エラスムス(1466-1536)トマス・モアのお友達で、神学者、カトリック司祭、哲学者。トマス・モアを”Man for all seasons”
(いつでも役立つ有能な人、のような意味)と評した。宗教改革のルターとはライバル。”愚神礼賛”は有名な著書の一つ。
わたし:ところで、トマス・モアを主人公にした有名な映画があるよね。”Man for all seasons”っていう。
(1966、同名の戯曲に基づいた映画。作品賞を始め、6つのアカデミー賞を受賞。邦題は”わが命つきるとも”)
あれって、衣装とか絢爛豪華で、内容も今で言う総理大臣のような地位にまで上り詰めたトマス・モアが、神への信仰とか自分の信条を貫く為に王の離婚を承認せず、投獄され、死刑になった。
壮絶な生き方を描いたシリアスな映画。それにしちゃータイトルが軽いと思ったんだけどね。
カサウン:あれは、トマス・モアの友達のエラスムスが彼の事を評して言った言葉だよ。
私:本のなかにそのエラスムの評価に対する返信みたいな部分を見つけたよ。
そうは言ってくれても”世の中の人が善人ばかりでない限り、物事はすいすいとは、いかないんだよ”みたいな。
カサウン:ふーん。ところで、その映画どうだった? すごく有名だから名前を聴いた事はあるけど、見た事は無いんだよね。
私:ずっと前に見たのよね。当時の私の英語は今以上にひどかった。
それでもって、台詞はすべて普段聞き慣れないイギリスアクセントで、時代がかった表現はあるわ、長い台詞まわしはあるわ、で、正直言って会話はあまり理解できてない。
でも衣装やセットは絢爛豪華だし、トマス・モアの生き方そのものが、銃や剣を使わないバトルシーンて感じで,かっこよかった。
裁判の時に、朗々とした声で格調高く弁明するとこなんか圧巻。
カサウン:君の英語は上手だよ。
私:ほんと? カサウンってば、優しいからー。
カサウン:ほんと、ほんと。大丈夫だよ。
(友人を疑る訳じゃないけど、経験から私は知っている。
"Your English is good"なんて言ってネイティブが褒めてくれるときは、まだ英語は大した事無いんだ。本当に上手だったら言葉にして褒めたりしない。まだまだですな。)
私:この本をよんで、トマス・モアの王様との関係を考えた時、どうしても比べてしまう本があるのよ。
日本文学で、女流作家が書いたんだけど、”秀吉と利休”ていう本。史実に基づいた歴史小説なのよ。
秀吉は一代で叩き上げの将軍。一方、利休はティーセレモニーのマスターで教養もあり、身分では秀吉より下でも、美意識や学問は秀吉より格が上。
いろんなことがあって、最終的に、ティーマスターの利休は切腹をさせられる。
格下の人間につかえるティーマスターと、自分に無い芸術性や学識、品などを尊敬しつつ、いろんな政治的駆け引きののちに彼を死に追いやる事になる将軍の中のこころの葛藤や両者のせめぎ合い。似てない?
時代的にもヘンリー8世のころと、比較的近いのよね。中世の終わりからルネサンスあたりだから。
カサウン:へー、おもしろそうだね、その本の事教えて。英語に翻訳されてるといいね。
(私が言及したのは野上弥生子氏による”秀吉と利休”という小説。残念ながら英訳は無かった。カサウンも興味を示していたし、是非お勧めしたかったのだけど。)
トマス・モアにもどると、やはり彼とヘンリー8世の葛藤はドラマチックで現代のオーディエンスにも訴える所大なのだろう。
先ほどあげた”Man for all seasons”よりずっと最近に制作されたテレビドラマシリーズ、”チューダー”(The Tudors)でも、
ドラマのクライマックスとしてトマス・モアの事が取り上げられている。こっちのドラマでは一応主人公はヘンリーのはずが、脇役のトーマス、存在感あり過ぎ。
カサウン:トマス・モアの”ユートピア”はかなりプラトンの”国家論”とリンクしている。二つを合わせて読むと良いよ。
私:あの時代に、国民は裕福で、教育があるべき、と言っている所が良いわね。
時代の先を行き過ぎてたのかしら。私生活では家庭を大事にして、娘にも男性同様の教育を授けた、という所もポイント高いわ。
やっぱトマス・モアはかっこいい。(タイプかも♡)
次のご本は”不思議の国のアリス”とのこと。
きゃー簡単、子供の本ねっ、と思いきや,プロフェッサー・カサウンによると、ところがどっこい、深い意味や風刺にあふれていると言う。