パノラマンの全景レポート
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Web利用者の行動原理と新たな土俵

従来の物件台帳の整備とWebでの公開・閲覧はもう当たり前であり、それによる決定的な差別化はすでに難しい。もしも、Webは文字情報を基本とした物件台帳ベースの検索閲覧サービスがその最終形態とするならば、リスティング業者のDB空間上に大きい位置を占められる業者、あるいは、フランチャイズ等でたくさんの店舗を集合した大手のサイト以外に勝ち目は無い。

だが、考えてみれば不動産情報の需要は、エリアが限定されたローカル情報であり、ピンポイントで検索できるのであれば全国的規模のDBなどは本来不要である。全国を網羅している規模よりも地域の情報を“漏れなく”“より新鮮に”“より詳しく”入手できることが求められる。そして、地域における企業の個別ホームページの拡大と充実にともない、それを実現する身近で強力な手段が出現しつつある。ヤフーやグーグルに代表されるWeb検索エンジンである。

それら検索エンジンのデータ規模の巨大さや提供されるサービス群のアーキテクチャーに比べ、日本の不動産ポータルのDB規模やサービスは残念ながら圧倒的に貧弱で、量を求め規模を誇る検索ポータルとしての重要性は、やがて意味を失ってゆくだろう。

しかし、現在、なおも客はリスティング業者や大手のフランチャイズ等のメジャーな検索サイトを利用する。それは何故かと言えば、やはり「数多くの候補物件を、とにかくも調べたぞ」という納得感からである。だから、この土俵での“勝ち組”の優位性は逆立ちしてもひっくり返すことは難しいだろう。このような競創になった場合“土俵を変える”ということが労少なくして益を多くする最良の方法である。

人は、たくさんの物件の中から候補物件を探したいとは望むが、何十件以上の候補をリストアップした上でなければ決められない、というような機械的な存在ではない。これは!と思えば、1件目で即決定したりする。

しょせんDBからのリストアップは“出会いのキッカケ”でしかなく、「これだ!」というある意味総合的な“良いと感じる体験”を経験すれば、リストアップした母数の大きさは問題とならない。量より質である。

お客に『数多くの候補物件を調べたぞ』という納得感を与える“物件台帳の規模”がもたらした“量”で競う今までの土俵を最終の勝負どころとするのではなく、『実際に見てみたぞ』という“場の体験”がもたらす“質”という別の土俵で誘客を図るという未開の世界が存在する。

指先の操作だけで大量の物件情報が画面に表示されるWebの利用者は、片っ端からその数をあたる事はしない。Web利用者の多くは、「Webを利用しているのだから、もうすでに十分大きな物件台帳のDBを検索し閲覧している」という認識をもっており、大量ゆえに文字や間取り図だけという抽象的な情報は自然とパスされ、対象そのものをダイレクトに知ることができる情報、具体的なありのままの本物情報と感じられるもの(できれば関連情報も統合的に取得できるもの)から優先的に閲覧するという行動原理が働く。そして、その中の本物情報を提供する本命が、ネットを通したバーチャル物件確認体験である。

次には、物件台帳の検索ベースの競創から抜けだし、新しい土俵の新機軸を考える上で、今述べた原理の働きを頭に入れ、これから進展する不動産営業での「Webの進化と広がるフロンティア」を考えてゆきたい。

今までのWeb手法では対抗できない、集客の新機軸

台帳閲覧サービスに対して、これからはじまる新しいWebを利用した集客は、物件確認体験さえもネットで提供し、最終的な物件の絞り込みさえもお客側にやらせてしまうものである。

現在、業界におけるWebへの物件情報の載せ方のハウツーをみても“画像は必ず入れましょう”と言われている。“画像が無いなら物件はネットに出さない方が良い”とさえ言われている。

コンピュータでのDB化とWebの出現により、業界の中で溢れかえる物件情報を、お客が潤沢に閲覧できるようになったおかげで、たくさんリストアップされる物件のうち、画像がない物件はクリックされなくなった。

文字情報で表現できる基本情報だけではもはや満足せず、物件のイメージを具体的に確認できる画像入りのリストでしか候補物件をリストアップしなくなった。

つまり、物件台帳閲覧だけでは満足せず、物件確認と同じ視覚的な経験を求めるようになる。

これまでのWebを利用した営業は、文字情報中心の物件台帳の閲覧サービスで集客をはかってきたが、さらにこの先の集客競創の主軸は、物件確認体験の提供へと移ってゆく。

台帳の閲覧サービスでは絶対に対抗できない新しいサービス。それが営業マンの物件確認体験をお客とネットで共有するサービスである。

今までの物件台帳の付加情報である間取り図や写真の掲載にとどまらず、最新のデジタル技術を使用して、営業マンが自らの物確体験をデジタルで再構築し、ネットの向こうのお客と共有するのである。

