楽屋で箱を持ちながら、ゆうちゃんが来るのを待っていると
やっと現れたゆうちゃん
やっぱり、変。静かに入って来るゆうちゃんなんて変だよ
うるさいくらい、うざいくらい、あの掠れた声をいっぱい聞きたいよ
「はい、ゆうちゃんにあげる」
そんな思いを込め、箱を渡すと、キョトンとした顔をして受け取ったゆうちゃんが、しばらくして陽菜の横に座った
改めてお礼を言われたけど、いつものようにツンとした返事を返す
だって、二人が普通にしてろって言うんだもん
携帯をいじるふりして、さりげなくゆうちゃんの様子をうかがう。けど・・・
ゆうちゃん、キラキラした瞳はどこいったの?
まぶしいくらいの笑顔は?
そんなゆうちゃんの姿をみて、胸がギューーと締め付けられる
「ゆうちゃん!」
「へ?」
急に声を掛けたから驚くゆうちゃんの腕をひっぱって、無理やり陽菜の膝の上にのせた
「こ、こじまさん?」
膝の上でバタバタするゆうちゃん
「なに?」
「え?なにって・・・これの方がなに?」
そうだよね、陽菜の方からゆうちゃんを膝にのせるなんて今まで無い事だもんね
普通ではないけど、でも、したくなっちゃったんだもん。
ゆうちゃんの小さな身体をギュウと抱きしめた
やっぱり前より痩せてる・・・ばか・・・小さな身体。ますます小さくなっちゃたじゃん・・・
「こじましゃん?」
「いいの!陽菜がこうしたいの!」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・ゆうちゃん、見て」
「・・・ん?」
ゆっくりと顔をあげたゆうちゃんは、陽菜の見ている先を見る為に後ろをむいた
「・・・・」
そこには、ゆうちゃんと陽菜を見つめるメンバーの顔
無言のゆうちゃんを再び陽菜に向かせ、胸に押し付ける
「ぐ、ぐるしいよ、こじましゃん」
そんな言葉を無視して、陽菜はギュッと抱きしめた
「ゆうちゃん、このままで聞いてね」
「・・・うん」
「みんな、ゆうちゃんに言いたいこと、伝えたい事いっぱいあるの。でも、陽菜がみんなの言葉を伝えるから、聞いて」
「・・・・うん」
「まゆちゃんからね。『私は優子ちゃんを踏み台にするつもりはありません。まだ全然だけど、私は優子ちゃんの隣に並びたい。私、頑張るから横に来るまで待ってて下さい』」
「はは・・・可愛いやつ・・・」
「ぱるるからは『無理しなくて思います。今、塩対応が流行りですよ』」
「・・・そんな流行りないょ・・・」
「珠理奈と彩姉は同じ事言ってたよ『絶対追い越してみせるから。目標の人で居て下さい』って」
「強気な二人らしい言葉だね・・・」
次世代エース候補のメンバーの言葉を伝えると、少し、安心したような顔をしたのは陽菜の気のせいかな?
「次は、あすかちゃん。『力持ちの島田と私で微力だけど、優子ちゃんをちゃんと支えるからね』」
「・・・もう十分支えてもらってるよ・・・」
「みるきーから・・・は、いっか・・・」
「また一緒にチャプチャプしよ?だったりして・・」
「・・・・むー」
「・・・合ってんだ・・・」
「みーちゃん『優子はAKBの顔です。優子が前を向いてくれるだけで、それでいいです』」
「あはっ・・・あたしの言葉パクリじゃん・・・」
「次は、えっとたかみな。ぐだぐだ長いから、最後だけ言うね『チビーズは最強なんだよ』って」
「あはっ、訳わかんねー・・・」
「他にもね、沢山、いろんな人からメッセージあるの。でも陽菜が覚えられなくて」
「小嶋さんらしいね」
顔をあげたゆうちゃんに少しだけ前のような笑顔が浮かんだ
それを見ていたメンバーにも笑顔が浮かぶ
やっぱり、ゆうちゃんの笑顔は、みんなを元気にするんだよ
「ゆうちゃん、陽菜ね、どれが本当のゆうちゃんなのか分からないの。本当はゆうちゃんは、ものすごく静かで大人しいのかもしれない。だから今、静かなゆうちゃんが本当のゆうちゃんかもしれない。うるさいゆうちゃんは演じてるのかもしれない。けど、うるさい方が本当のゆうちゃん?それは陽菜には分からないし、誰も分からないと思うの」
「・・・うん」
「でもね、歌って、踊ってる時のゆうちゃんは知ってる。キラキラしてて、輝いてるの。だからいつも目に入ってくるのはゆうちゃんの踊ってる姿と、楽しそうな笑顔。それが本当のゆうちゃんなんだと思う」
「陽菜・・・」
「きっとね、後輩メンバーも、そんな姿に憧れをもったり、目標にしたり、尊敬したりしてると思うの。だって、普通に行動してる事、おっさんくさいし、誰も憧れたりしないもん」
「最後、思いっきり悪口」
「だから、ゆうちゃんにはキラキラ踊ってほしい。難しい事は言わなくてもいいの、何も考えずに楽しんでほしいの。それがきっとみんなに届くから。そして、ゆうちゃんの本当の笑顔は、みんなを笑顔にするの。メンバーも、ファンの人達も」
「・・・・」
陽菜の腰に回してあったゆうちゃんの腕に力が加わってギュウってされたから、陽菜も同じくらい力を込めてギュウとした
「やっぱり陽菜ってすごいね」
「ん?」
「陽菜といると、悩んでる事がどうでもよくなっちゃう」
「あ、それ前にも言ってたー」
「うん。改めて感じた・・・好きー。こじまさん、好きー」
「知ってるー」
「知ってたか。あはっ・・・陽菜、これからもあたしの側に居てね」
「ゆうちゃんから寄ってきて、陽菜めんどくさいから」
「ツンデレー。でもすきー。もういっそ結婚してー」
「・・・・ばか・・・もうしたじゃん」
「・・・・あはっ、そっか。してたー。2回もしたー」
陽菜の胸に顔をうずめたゆうちゃんから、笑い声が聞こえる
体が小刻みに震えているから泣いてるのかもしれない。
いいよ、お気に入りの服だけど、泣きたいなら、いっぱい泣いていいよ
なにも無理する事ないもん
笑うのも
泣くのも
怒るのも
拗ねるのも
自然体でいいんだよ、ゆうちゃん
無理しないで。本当の笑顔見せてね
そんな思いを込め、ギュウと再度力をこめ抱きしめた

