「おりゃ~」
「うわっ、どこ狙ってんだよ~」
「へたみな、取れよ」
「なんでやー」
大学生活最後の夏休み
仲良しグループと一緒に訪れた海
まりちゃんが持ってきたビーチボールで
ただいまたかみなを特訓中(笑)
最初は、めんどくさいと言ってたあっちゃんも、きゃっきゃとボールを追いかけている。
正しく言えば、たかみなをイジって楽しんでると言った方がいいかな
そんなあたし達から、少し離れた場所で
『日焼けしたくない』って理由で、影になってる場所に座って、こっちを見てる陽菜
大学でまりちゃんに紹介された時、本当は知っていたんだ
入学式で初めて見た陽菜に一目惚れしてたから
あの日から3年間は、片思いの日々
夏が終わり、冬がきて、春になればみんなともお別れ
社会人になったら、今みたいに集まれることも少なくなるだろう
陽菜とも・・・
「よっこいしょ」
陽菜のとなりに腰をおろせば
「よっこいしょって、おっさん?」ってフフフと笑う陽菜
おっさん・・・ま、いいか
まだたかみなイジリをしている、あっちゃんとまりちゃんの姿を目を細め見ながら、時々フフっと笑う彼女の横顔に、ドキっとしながら、ごまかすようにポケットから煙草を取り出した
「もう、くさい!」
「え?まだ火もつけてないじゃん」
「いまからくさくなる」
「・・・へいへい」
陽菜から離れて吸おうと思い、立ち上がろうとすると
「ひま」
「え?」
「だから、一人だと、暇だから。むー我慢する」
少しだけぷくっと頬を膨らませながらいう陽菜
そんな彼女が可愛くて、面白くてニヤニヤしてると
「早く吸い終わってよね」って怒られた
携帯灰皿片手にし、なるべく陽菜の方に煙がいかないよう気をつけた
その間も
「くさい、くさい」っていう陽菜に苦笑い
「なんで煙草吸うの?美味しい?」
「んー、気分がスッキリするっていうか、なんていうか。なんか吸わなきゃ落ち着かないっていうか」
って言うと、「ふーん」と返された
「なんだよー、聞いといてそれ?w」
「だって、なんで吸ってるのか、わかんないんだもん」
「・・・じゃあさ、あたしと付き合ってくれたら煙草やめちゃうよ?」
あたしの冗談半分、本気半分の言葉
陽菜の返事しだいで、どこでも逃げられるような言葉
卑怯でずるい、遠回しのあたしの陽菜への告白。
返事を待つ間、あたしの胸はドキドキしていた
相変わらず、陽菜は目を細め、遠くの友人の姿をみつめてる
なんだか、こんなふうに陽菜の気持ちを確かめようとした自分が情けなくなって
『あはっ、冗談だよ』
そう言いかけた時、陽菜がこっちを見て言ったんだ
「・・・じゃあ、今すぐ止めてよ」って
今度は、あたしが黙り込む番
陽菜はちゃんと理解して、その言葉をいったのだろうか
止めてよってことは、あたしの告白を受け取ったってこと?
「えっと、陽菜?あたしがさっき言った言葉覚えてる?」
「・・・覚えてる・・・」
「付き合ってくれたら止める。あたしそう言ったんだけど」
「・・・だから言ったじゃん・・・付き合ってあげるから。。。いますぐ止めてよね」
え?まじですか?
・・・やったーー
すぐに手にもってた煙草を携帯灰皿に押し込み
陽菜に抱き着いた
「陽菜~好き~」
「あー、もう煙草くさい」
そう言いながらも、陽菜の大きな耳が真っ赤になっているのを確認し
もう一度、強く抱きしめた
長いあたしの片思いは、1本の煙草で実こととなった

