◆◆◆ ≪ 優 ≫ ◆◆◆
(よしっ)
気合をいれ、陽菜のテントに近づく
(う、ちょ、ちょい待てよ)
足を止め、3歩下がる
さっきからこの動きを、もう4回もしている
(ヘタレだなー、オレ)
ガックリ首を落とし、もう一度(よしっ)と気合をいれる
今度こそ、今度こそ、陽菜を呼びだすんだ!
「優、なにしてんだ?」
足を一歩前に踏み出すと同時に聞こえてきた佐江の声
その声は笑いが含んでいて、見なくても佐江がニヤニヤしてるが想像できた
「あー、うん、ちょっとね」
明らかに怪しい曖昧な返事を返すと、想像した通りのニヤニヤした顔が目の前に現れた。
「ふーん。あ、女子テントに用?」
(くっそー、分かってて言ってやがるな、こいつ)
そうだよ、とも言えずに挙動不審なオレに佐江は
フッと笑って
「おれも、りんちゃんに用なんだよねー。あ、そうだ、最後にみんなで星空見に行こうぜ」
そういうと、オレの返事も聞かずに、女子テントへと声をかけた
佐江の誘いに、嬉しそうにみんなテントから出てきた
オレがモタモタしてるのを、佐江が手助けしてくれたんだろうな
さすが、オレの心友
6人で、あまりテントから遠くない場所へと移動する
楽しかったね~なんてみんなでキャンプの感想を言い合って、わいわい
でも・・・オレの胸はドキドキ
だって、これから、陽菜に好きだって伝えるんだから
やばい・・・まじ緊張してきたー
◆◆◆ ≪ 陽菜 ≫ ◆◆◆
(今日のゆうちゃん・・・かっこよかったなぁ・・・)
「・・な・・・はるなっ!」
「ん?」
「ん?じゃないよ。どーしたのボーとして」
「あ、板野さん、小嶋さんはいつもボーとしてますけど」
かしわげちゃんが失礼な事を言ってるけど、それも気にならないくらい幸せ気分。
ふわふわ気分の陽菜に対して、二人の呆れたような目。そして始まった小芝居
「はるなっ!助けにきたぞ」
「ゆ、ゆうちゃん」
「もう、大丈夫だからな。オレがついてからな」
「ゆうちゃん、ありがとう」
だから!二人って本当はこんなキャラじゃないでしょ!!
わいわい、キャッキャうるさいテントの中
その時、テントの外から宮澤くんの声が聞こえてきて
みんなで星空見に行こうよってお誘いだった
6人でワイワイ騒ぎながら歩く
でも、なんだかゆうちゃんがいつもよりおとなしい
なんだろう?気分でも悪いのかな?
「ゆうちゃん?」
気になって顔を覗き込みながら声をかけると
「ぬわっっ」なんて
変な声をだして驚くゆうちゃん
「なんで慌てるー?」
「い、いや、慌ててない」
むー、かなり怪しい
変なゆうちゃんって思いながら歩いてると
小さな声でゆうちゃんが言ったの
「陽菜、ちょっと二人だけで抜け出そう」って
「えっ?」
今度は、陽菜が慌てる番だった
静かに流れる川の近く
ちょうど二人が座れそうな大きな岩に無言で腰掛ける
空にはキレイな月と満天の星
月明かりが映し出すゆうちゃんの横顔を、ドキドキしながら陽菜は見つめた
しばらくすると
「陽菜」
名前を呼ばれる。いつもとは違う顔つきのゆうちゃんに益々、心臓はドキドキ
「ん?」
一言しぼりだすように出した声を聞いたゆうちゃんは、いつものような笑顔を陽菜に向け、そして
「オレ、陽菜の事が好きだ。」
そう言って、恥ずかしそうに頬をかいた
えっと・・・ここは、陽菜も好きって伝えた方がいいのかな・・・
どう返してよいか迷ってるうちに、ゆうちゃんが次の言葉を口にした
「オレの・・・彼女になってもらえる?」
ゆうちゃん、陽菜はね
嬉しくて、グスン、グスン泣く陽菜にオロオロしてる姿
今日みたいにカッコよく、陽菜を助けてくれた姿
みんなに優しくて、頼りにされてる姿
妹思いの素敵なお兄ちゃんの姿
今まで、いろんなゆうちゃんを陽菜は見てきたんだから
いつか、ゆうちゃんに言って欲しかった言葉をやっと聞けた
言っておきながら、眉をさげ不安そうな顔しないでよ
返事は決まってるじゃん
「うん、ゆうちゃんの彼女にして下さい」
