「もしもし、麻里子?」
「あ、着いた?」


いつもより長めの呼び出し音の後にでた麻里子の声にイラッとする


「時間通り来たよ、ね、どういうこと?」
「あ、そっか、もう優子も来てるのか」
「・・・うん」チラッとゆうちゃんを見ると、落ち着かない様子で周りをキョロキョロしてる

「あのさ、陽菜・・・」
「うん」
「もういいよ」
「なにが?」
「もう、ムリしなくていいよ」
「・・・してないよ」
「あはは、陽菜って嘘つくの下手だね」
「ね、今、どこにいるの?」
「ん?新しい女、探し中」
「なに、それ・・・」
「だからね・・・もう陽菜いらない。自由にしていいよ」
「・・・麻里子」

電話越しでも麻里子が泣いてるのがわかった
だって、おもいっきり涙声だもん


「なんで優子が急に姿、消したか知ってる?」
「・・・ううん」
「そっか、そんな話しとかしてないんだ・・・あの日さ、優子と約束したんだ・・・「もう二度と陽菜に手をあげないって約束するから、陽菜の前から消えて」って。あのバカ・・・本当に守るんだもんな・・・」

(そうだったんだ・・・ゆうちゃんが消えたのは陽菜を守る為だったんだ)


泣いてる陽菜をみて、慌ててポケットからハンカチを取り出し目の前に差し出すゆうちゃん


「陽菜がもう私に気持ちがないのは、あの日から、ううん、ずっと前から気づいてた。陽菜、一度だって篠田の事愛してるって言ってくれた事ないしね(笑)だけどね・・・大好きだったんだ、陽菜の事が」
「うん・・・うん」
「だから、誰にも取られたくなくて・・・酷い事してごめん」
「ううん、大丈夫だよ」
「だけどね、頑張って、私の事、好きになろうとしてる陽菜を見てるの、もうきつくなってきた。だからね、もういいよ?いい思い出がなくなってしまう前に終わらせよう?陽菜、自分に正直にいっていいよ」

「麻里子・・・」
「ありがとう。陽菜に出会えて、陽菜に恋して、篠田は幸せだった」
「陽菜もだよ」

「あは、ありがと。あ、あとさ・・・優子に彼女できたって・・・あれ、嘘だから」
「え?」
「ごめん、大人気ないよね、私・・・」
「大人気ないよ(笑)」
「だよね(笑)・・・あいつにも伝えて。お前も正直になれって」
「代わる?」
「いや、今はいい・・・もう少し時間ほしいな・・・落ち着いたら・・・呑みに行こうって言っといて」
「・・・うん、わかった」

「陽菜」
「んっ」
「幸せにね」
「ありがとう・・・麻里子、ありがとう」
「あは、泣きすぎーっ。んじゃ・・・元気でね。また笑顔で会える日がいつか来るから」
「うん」


涙でぐしゃぐしゃな顔で、正面にいるゆうちゃんを見た
眉を下げ、心配そうな顔のゆうちゃんがいる

「大丈夫?」
「麻里子に、振られちゃった」
「え?」
「麻里子がね」
「うん」
「自分に正直になれって」
「え?」
「ゆうちゃんにも言ってた、お前も正直になれって」
「・・・」
「麻里子に聞いた、ゆうちゃんがいきなり姿を消したのは、陽菜を守る為だったの?」
「・・・うん、ごめんね」
「なんで謝るの?」
「ん、なんとなく・・・えへへ」
「えへへ・・・じゃないよ」
「へへ・・・」

「ありがと」
「ううん、あの方法で良かったのかって、本当は後悔してたんだ」
「後悔?」
「なんであの時・・・」

照れくさそうに下をうつむくゆうちゃん
「なにー?」
「なんであの時、強引に奪わなかったんだろうって」
「ゆうちゃん・・・」
「麻里ちゃんは今でも大事な友達だと思ってる。だけど、なんで正直な気持ちをぶつけなかったんだろうなって」
「陽菜も・・・陽菜も後悔してるよ。正直に、ゆうちゃんが好きって言ってたら、こんなに麻里子の事、傷つけなかったのにって」
「結果的に麻里ちゃん傷つけてたんだね・・・だめだな、あたし」
「ゆうちゃんだけが悪いんじゃないよ・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「なんか・・・ヨドンでるね、ここの空気・・・」
「うん、暗いよね・・・」
「「・・・・・・」」

((笑))
久しぶりに見る優ちゃんの笑顔
陽菜も久しぶりに声を出して笑った


「ね、にゃんにゃん」
「(笑)その呼び方・・・懐かしいね・・・」
「このタイミングで言うのも・・・心苦しいけど、正直に言うね。あたし、陽菜の事が好き」
「うん・・・陽菜もゆうちゃんが好き」
「えへへ、知ってた」
「(笑)うざいー」


こんなに時間をかけて、やっと正直な気持ちを言えた

優しさだと思ってた気遣いや、愛だと思ってた感情は全然違ってて、それがわからず麻里子を傷つけていた事。その事を忘れちゃいけないと思った。最後にくれた麻里子の優しさにも感謝して、今、陽菜はちゃんと伝えようと思う


貴方に出会い
今、ちゃんと分かったような気がする
だから今ならはっきり言えるよ


逆上がり(優子推しブログ)

「ゆうちゃん、愛してる」