役プロスペロにたいする、このおさえた歌唱は意図的なものだったのだろうか。

意図的にプロスペロをナレーター的役割にする事によって、その他のキャラクターを鮮やかにうきあがらせるとか。

プロスペロの入れ墨の出で立ちなど、衣装は面白いと思った。最初は、日本の特殊な業界のひとたちの文化に影響をうけたのかな、と思ったが、どうやらオーストラリアのアボリジニの風習にヒントを得たらしい。(衣装デザイナーは合衆国、キム・バレット)

その他のメインキャストは:

妖精アリエル(合衆国、Audrey Luna,ソプラノ)
王様(イギリス、William Burden, テナー)
王様の従者のTrinculo(イギリス、Iestyn Davies, カウンターテナー)
プロスペロを騙した兄弟アントニオ(イギリス、Tobey Spence、テナー)

あ、すごいな、と思ったのは、アリエル役のオードリー・ルナ。妖精という、人間でないキャラを表現する為だったのか,歌うパートは超高音域で何度も跳躍をくりかえすはなれわざ。とても難しそうだったけど、彼女は安定した声で、力強く歌っていた。
他のコロラトゥーラを駆使した役もうまいんだろうな。



こういうソプラノの使い方って、現代オペラのトレンドなんだろうか。数年前のニューヨークフィルで演奏したリゲティのオペラ"Le Grand Mcabre"
でも似たような事をしていたと思う。


最近知人と話していた事だけど、合衆国、あるいはニューヨークは意外とオペラのプログラムに保守的なのでは、と思った。

今回のテンペストもそうだけど、(作曲家がヨーロッパ出身と言う事もあるだろうけど)ニューヨークでは初演だったけど、ヨーロッパではすでに何回も演奏されている。

他にも、ヨーロッパ初演でしばらくしてからアメリカ合衆国やニューヨークで初演、というパターンが多いみたいだ。

まだこちらで演奏されてないけど、ヨーロッパではすでに初演された作品も多いようだ。そんな中で、わたしが是非ライブで聴きたいのがこれ。作曲家は私の好きな、
Harrison Birtwistle(1934~イギリス)

ロンドンにお住まいの皆さんはもう聴けたんですよね。うらやましい。