特許翻訳が重要なのはなぜでしょうか。

 

 

科学技術の発展とともに、知的財産権に対する世界各国企業の注目度は益々上がってきております。発明の核心理念と実施方法を記録する特許出願文書は、特許の登録可能性及び登録範囲に影響を与える可能性があるため、特に国際出願の場合は、出願文書の翻訳に対する要求が格段に厳しくなるわけです。


企業のグローバル化により国際特許出願は普遍化されており、各国特許庁は通常、国際出願文書を自国語に翻訳するよう要求し、翻訳文に基づいて審査を行います。例えば、中国の「特許審査指針」の第1部第2章15.1.3には、「外国語で記載された国際出願の場合、中文翻訳文についてのみ審査し、原文は確認しない。 但し、国際出願文書の原文は法的効力を持ち、出願文書の修正の根拠となる。」と明記されております。中国特許法第33条には、特許出願の受理後、特許出願文書の修正は、原文の請求範囲を超えてはいけないと規定されております。


品質の高い特許出願文書の翻訳文は、特許出願の登録際に重要な役割を果たします。場合によっては、翻訳の誤りで特許が登録されないケースもあるぐらいです。例え登録されたとしても、後々、特許権の無効化やまたは侵害訴訟の段階で競合他社に弱点として使われる可能性もあります。したがって、厳格な翻訳基準および品質管理手順はもちろん、知識財産権の専門知識と関連技術分野の知識及び言語能力を備えた多言語専門翻訳チームは特許業務を成功させるための重要な基盤であるといっても過言ではありません。
 

 

 

それでは、特許翻訳の注意事項にはどういったものがあるのでしょうか?


1.特許法及び関連規定を熟知します。
   
特許法及び関連規定に不慣れな無作為な翻訳は、特定の要求事項に合致しないことがあります。例えば、発明の名称で“gambling game/casino”を賭博ゲーム、カジノとして翻訳すると、中国“特許審査指針”第二部分、第一章3.1.1条に基づき、該当特許は特許権を付与されることができません。特許専門翻訳家は関連法律また規定に関する知識を基盤として、上記敏感な単語を“ゲームセンターコインスロットマシン”と代替して慎重に翻訳するべきです。ご覧のとおり、多少の言葉の代替だけでも審査拒否のリスクを防ぐことができます。


2.翻訳の追加、訳漏れ、誤訳を防止します。
   
翻訳の追加、訳漏れもしくは誤訳は特許保護範囲の拡大または縮小をもたらすことがあります。例えば、特許文書ではよく牛乳ということで翻訳されていますが、事実上、乳製品に関連する出願文書においては、牛乳以外の乳製品の保護範囲を狭めることを防ぐため、牛乳を乳製品と翻訳するのが妥当です。
   

3.用語を統一して明確に区分します。
   
用語が統一されていない区分が明確でなければ翻訳文に支障が生じ、技術方案が無効になる可能性もあります。たとえば、das Motormoment des Verbrennungs motors und das Motormoment des Elektromotors Null eingestellt werden (ドイツ語)を直訳すると「内燃機関のエンジントルクと電気モーターのエンジントルクを0より大きく設定すること」として翻訳されます。しかし厳格な翻訳基準によると、翻訳は個々の単語を翻訳後に羅列するのではなく、文章全体の正確性と合理性を考慮しなければならないため、この文章ではMotormomentをエンジントルクとして翻訳すると電気モーターのエンジントルクに対する中国語表現と矛盾するため、モータートルクとして表現したほうが適切です。
   


4.原文の意味と一致し、原文について正確に理解します。
   
原文に対する理解が正確でなければ翻訳文と原文の間で意味が大きく変わって、結局間違った技術方法で無効になります。例えば、原文は「将这些设备分组,对组提供单个的标识符(デバイスをグループに分割し、グループに単一の識別子を提供すること)」を「dividing the devices into a group, the group being provided with a single identifier」と翻訳するが、原文を分析すると中国語では「单个(単一)」を使用する場合「一つ」だけのグループということで思われます。しかし、厳格な翻訳基準から見ると、翻訳の際に添付された図面と文脈を組み合わせて、総合的に理解して確認した上で翻訳を行わなければないため、中国語で「単一」は一つの意味もありますが「個々」という意味も含まれるため、正確な翻訳はdividing the devices into groups,the groups being provided with individual identifiersです。

 
5.発明者とコミュニケーションとります。
   
翻訳文の品質を保障するためには発明者とのコミュニケーションも非常に重要です。 原文に間違いがある場合、たとえば文字間違いのように明確に判断できる事項はすぐ修正することができるが、そうでない場合、たとえば発明者の意図が原文に正確に反映されていない場合、直訳すると発明家の意図から外れることになるかもしれないので、発明者とコミュニケーションをとって一部の単語と文章パターンを適切に調整しなければなりません。
 
 

以上、特許翻訳にあたっての注意点と要点についての簡単な分析です。 多くの特許出願文書の翻訳経験を総じてみると、特許出願文書の翻訳は決して単純な文字翻訳ではなく、法律、特許、専門技術分野など多方面の知識と発明者とのコミュニケーションが必要であることが分かります。 このような様々な側面の総合的な改善は特許出願文書の翻訳に役立ち、言語上の欠陥による特許保護範囲の偏差を防止するのに役立ちます。