「ゆうちゃん?」
「え?陽菜?どうしたの?」
「ううん、今、ゆうちゃんの声がしたような気がして」
「そっか」


麻里ちゃんの手が陽菜の頭を優しくなでる
いつもはそうされると気持ちが落ち着くのに、なぜか今日は変な感じ


「麻里ちゃん、なんか変。ゆうちゃんに何かあったかも」
「陽菜、大丈夫だよ。優子は陽菜の元に帰ってくる。ほら、もう眠なっ」


麻里子にそう言われたけど、胸がザワザワとうるさい


ゆうちゃん
早く、陽菜のとこに帰ってきて。不安にさせないで
麻里子にばれないように、自然に出てきた涙を拭いた




◆◆◆



「・・・よし、出発するぞ」


重苦しい雰囲気のまま、メンバーが各乗り物へ移動する
誰も納得なんてしてないはずだ
だけど、「優子さんなら」という思いだけが、みんなの重い足を前へと進めた


優子、田野、みんな待ってるんだから、早く来いよなっ
青く晴れ渡った空を見上げ、願った





あれから2日間、車を走らせた
そしてやっと見えてきた


「たかみなさん!海っ!海が見えます」
「あぁ、そうだな」


バスの中も大騒ぎだ
だけど、まだまだ不安がいっぱいだ
船はあるのか?
ウォーカーは?


ゆっくりのスピードで様子をうかがいながら、小さな集落を抜ける
どうやら、ここの人たちはすでに脱出したのか、家には誰もいない様子だ


先頭を走るバスが左へ曲がった
そして


「・・・・船だ・・・・」

小さな港
そこに、希望の船があった




◆◆◆


「まさか、本当にあるとは・・・」


目の前にある何艘もの船


「たかみなさん、向こうにすごいイイ船が停泊してます」
「ん?」


興奮した様子でやってきた、さしはらと北原が遠くを指をさした


「あれは」
「貨物船ですよ、あれ」


他の船よりも大きなその船は、遠くから見ても立派なものだとわかった


「まだ積み込まれているものがあるかも知れません。見てきます」
「ちょ、待て。私も行く」


ここまで不思議とウォーカーに遭遇していない
田舎だからなのか
ここに住んでた人達は感染する前に消えたのだろうか
そんな疑問はすぐに解決できた


「たかみな、これ」


みーちゃんが持ってきた紙には、こう書かれていた



“○月○日、救助部隊が来ます
荷物は最小限にして、待機して下さい“



「そっか、ここはみんな早めに避難したんだな」
「・・・たかみな、部隊の名前見てよ」
「ん?第4部隊、確か隊長は大場?だっけ」
「・・・第4部隊は・・・全滅したって無線で聞いた・・・」
「え?」
「ここの人達、救助されたのに、途中でやられちゃったんだよ」
「そんな・・・・」


仲間がやられた悔しさ
そして、救助隊を信じ、ついていったここの村の人達がやられた現実に、やるせなさが残る
「運」というもので片づけられるものではないが、助けに来たのに、助けられなかった。そして、今、私達はこの場所に居る


「無念・・・・」
「たかみな・・・」

「みーちゃん、亡くなった人達の分も、頑張って生きなきゃね」
「そうだよ、たかみな」




そんなんだ。もう私達は前を向いて生きていくしかないんだ

くよくよなんてしていられない




「よしっ、貨物船を調べるぞ」