ゆうちゃんのマンションに着き、部屋に入る
ゆうちゃんらしい、可愛らしい部屋。温かみがある部屋
「そこ、座ってて」
ソファーを指差しながら、ヤカンに水を入れるゆうちゃん
「寒い日はココアがあったまるんだよ」って言いながら、台所でガチャガチャ音をたてている
久しぶりに訪れる心の安堵
ボーとしてると、「お待たせ」といいながら、笑顔のゆうちゃんがコップを二つもちながらやってきた
その顔を見て、また涙が出てきた
そんな陽菜の頭を優しくなでるから・・・ゆうちゃんの胸に飛ぶこむと、今度は優しく背中をさすってくれた
今までも心の疲れがいっきにあふれ出し、それをゆうちゃんに全部ぶつけた
ゆうちゃんは何も言わずに抱きとめてくれた
ココアがすっかり冷めてしまった頃、陽菜の涙もとまっていた
ゆうちゃんが入れなおしたココアを飲み、ホッと一息をつく
すると携帯の音が鳴った
麻里子専用の着信音にびくっとする。、それをみてたゆうちゃんが、手をにぎってくれた
しばらく鳴り続けた携帯音が止むと、手をにぎりながらゆうちゃんが聞いてきた
「ね、その傷・・・麻里ちゃんが?」
黙ってる陽菜を見て、気づいたのか、握ってる手に少しだけ力が入るのがわかった
「陽菜が、悪いの・・・」
「なんで?」
(陽菜が麻里子よりも、ゆうちゃんの好きになってしまったから)
言葉にできる訳もなく黙ったままの陽菜の頬を温かい手がつつんだ
麻里子が殴ってできたあざの後をゆっくり、優しくなぞっていく
その温もりと優しさに癒され、自然と眠くなってきた
そんな陽菜を見て、微笑みながら「安心して休んで」といい、毛布をかけてくれた
久しぶりに、ゆっくりと寝ることができた
次に目を覚ますと、陽菜の横にはゆうちゃんがいて
「まだ寝てなよ」と優しい声
身体を少し起こし、ゆうちゃんの頬にふれる
あふれそうなゆうちゃんへの想い
ゆうちゃんに触れたくて、唇を近づけると、ゆうちゃんもゆっくりと顔を近づけた
でも、あと少しってとこで、「やっぱ・・・駄目だよ」って顔を背けるゆうちゃんに
「いくじなし・・・」って言っちゃった。そんな事、言えた立場じゃないのに
こんなに近くにあるのに、すごく遠いあなたの唇
陽菜を拒む理由はなに?興味がないから?友達の彼女だから?
ゆうちゃんが陽菜と同じ気持ちなら、友達から奪ってでも陽菜を抱いてほしかった
だけど、陽菜の目の前にいるゆうちゃんは黙って苦しそうな顔で下を俯いていた
長い沈黙が続いた後、激しく叩かれる部屋のドア
外にいるのが誰なのか、分かっているのか、ゆうちゃんは「ちょっと部屋で待ってて」そう言い、
ドアを開けた。そこに居たのは麻里子
「やっぱり、ここに居たんだ・・・帰るよ、陽菜」
乱暴な口調でゆうちゃんも見ず、麻里子が怒鳴る
「麻里ちゃん」
「あ?お前には用はないんだよ」
「あたしは、ある。ちょっと外で話そ」
強引に麻里子の腕をとり、ドアを閉めた
外から「陽菜、逃げんじゃねーぞ」って声が聞こえた
しばらく二人の声が聞こえていたけど、遠くに行ったのか聞こえなくなった
それから1時間くらいして、麻里子だけが戻ってきた
陽菜の方に手を伸ばす麻里子
(殴られる)そう思い目をとじると
優しく抱きしめられた
そして、その状態のまま「今まで、ごめん。もう手をあげたりしないから。約束するから」と言った
その後、弱々しい声で「篠田の事・・・捨てないで」と言い、陽菜の胸で泣いた
(急にどうしたの?)(ゆうちゃんはどこ?)いろんな思いが陽菜の中にあったけど
胸の中で泣くじゃくる麻里子をほっとけなかった
頭を軽くなでると、さっきよりもきつく抱きしめられた
麻里子の陽菜への愛の深さを知った
泣き止んだ麻里子は陽菜の手を握ると「帰ろ」と言った
陽菜はただ肯くことしかできなかった
次の日、ゆうちゃんはバイトをやめた
陽菜の前から、あの優しい笑顔が消えた
