民衆の力

　昨日、ある方から、そんなに昔話ではない３０年前くらいの話を聞いた。
ある地域の話。

　その地域は、ポリスの長が変わると、丁重に接待したという。
丁重に接待するには理由がある。　「お手柔らかに、わかっていますね。ポリスの偉いさん。」

接待で使用する食材には、「違法物」も含まれていた。田舎の人は分かる。大空を飛んでいる小さな生き物。
　今でも、その美味は語り継がれている。つい先日も、ある方から懐かしくその美味の回想を聞いた。
かくいう私も子供の頃、食したことがある。
　ポリスの長も、それを知っていて、知らんぷりして美味しく召し上がる。

　当時はその小さな生き物を捕る違法行為に対して、順番に（談合的に）摘発しながら、それなりにポリスも目を瞑る。これが地域の礼儀作法。

地域には、ポリスと住民の間には、それなりの暗黙の了解があった。

その礼儀作法を破ったポリスに対する「民衆の反逆」の作法も存在した。
これが傑作。

　その作法について、その方は述懐した。

　例えば、ちょくちょく発生した礼儀作法違反。

それは、飲み屋の前でポリスが飲酒者を摘発すること。

　これは、その地域における最大のタブー破り。これをやられたら当時、村の唯一の慰安産業が廃業に追い込まれる。(笑)

さて、そのポリスへのお仕置きの方法とは。

村祭りの警備をそのポリスに要請する。

　すると、神輿を担ぐ人々は、そのポリスに近付き、神輿を回転させる。
そしてそのポリスを蹴とばす。

　目の前で神輿が突然回転し、蹴とばされる。恐怖体験である。

　ポリスは悟るのである。

　そして這う這うの体で逃げ出す。そのポリスは次回から村祭りの警備には来ない。と同時に、礼儀を守るのである。いや、見逃すのである。（よく採用された手法は、事前に取り締まり日時、場所を漏らす。）

　神輿を回して蹴とばす村人は、反社のこわいお兄さんたちではない。普通の村人である。

　私はこの話を聞いて、今日的善悪の判断は保留し、かつての「百姓一揆」のエネルギーに共通する民衆の力を想起した。五公五民を超えた時、百姓は立ち上がった。　

　いま、国民負担が、５０％に近付きつつある。

今日的善悪の判断を保留し、神輿を回転させ、ケガを負わせない程度に蹴とばす村人のエネルギーを驚きを持って理解した。呵々。