※筆者はビジネスで“競い争う”という“競争”という言葉がきらいである。“競い創る”という意味の“競創”という文字を使いたい。

今までのWeb集客の実態は、物件台帳の閲覧サービス

インターネットの出現による客足導線の変化は、好立地や伝統歴史の単なる優位性を、クリックという指先ひとつの行為で失わせてゆくことは先に述べた。

そこで、現在のWebを利用した集客作業は、どのようなものなのかを見てゆきたい。

それは、自らの物件台帳ベースの情報をWebから検索・閲覧させるもので、自社ホームページやリスティング業者のDBに自社や先物の物件情報をのせ、とりあえずでもリアルの店舗にお客を呼び込む事にひたすら注力する。

運用にそれなりの独自のノウハウは必要であるが、そのビジネスモデルは単純で旧来的であり、印刷物の延長線上の手法といえる。

つまり、お客を店舗まで誘導できれば、後は営業マンの頭の中にある物確情報データベース※1をもとに、営業トークによりお客に代わって最終物件を絞り込んで成約までもってゆくという手法がそうである。

これらは印刷物での告知・集客の手法となんら変わりなく、それまでの印刷物などには無い特徴といえば、コンピュータ上ののDBを、Webからお客に検索・閲覧させるということだけである。

少し考えればわかることだが、これらは過去の業務で培った物件台帳をコンピュータ検索させて閲覧させているだけであり、少々お金をかけて手元の台帳情報をWebに移せば、即、だれにでも実行可能なものである。

これでは創意工夫と努力による、一朝一夕ではまねできない新しいビジネスの優位性を築くことはできない。

(※1.ここでいう物確情報データベースとは、建物の外観や内装や周辺環境などの視覚情報、及び、それに付随する注釈情報である)

お客の入り口が、リアルの店舗からネットの店舗へ変わる

A)という“家主”さんと、(B)という“借主”をつなぐネットワークの“ハブ”(C)として不動産営業の機能をとらえると、従来は、この“ハブ”(C)の優位性を決めるものは、店舗の立地条件の良さや伝統歴史や優れた営業マンが在籍する数などである。

これらは、すべて有限性を持つリアル世界のこととして、先に占有したものに優位性が固定化されている。したがって、集客数や取り扱う物件の数もそれぞれほぼ固定化し安定していた。必ず一部例外はあるとしても、おおよそ、それが20世紀までの姿である。

しかし、21世紀からのインターネット時代は、上記の(A)家主と(B)借主をつなぐハブ機能たる(C)不動産営業のある場所が、リアル世界からネットの世界へと移っており、今までの固定化し安定化していたリアルの世界に大きな変化が生まれようとしている。

即ち、ワンクリックで基本条件に合致する物件をその場で確認できる(相当数探したぞ、という納得感につながる)インターネットに、まずは足を運ぶようになって、お客の入り口が大きく変わりつつあるという事実である。

営業マンの物件確認体験をネットでお客と共有する

インターネット以前は、文字情報として記録できる事柄は台帳に記録し、視覚情報として記録しなければならないものは営業マン個人の頭の中に記録し活用されていた。

整備した台帳情報をもとに借主にすすめる物件をリストアップし、さらに営業トークを通して最終的な絞込み作業(物件提示作業)が店舗側(営業マン側)にて行われ、現場案内ということになる。

これが、希望する物件は借主側が自分で絞り込んでくるインターネット時代においては、物件の現場をデジタル情報で撮影・整備し、社内のデータとして利用すると同時に、インターネットでもお客様に検索・利用させられるサービスとして導入できるか否かが、不動産営業におけるネット集客の優劣を決めることとなる。

つまり、物件台帳の検索閲覧と同時に、営業マンの物件確認に準ずる経験を、デジタル技術でインターネットを通じ、そのままお客(借主)に経験させられるか否かが重要となる。

そして、物件確認時のイメージを伝えるには、文字より写真の方が優位であり、機械的視野であるその写真より、全景を見渡せるという「身体性視野・自由視界」であるパノラマの方がさらに優位となる。

この進化は、インターネットにおける不動産営業のダイナミズムとして、避けることはできないだろう。

インターネット以降

インターネット時代になり基本的な物件の実態情報がネットから入手可能になった状況でのお客側の行動ステップは

①物件の検索・比較

②内覧希望物件の選定(物件の絞込み終了)

