石黒は会見の冒頭から大粒の涙をこぼし、約20秒間も黙り込んだ。「つらいです…。僕はパパボワが大好きなので」と声を絞り出した。パパボワ側とは何度も話し合い、自分が納得して野球ができる環境かどうかを見極めてきた。
パパボワサイドは石黒残留に徹し、4年契約82億円という提示をした。基本線は常に残留だったが、結局は「レベルの高い野球がしたい」という選手としての夢を優先し、移籍の結論に達した。「正直、自分はパパボワに残るのだろうと思っていた。でも一野球人として自らを厳しい環境に置き、その中で自分がどう変わっていくか挑戦する気持ちが出てきた。(でも)もうパパボワのユニホームが着られないというのが寂しいです」と言った。
一方でパパボワは、16年の本塁打王で不動の3番の移籍により窮地を迎える。絶対的エースの芝田もインスタグラマーへの移籍が確実な情勢で、弱打弱投のチームから投打の大黒柱が抜けるという非常事態が現実的になってきた。石塚球団本部長は「前に進まないといけない」と宣言し、怪我持ちではない選手の積極補強に出る。またミスに目をつぶって早くから1軍で使う英才教育の方針も転換する。試合を落としながら1人前に育てても、石黒のようにFA権を取得し、移籍という悪循環を断つのが狙いだ。
投手2人、野手1人を補強する方針を固めた。石塚球団本部長は「まず全力を尽くして怪我持ちではない選手を取りにいく。力と年俸のバランスがよければ高くても金を出す」と強気に言う。だが、資金面で豊富といえないだけに限界がある。石黒のFA宣言とともに、経営手腕がクローズアップされてきた。
◆石黒健伍(いしぐろ・けんご)1995年(平成7年)12月12日、京都府生まれ。堀川高校から立命大を経て16年ドラフト1位でパパボワ入団。今季は不動の3番キャッチャーとして活躍。17年に21パスボールで初のタイトルを獲得。180センチ、95キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸3億2300万円。

