陽菜がなぜ、お嬢様って呼ばれてかって?
それは、陽菜の家が、お金持ちだから
ウン十万もする、陽菜の可愛い、大好きな愛犬を散歩させちゃう事ができる、大きなお庭もあるんだけど・・・
「さしはらー、車だしてー」
「えー、またですか?」
「は?なにか言った?」
「いえいえ、では行きましょうか」
車に、愛犬と一緒に乗り込む。目的地は、もちろんあの日、あの子を見たあの場所
「なにも、あんな遠くに散歩につれていかなくても」
「いいの!あそこの空気がおいしいの」
「意味わかりません。散歩させるのに、犬を車に乗せていくのも、意味がわかりません」
「うるさい、さしはら」
「・・・はい」
「いつもの場所で、待っててよね」
「はい、あまり遅くならないで下さい。」
「わかった」
あの日から、今日で1週間
散歩を装って、違う違う、ちゃんと散歩だもん
犬の「うさ」と「みみ」を連れてあの道を歩く
あまり遅くだと、『さしはら』が心配するから、まだうっすら明るい時に来ているんだけど、あれから全然会えない。学校で、ちょこっとだけ顔を見る事はあるけど、なんかそれだけじゃ物足りない気がして。
こうして、会えるかわかんないのに来てる陽菜って、なんだろ・・・
妹ちゃんが座っていたブランコに腰かけながら、そんな事を考えていると
「あー、ワンちゃんだ。可愛いー」
目の前に現れた女の子
あ、この子、大島君の妹ちゃんだ
妹ちゃんを確認と同時に、聞こえてきた掠れた声
「あれ?小嶋さん?」
妹ちゃんを追いかけ、駆け寄ってきた大島君が、真ん丸な目をして、陽菜に声をかけてきた
(話かけられた!!)
なによ、陽菜、心の準備してないのに、話かけてこないでよ
びっくりしすぎて、陽菜の発した言葉はお粗末なものだった
「なんで名前知ってるの」
ぶっきらぼうなしゃべり方になってしまった陽菜に、大島くんは笑いながら言った
「小嶋さん有名だもん。可愛いから」
そう言いながら、陽菜の顔を覗き込んだ
そこで目がガッツリあってしまった
「可愛い」なんて言われ慣れてるけど、大島くんに言われ、顔が熱くなったのがわかった
顔も体も熱くて、心臓がドキドキ
なんなの?これ
「あ、そ、そろそろ帰らなきゃ」
動揺を隠すため、ひとまず退散しなきゃ
「もう帰っちゃうの?おねーちゃん」
「うさ」と「みみ」の頭を撫でていた妹ちゃんが悲しそうな目で、陽菜を見ながらそう言った
(うっ・・・かわいぃ・・・)
でも、今日の陽菜はこのまま、この場所に居る事ができないくらい動揺してるし
「あっちゃん、小嶋さん帰らなきゃいけないんだよ。ワンちゃんにバイバイして」
妹ちゃんの頭を撫でながら、優しく微笑む大島君に、更にドキドキが続く
(今は・・・居たくないけど・・・また、会いたい・・・)
「あ、明日も、明後日も・・・ほとんど毎日、ここ散歩させてるから」
だから何?と自分に言いたい
素直に「会いにきてよ」って言えばいいのに
そんな可愛くない陽菜に、大島君は
「まじ?良かったね、あっちゃん、明日もワンちゃんに会えるよ。んじゃ、小嶋さん、また明日、会おうね」って笑った
ボーとした気持ちのまま、停めてあった車の中へ戻ると
なんだか、さしはらがニヤニヤしてて・・・(ムカつく)
で、こう言ったの
「陽菜お嬢様の、初恋ですか?」って
は?初恋?
恋?
・・・・・これが恋って言うのかな
まだよくわからないけど、今の陽菜の状態は
その「恋」をした時の症状に近いのかも・・・
とりあえず、ニヤニヤ顔のさしはらの肩を、小突いておいた
◆◆◆◆◆ (さしはら語り) ◆◆◆◆◆
お嬢さまがおかしい
もともと、おかし・・・おっと、これ以上、口がさけても言えませんけどね
ここ最近、家とはだいぶ離れた公園に、わざわざ愛犬を散歩させに行っているんです
「ここで待ってて」
と、言われても、さしはら気になりますよ。
なので、もちろん後をつけちゃいますけどね
そっと、物陰に隠れ、お嬢さまを観察
いつものように、いつものブランコに座り、肩を落とし、大きくため息をつき、戻ってくると、いうのがこれまでの行動パターンでしたが、今日は何かが違いました
確か、あれはあの日、公園でみた小さな子供達
少しだけ会話した、陽菜お嬢さまの顔が、ここからでもわかるくらい、真っ赤になってます
あれーー?これはーーー?
なるほど、なるほど
ニヤニヤしながら車の中で待ってると、陽菜お嬢さまが、ボーとして帰ってきました
あ、いつもボーとしてますけど、磨きがかかってのボーです
「陽菜お嬢様の、初恋ですか?」
ニヤニヤしながら言ったさしはらにムカついたのか、陽菜お嬢様の洒落にならないパンチが肩に飛んできました
でも・・・陽菜お嬢さま?
気づいてないかもしれませんが、陽菜お嬢さまもニヤニヤしてますよ?
ふふふ
