読み終わりました。
「サクランボたちの幸せな丘」と「ブリットーマリーはただいま幸せ」
どちらもリンドグレーンの初期の作品です。リンドグレーンが初めて書いたのは「ながくつしたのピッピ」ですが、出版社から突き返されてしまいました。それで、ティーンエイジャー向けの作品を募集していた部門に「ブリットーマリーはただいま幸せ」を書いたら一位受賞で、初出版となりました。ピッピも手直しして、その後受賞して出版となり、これが大ヒット。探偵ものも募集していたので「名探偵カッレくん」を書き、これも受賞。以来、リンドグレーンは公募に応募することはなくなりました。次々に作品依頼が来たからです。

日本ではブリットーマリーは翻訳されたのが2002年のため、私は子ども時代に読むことはできませんでした。

どちらの作品も「やかまし村」の小学生たちがティーンエイジャーになったら、こういうふうに育ったんだろうなあと思い、52年ぶりにやかまし村のこどもたちの成長を知ったような感じです。もっとも、やかまし村の方が後で書かれているんですけどね。

だから、リンドグレーンの子ども時代や思春期を読んでいるかのようでした。実際のリンドグレーンは内気で慎重だったらしく、活発で強い女の子というのはリンドグレーンの憧れだったのかもしれません。

北欧は冬が長く、厳しいのでしょう。だから、春や夏への喜びにあふれています。行ったことのないスウェーデン、でもその自然の美しさは子どもの頃からリンドグレーンに教えてもらって、私の脳裏に刻まれています。

ティーンエイジャーどころか、シルバー世代の私ですが、読んでいると気持ちがティーンエイジャーに戻ります。

やかまし村との違いは、ほのかな恋心があちこちに描かれているところですね。でも家族愛に満ち溢れているところは同じです。ユーモアに溢れた一家、いたずら好きな弟たちのやること、なすこと、この辺もやかまし村に似ています。
お姉ちゃんの恋路を面白がって、弟がついてまわって冷やかし、後ろからアコーディオンでめちゃくちゃを弾いて歩き、ロマンチックぶち壊しにするところなど、大笑いしてしまいます。

私は20代のとき、ひょんなことからインテリみたいな男性とお付き合いしていた時代がありました。お互い、本好きということでは気が合いましたが、子ども時代に読んでいた本が全然違いました。私がリンドグレーンを好きだったというと彼は
「僕はそういう子どもっぽい本は読めなくてね。小学生のときからドストエフスキーを読んでいたから」
と言うのです。ドストエフスキー?私は高校生になって「罪と罰」を読んで、かなり疲れました、という程度の読解力です。

だけど、私はリンドグレーンを楽しめる小学生で良かった!とそのとき、心から思いました。もちろん、何歳で読んでもいいのですが、感性豊かな時期に読めたのは幸せです。べつにそれで別れたわけでもありませんが、その人とは結局お付き合いをやめました。頭はいいのかも知れませんがネガティブ過ぎたので。

この二冊も子ども時代に読めていたらなあ!ティーンエイジャーになることをどれほど心待ちにできたことか。好きな人と美しい川辺を散歩するとかダンスパーティで踊るとか!あ、日本ではダンスがそんなに普及してなかったか。欧米のダンスパーティはどの作家さんのを読んでも楽しそうです。リンドグレーンはいくつになっても踊り続けたいと思うほど、ダンスが大好きだったようで、楽しそうに描かれています。

子ども時代に読めなかったけど、死ぬ前に読めて良かったな!シルバーになっても気持ちが若返りますよ。図書館にはあると思うので、興味のある方、かつてリンドグレーンが好きだった方にはお薦めします。

そしてシルバーになっても、リンドグレーンが言った通り、ダンスは楽しいものです!たとえ翌日、筋肉痛に悩まされることになってもね。