薄暗い建物の奥に進むと、丁度ふさいだ入り口の真上にある部屋の前に立つ

上をみると「使用中」と書かれたランプがある


(ここっぽいな)

そっと開けると、大きな機材や、CD,DVDが並べられていた

機材の説明書なんて、うまい具合にポンと置かれている訳じゃない


(まー、とりあえず全部電源ONにしてみっか)

適当に機材を動かし、音量を大にして
そして、スタートと書かれたボタンを押した


(鳴れっ)


しばしの静寂の後、聞こえてきた
にゃんにゃんが大好きなアイドルの曲だ


(よし)

窓から外を見ると、ふさがれた入り口前に、どんどん集まってくるウォーカー達
この建物の反対側から出れば、少しは時間が稼げるだろう
部屋を出る前に赤く光っている「使用中」というランプを見ながら、田野の名前を呼ぼうとした
その時だった


“グラッ”



建物が揺れる


(地震かっ?)


こんな時に限って、ウォーカーだけでなく自然が敵にまわるとは
そして運が悪いことに
爆破したドアの入り口
そして入り口に群がるウォーカーの力によってあたしの居た場所が崩れはじめた



ホコリがまう中、目の前には道なき壁
完全にコンクリートの壁に囲まれてしまっていた
そして更に運が悪いことに、あたしの足には何重にも重なる板が乗っていて身動きがとれなかった
頬に生暖かいモノが流れてきて、頭から出血しているという事も、薄れゆく意識の中で確認できていた


(やべーな・・・まじで・・・田野は・・・大丈夫だったかな・・・)


もう体は動かなかった。動けなかった
その時、壁の向こう側から田野の声が聞こえてきた


「優子さんっ!大丈夫ですか!?、優子さんっ」


(田野・・・良かった・・・)


不安に叫び続ける田野の声
あたしは精一杯の力を込め答えた


「田野、あたしは大丈夫だ」
「優子さん、良かった。逃げ道確保しました。早くここから出ましょう」
「田野っ、壁が厚すぎてそこには行けない。お前だけ先に行け。あたしは後から行く」
「優子さん?嘘ですよね?待って下さい。この岩どけますから」
「田野っ!言う事聞けっ」
「嫌です」


“グラッ”



先ほどと同じくらいの大きさの揺れ
このままじゃ、田野まで巻き込まれてしまう


「田野・・・ここはもう崩れる。早く出ろっ」
「う・・・ぅぅ、ゆ、優子さ・・・ん」
「泣いてる時間なんて無いぞ、早くっ」
「嫌です、優子さんと一緒に居ます」
「甘えんなよ。いいか、これは命令だ。早く、出ろっ。心配するな・・・あたしも後から追いつくからよ」
「うぅぅ・・・」
「行けっーー」


壁に挟まれ姿は見えないが、田野が泣きながら、走り去っていく姿が目に浮かぶ


(絶対、生き延びろよ、田野)



もう完全に朦朧としている中、聞こえてくるミュージック


“前しか向かねえ、最後くらいはかっこつけさせてくれ”


(あはっ、この曲・・・あたしの踊る姿をにゃんにゃん笑って見てたっけ)




(にゃんにゃん・・・陽菜・・・大好きだょ・・・)



真っ暗となる世界


にゃんにゃんの姿が
遠くへ、遠くへと消えていった