時節柄、この話題がいいかなと。
小学校1年のときだ。
同じクラスだったSさん。
幼稚園は一緒ではなかった。小学校に入ってから初めて同じクラスになったわけだ。
正直、全然かわいくない。ただ、頭はいい。育ちが良さそうな雰囲気はある。
僕が育ったところは、典型的な下町であった。
商店街や市場がすぐ近くにある。
うちの家の向かいは魚屋で、隣が喫茶店、横向いがスナック、斜めが花屋。
そんな環境である。
だから、小学校にいる女の子というのも、どちらかといえば商売人や水商売関係の子が多かった。
親が会社づとめという子は少なかった。
そんな環境にあって、Sさんは、ちょっと雰囲気が違った。ただ、あまり可愛くない。
同じクラスになっても、ほとんどしゃべったことはなかった。
そのSさんが、2月14日、突然うちにやってきた。彼女のお母さんと一緒に。
(なんだろう、俺何か悪いことしたのかな。怒られるのかな。)
僕はまだバレンタインということを知らなかったのだ!
何か渡されたが、どういうことかわからない。あっけに取られていたはずだ。
その時の僕の思考は、なぜか(これは親に言わないほうがいいだろう)と判断した。
そして、翌日学校にいったものの、Sさんに何を話していいかわからない。
とりあえず普段どおり過ごしていた。
そのまま、3月14日もなにもしないまま過ぎた。
事の真相がわかったのは、翌年のバレンタインのころであった。
(しまった、えらいことをしてしまった!)
母に相談したら、一年後になったけど、お返しにいきましょうということになった。
確かSさんのお母様にお返しのマシュマロを返したように思う。
それからというもの、Sさんに対して妙に意識をしてしまう。
でもあまりタイプではないので、特に関わりたいとも思わない。
かといって、何も話しないのも変だ・・・そんな風にずいぶん悩んでいたことを覚えている。
普通に話ができるようになったのは、小学校5年生くらいだったろうか。
1,2年生で同じクラスだったが、3,4年は違うクラスだった。
それで5年生でまた同じクラスになった。
結局、小学校のときにもらえたチョコレートは、そのSさんからのものだけだった。