あれから出来るだけ、学校でゆっぴに会わないようにした
篠田がしてあげられる事はこれくらいしかないような気がしたから


そしてあっと言う間に卒業
みんな別々の道へ進んだ


陽菜は専門学校へ
篠田と敦子と優子は大学へと進んだ


敦子は優子と同じ大学に進みたかったようだが、無理で、近くの大学を選んだらしい
そうまでして優子の側に居たいと思う敦子の想いを知り、風の便りで聞いた二人が付き合ってるという噂を少しだけ嬉しく思った。それは、優子が幸せならいいという思いから。



それから3年の月日がたち、暑い夏の日、何気に入った喫茶店である人物と久々の再会をした
幼さがまだ残るが、可愛さと美しさがまざって大人の顔になっていた敦子がいた


店に入った瞬間から目があってしまっていて、今さら出ていく事もできないし、ましてや声をかけるなんて事も出来ず、いまだに店の入り口で立ち止まってる篠田に予想もしない事がおきた
敦子が手でおいで、おいでをしているのだ


(え?篠田に?)
確認のため、後ろや横を見てみるけど、確かに敦子は篠田を呼んでいた


緊張しながら近づくと
「久しぶり」って、昔のような笑顔
その笑顔を見て、スッと力が抜けた


「座らない?」
「あ、うん、いいの?」
「うん、待ち合わせしてるんだけど遅れるみたいなんだ」


待ち合わせと聞いた瞬間に(ゆっぴと?)って思い、動揺した篠田を敦子は見逃さなかった


「ふふふ、優子じゃないよ」
「え?あ、そ、そうなんだ・・・」


ホッとした感情と、ゆっぴに久しぶりに会いたいと思う感情がでてきて、ごまかすように店員さんが持ってきた水に口をつけた


「久しぶりだね」

改めて敦子から言われ、あの日から話さなくなった時間を思い返しながら
「そうだね」って言葉を返した


それからしばらく大学の事やら、最近の出来事など他愛もない会話をした
不思議な事に話の中にゆっぴの名前が一切出てきて来ないことに疑問を感じながら


お互いの飲み物が無くなりかけた頃、敦子の携帯に電話が入った


「あ、うん。そうそう、前にきたとこ。うん、待ってるね」


終始、笑顔で話す敦子を無意識にジッと見つめる
電話を切る寸前で敦子と目が合い、思わず目をそらしてしまった

そんな篠田を楽しむかのように頬杖を突きながらニコニコした敦子から突然の質問


「麻里子って、今、好きな人いるの?」


突然の質問の意味が解らない。なんでそんな事を篠田に聞くんだろうか

「いないよ」


敦子の真意は分からないけど、とりあえず答えた
でも、「いない」と言ったけど好きな人はいた
篠田はまだゆっぴを愛していた
あの日から、篠田の時間は止まったままだから


「ふーん」


自分で聞いたくせに、どうでもいいような返事がかえってくる
きっと敦子はあんなことした、篠田の事を許していないんだ
だから、これからゆっぴとの惚気話とかしはじめるんだ
そして、悔しそうにしてる篠田を見て笑うんだ・・・
色んな思いが頭の中で渦巻いているとき
敦子は「ふっ」って笑った

そして


「案外、麻里子って一途なんだ」

そういってまた柔らかく笑った


その笑顔は、篠田に意地悪している感じでもなく、寧ろ優しい笑顔
訳がわからず、じっと敦子を見つめていた


そうしてると、また携帯がなって外に目をむける敦子
そこに目をむけると、背がちっこくて、どことなくゆっぴに似た子が手をふってた


「あ、うん、待ってて。今からそっち行くね」


敦子は幸せそうな笑顔で携帯をしまうと


「んじゃ、私行くね」って席を立った
「あ、・・・うん」
「あ、それと・・・今、私、あの子と付き合ってんだ」
「え?」


外で手をふる子を愛おしそうな顔で見つめる敦子

(あー、今、幸せなんだね)そう思い嬉しい気持ちになった。
(あれ?でも、ゆっぴは・・・)


「優子」


ちょうどどう思ってた時に、ゆっぴの名前が出て、驚く篠田を見て敦子がいつものくしゃっとした笑いをして言ったんだ


「早く、迎えにいってあげてよね」
「え?」


「ふふ、じゃーね」



手を軽く振って出ていく敦子の姿を呆然と見えなくなるまで見てた



逆上がり(優子推し)