いつものように、陽菜お嬢様を家まで送り、今からさしはらの時間です
屋敷に、さしはら専用の部屋があるんですが、さしはらにも愛する人がいるんです
特に、今日みたいなお嬢様達の初々しい幸せな姿を見た後は、特に会いたくなるんです


ウキウキ気分で、車をとばしていると、お嬢様のデート場所、公園の近くまで来ました


ん?


車を路肩につけ、目をこらしてみると、まだ居たんです
あの兄妹


え?


慌てて、時間を確認。もう21時前ですよ?
陽菜お嬢様達と別れてから3時間たってるじゃないですか

あわてて、車を降り、その公園へ足を進めた


「ゆう君、敦子ちゃん、何してるの!?」
「あ、さしはらさん」「あー、さっしーだぁ」


あ、お嬢様を公園に送迎している間に、さしはらも今では、二人と仲良しなんです
そんな説明よりも!


「こんな時間まで?家に帰ってないの?」
「あーー、・・・はい」


答えずらそうなゆう君の顔を見て、なんか事情があるなって思いました


陽菜お嬢様から、少しだけ、聞いた事があります
ゆう君の家も、お母さんが亡くなっている事
お父さんが酔うと暴れるから逃げてる(これは敦子ちゃんが言った言葉らしく、ゆう君は、それを隠そうとしている)って言うこと


それにしても、さすがに小学生がこんな時間まで・・・
しかも、こんな寒い夜に、二人とも、薄着じゃないですか・・・


きっと、今、さしはらが帰っても、まだこの兄妹はここに居る・・・だったら・・・



「・・・ね、二人とも、ごはんまだ?まだなら、一緒に来ない?」


そう言うと、ものすごい目力でさしはらを見る敦子ちゃん
あ・・・はい、おなか空いてるんですね・・・


「大丈夫です。さしはらさん。もう少ししたら帰りますから」


ゆう君は無理して笑ってそう言った
その笑顔が、あまりにも痛々しいもので、さしはらの心がギュっとなった



「ちょっと待っててね」

二人にそういって、携帯をとりだした


「あ、うん、今帰るね。あ、友達二人連れていくから。うん、ごはん追加宜しくね」


携帯をしまって、二人の顔を見たら、この会話を聞いていたのか、ポカーンとした顔
その顔が可愛くて、面白くて声を出して笑うと、ゆう君も本当の笑顔が顔に浮かんだ



さすがに、この時間に子供を連れまわすのはどうかと思い、ゆう君に
「親に、連絡いれといた方が」
と言うと、急に、深刻な顔をして
「大丈夫です。オレ達が居ない事にも気づかないと思います」

そう言ったゆう君は、敦子ちゃんの肩を抱いて、俯いた


どれだけの想いをこの小さな身体で感じているのだろう


大人が、子供を守らないで、親が子を守らないで・・・何してるんだ
怒りがこみあげてきました


でも、とりあえず、今は、あったかい部屋と、ごはんです




◆◆◆  ◆◆◆


「ただいま」
「おかえり」


ドアをあけてくれた愛しの彼女は、さしはらの友達二人を見て、目が点

そりゃーそうですよね、大の大人が遅い時間に、友達って言って、子供を連れてくるんですから



「とりあえず、後で話すから」

小さい声で話すと、彼女は笑顔で頷いた
うん・・・いい女だ・・・


部屋の中で落ち着かないちびっこ達
さしはらの愛しの彼女が、鍋を用意してる姿を、目で追ってる姿がなんとも言えなく可愛い
きっと、陽菜お嬢様に、一緒にご飯を食べたなんて事を話したら、うらやましがられるだろうな


「さてと、用意できたよ。食べよっか」


さしはらの横に座った愛しの彼女
あ、そうだ、紹介してない


「りえちゃん、さしはらの友達で、こっちがゆう君。で、妹の敦子ちゃんだよ」
「りえです。ゆう君に敦子ちゃんか。よろしくね」


ぎこちなく、頭をペコっと下げる二人を見て
「かわいいーーー」と騒ぐりえちゃんを

「さしはらの大事な人なんだよ」って

ゆう君と敦子ちゃんに紹介した

顔をまっかにするりえちゃん
うん・・・可愛い


紹介をすませ、みんなで一緒に「いただきます」をした


よほどおなかが空いていたのか
この小さな身体のどこに、そんなに入るのかわからないが、敦子ちゃんは沢山食べた


ゆう君も、最初は遠慮がちにしていたけど、りえちゃんが取り分けてあげたり、おかわりしてあげたり、話しかけたりして気を許してきたらしく、最終的に


「さしはらさんには、もったいないくらい綺麗ですね、りえさんって」

などと生意気な言葉をはけるようにもなっていた
りえちゃんも「綺麗」の言葉に顔赤くしちゃってさ。
「ゆう君も、カッコ可愛いね」なんて、二人して褒めあっちゃって・・・
ニコニコ見つめ合っちゃって。なんだよ。なんだよ・・・・
陽菜お嬢様に、チクッてやろうか・・・




いっぱい食べて、満足した敦子ちゃんはすでに夢の中です
ゆう君をみれば、目をパチパチさせて、ねむねむの様子


「どうする?ゆう君、このまま、ここで寝ていく?」
「ううん・・・帰ります」


「・・・もう大丈夫なの?帰っても」
「お父さん・・・酔って暴れるの?」


そう言うと、目を大きくひらくゆう君


俯き、何も話さないゆう君に
無理やり聞き出すことのないかなって思って、これ以上、聞くのはよそうと思っていた時


「父ちゃん・・・母ちゃんいなくて・・・寂しくて・・・でも、酔って、いつかあっちゃんが・・・あっちゃんに痛い思いさせたくないから・・・だから・・・だから」


「うん、うん」


泣かないように、グッと拳を強くにぎりしめ話すゆう君
でも、目には涙がたまってきていて、いまにもこぼれ落ちそうだった


横にいるりえちゃんは、すでに泣いていた



「父ちゃんが眠るまで・・・あの公園で・・・」
「時間つぶしてたんだね」


コクリとうなずくと同時に涙がこぼれた
それをすぐに、袖でごしごしする姿を見て、さしはらも涙がでそうになる


よく見ると、腕や、足、顔に痣があった


ゆう君は、敦子ちゃんを守るために頑張ったよ。頑張ってるよ

そんな気持ちをこめ、ゆう君を抱き寄せ、頭をなでた
さしはらの中で、守りたいと思うものが、二つ増えた




しばらくして顔をあげたゆう君は
今まで言えなかった気持ちを吐き出せて、少しだけ楽になったのか


「どうせなら、りえさんにギュってしてもらいたかったです」


なんて事を、ほざきやがった

やっぱり、このちびっこ、末恐ろしいぞ・・・