きみと、どうしても来たかったこの海辺
季節は春へと向かっているけど、風はまだ冷たくて
自販機で買った、熱い缶コーヒーをポケットに入れて
季節外れの海を、ただ眺めていた
少しだけ温まった手を無言でさしだせば
きみも何も言わずに握ってくれた
『陽菜に告白しようと思ってる』
親友の麻里ちゃんからの言葉に、あたしは何も返せなかった
いつも、どこにいくにも3人一緒で
ずっとこのまま、この関係が続くものだと思っていた
あたしに、正々堂々と戦いを挑んだ麻里ちゃん
その戦いから逃げたあたし
そんなあたしが、今更陽菜を誘うなんて
勝手だと思うよね?
こんなあたしで・・・ごめん
ねぇ、陽菜
もし、あたしも陽菜の事が好きって言ってたら、陽菜はどっちを選んだ?
巻き戻せない時間を悔みながら、海を見つめた
あたしの想いと同じ様に
寄せては返す、波が切なかった
「・・・返事した?」
「ん?」
「ほら・・・ゆうちゃんに告白してきたあの子・・・」
「あー・・・、あっちゃん?まだだよ」
ここに来て、初めての会話がそれで
出来れば、陽菜とはしたくない会話の内容だな、とは思った
けど、いつもの二人の感じが・・・嬉しくて・・・切なかった
「あの子、すごい人気あるんだって」
「そっか」
「・・・もたもたしてたら、誰かに取られちゃうかもよ」
「んーー、考えてみるよ」
「ゆうちゃん意外に・・・ヘタレだからね」
そう言った陽菜の笑顔が、少し悲しそうに見えたのはあたしの勘違いかな
麻里ちゃんへの返事に、3日かけて答えをだした陽菜
その3日の間、陽菜は何を考えていたのだろう
あたしが行動してたら
何かが変わっていたかな
今更、気づいた大切な宝物
後から見えて来たって、もう遅い
わかってる・・・わかってるよ
だから
いてくれればいいから
いてくれるだけでいいから
懐かしいこの砂浜で
一緒に夕陽眺めよう
2人で会うのは今日だけ
明日になれば、また友達の大島優子に戻るから
『幸せになってね』
なんて言葉は言わないよ
だって、麻里ちゃんだもん。絶対、幸せにしてくれるよ
何も言わずに
付き合ってくれた今日1日を
あたしの宝物にして
前を向いて行くよ
だから、最後に今日だけ
愚かな愛に付き合って