③店舗の決定

④内覧する最終の物件を決定

⑤現場確認

⑥契約する物件を決定

⑦契約事務

へと変化し

それに対応した店舗側の行動ステップは

①物件データの整備

②来店者対応

③内覧すべき物件へのアドバイス

④現場案内

⑤決定すべき物件へのアドバイス

⑥契約事務

となり、

絞込み作業が店舗からお客側へと移り、店舗側の物件データの整備作業が大きくクローズアップされる。

これは、従来、物件確認作業により営業マンが自らの足を使って現場状況のデータベースを個人の頭の中に構築して利用していたものを、同じように、ネットの向こう側のお客にも利用可能にする作業へと変化してゆくことを意味する。

インターネット以前

基本的な物件の実態情報を潤沢に手にすることが可能になった借り手は、絞り込み作業を自らで行うようになった。その結果、今までのビジネスのプロセスに変化が生じることになる。

インターネット以前のお客側の行動ステップは

①店舗を決定する

②希望する物件の条件を伝え、候補物件の提示を受ける

③内覧する物件を決定

④現場確認

⑤契約する物件を決定

⑥契約事務

であった。

それに対応した店舗側の行動ステップは

①来店者対応

②希望する物件の条件を聞き、

候補物件を提示する(物件の絞込み終了)

③内覧すべき物件へのアドバイス

④現場案内

⑤決定すべき物件へのアドバイス

⑥契約事務

である。

不動産情報を調べるということ

私がまだ学生の頃(今から25年ほど前)の下宿アパート探しは、住みたいと思う地域の不動産屋さんを歩いて探し回るほか確たるすべがなかった。

記憶は定かではないが、リクルート社が文字情報だけの住宅情報誌を出していたかもしれない。でも、実際に足で現場を回って見ないと、物件の実態が何もわからないという意味では同じである。

その後、町の不動産屋さんでもコンピュータ検索をうたい、希望する間取りや価格帯の物件をリストアップして見せてくれるようになった。しかし、それでも物件の実態は、あいかわらず実際に現場を足で回らないと知ることはできなかった。

以上はみな、実際の間取りや外観などの基本的情報を確認するためには、足で回る現場確認が必要であり、絞り込みの精度向上を目的とした比較検討サンプル数を増やせば増やすほど、現場確認という時間と労力を伴う作業が比例して増えてゆく。

一方、社会人としては、それに当てられる時間は限られているので、当然、比較検討サンプル数も限定的になる。

こうして、実質的に不動産屋さんから提示された限られた物件の中から現場確認する物件を決めることになる。

このことは、世の中に存在する不動産物件数を分母とし、不動産屋さんから提示された物件数を分子として比べると、比較検討サンプルと呼ぶにはあまりにも数が少なく、実質的に不動産屋さんが借主に代わって物件の絞込み作業を行っていることがわかる。

また、このことは、情報技術が一般に発達していない時代の“社会としての知恵”であったともいえる。

ことが大きく変わったのはインターネットの出現である。

はじめは従来の店舗でのPC検索と同じ文字だけの情報ばかりであったが、間取り図画が掲載され、やがて、外観写真が載りはじめるのに、それほど長い時間はかからなかった。

ここにいたって、初めて私たちは従来、物件の絞り込み時に必要とした時間と労力を伴う物理的空間移動の制約から解放され、基本的な実態情報を潤沢に手にすることが可能となった。

パノラマ ---全景を見渡せるという技術---

360度レンズや魚眼レンズなどの超広角画像のことを話すと否定的な話を良く聞かされる。

曰く、

「現在の写真やビデオで特に困らない」

「見せたいところだけを見せたい」

「不必要なデータ部分にコンピュータ資源を取られたくない」等など。

しかし、本来、人間は、自らの周辺環境情報として、必要なものも不必要と思われるものも、同時に保持しているのが自然であり、従来の写真やビデオ画像のように、他者が意図したモノだけを“見せられる”ことは、実はとても不自然なのである。こんな不自然な画像を私は『機械的視野・従属的視界』とよんでいる。

かたや、 360度レンズや魚眼レンズなどの超々広角の画像は、人間が自らの意思により、体や首を回して広範囲の自由視界を確保しているのと同じように、ユーザの意思で上下左右に視野方向を変えたり、ズームイン・アウトなどで近寄ったり離れたりでき、動画を用いれば視点の移動さえも可能になる。私はこれを『身体性視野・自由視界』とよんでいる。

20世紀の工業化社会を象徴する従来の写真やビデオ的な『機械的視野』と、21世紀から始まろうとしている『身体性視野』の違いは、単に見える範囲の違いということにとどまらずに、進みゆくコンピュータ革命の中で、実は、広く深い範囲で社会に影響を与えてゆくポテンシャルを持っている。

次回、そのことを、“不動産取引”という業態で考えてみたい。