追加ルール
ブロックの速度アップ
- ルールが高度に学習されれば、プレイヤーは半永久的にゲームを続けることができると思われる(数学的にはテトリスはNP完全問題
のようである。有限時間内に終了するのではないかと考える研究者もいるが、未解決)。
- 実際の業務用ゲームとしては永久にゲームが続いては困るので、ゲームが長時間続くと、テトリミノの落下速度は次第に速くなってゆくという、ルールを用意している。
- これにより、ゆっくりと思索を練りながら操作していては落下に追いつかなくなるため、瞬間的な判断が必要となってくる。ある程度の速度になれば、判断の誤りや操作ミスが増え、テトリミノが積み重なってしまい、必然的にゲームオーバーに繋がる。しかし、再びゲームを開始したときには、最初のゆっくりとした落下速度である。このことは、プレイヤーに再び挑戦する気を起こさせる効果があると思われる。
ブロックの速度単位
- 一般的に、1フレームで○ブロック分落ちる速度を○Gと表記される。たとえば、1秒で60フレームの描画が行われる場合、1秒に1ブロック落ちれば1/60G、0.5秒で1ブロック落ちるなら1/30Gである。
- 初代「セガテトリス」の最高速は1Gである。しかし、『テトリス ザ・グランドマスター』シリーズの空中移動出来る段階の最高速が5Gなのだが、そこからいきなり20G(高さ20ブロック分であるフィールドの最下段に1フレームで落ちるためこう表記される)に飛んでしまうため、この表記法には若干の疑問符がある。
ブロックの固定時間
- さらに一部の実装では、ゲーム性を高めるために、テトリミノが着地してから固定されるまでに若干の「遊び
」時間が与えられている。
- この追加ルールによって、テトリミノが着地してからでも、移動や回転といった操作を行うことができるようになる。これは、ゲームが長時間続きテトリミノの落下速度が非常に速くなった段階で大きな意味を持つようになる。「遊び」の時間内で的確に操作を行えば、意図した位置にテトリミノを配置でき、ゲームを続行できるのである。
- 大抵の実装では、テトリミノの落下速度が速くなっても、プレイヤーの操作によって左右に移動させる速度(通常1G)は速くならないため、落下速度が極端に上がれば、もはや左右の端に移動させきるまえに着地してしまうようになる。特に、ブロックが高く積みあがっている状態ではより早い段階でそうなってしまう。こうなると、意図通りに積む事はもはや不可能であってゲームは成り立たなくなってしまうように思えるが、ここでも「遊び」が意味を持つ。ブロックを中央付近に山のように積むことによって、まずブロックを「山」の「頂上」に一度着地させてから、「中腹」を下るように移動させつつ回転させ、目的の位置までテトリミノを導くことができる。このような高度なプレイ手法は、まるでテトリミノが斜面を転がっているように見えることから「転がし」という呼び名が広く用いられている。
- ゲーム開発会社アリカ
は、この「転がし」のゲーム性に着目し、テトリミノ落下速度を実質的に無限大(空中待機時間が0)となるまで加速させるという実装を『テトリス ザ・グランドマスター
』で行った(最初に「遊び」を取り入れたのはセガ
の初代アーケード版であるが、それは落下速度にはあくまで上限が存在し、後の『テトリス』系ゲームもそれに追従した実装を行っていた)。落下速度が無限大となる状態においては、テトリミノは出現した瞬間に既に着地後の位置にあり、ブロックが空中を落ちてくるという過程は存在しない。空中の移動が一切出来ないため、プレイヤーは着地後の「遊び」の時間のみを用いてテトリミノの移動・回転を行う事となる。可能な操作が制約されることから、プレイヤーは通常の状態とはまた違った、よりテクニカルなテトリミノの積み方を要求される(なお、『テトリス ザ・グランドマスター』シリーズ内ではこの状態を「20G」と呼んでいる)。
- 『テトリス ジ・アブソリュート』以降の作品では、更に難易度を上げるため、
- 転がせる時間を短くする
- ブロックが固定されてから、次ブロック出現までの時間を速くする
- ラインを消した時の消去アニメーションを速くする(=次ブロックの出現が速まる)
- などの工夫が見られる。
ゲームクリアの概念を導入する
- 初代「セガテトリス」は完全なエンドレスゲームであった。しかし、これだとゲームセンター
側の収益が少なくなってしまい、問題になる。そこで、これ以降の作品にはエンドレスモードが導入されなくなった物が多い。
- たとえば『テトリス ザ・グランドマスター』ではレベルが999になった時点で強制的にゲーム終了となってしまう。しかしこれにより、ブロック消去や強制落下時に入る得点ではなく、レベル999への到達時間を競うとする新たなゲームの目標が誕生する事となり、「動作を最適化し、スピードを上げる」という更なる意欲をプレイヤーに与える事となった。
- このように、テトリスはパジトノフの考えた段階に追加ルールによるさらなる段階も加えることで「慣れれば慣れるほど新たな思考の段階に進み、より長く続けることができるようになる」という非常に優れたルール構築がなされている。
テトリス・ハイ
『テトリス』に慣れ、瞬間的な判断・操作を数多くこなすようになると、次第に思考が自動化されてくる。ゲームが進みテトリミノはもはや目にも留まらぬ速度で落下してくるのであるが、何十分でも何時間でもゲームが続けられるようになるのである。人間の脳
はこのような状態に置かれると、一種の催眠
状態となり快感
が引き起こされる。この快感は「テトリス・ハイ」と呼ばれ、ときに中毒
的となる。この中毒性が『テトリス』の大流行の主な原因であったことは間違いないだろう。
ちなみに、日本大学
教授
の森昭雄
は、『テトリス』などのテレビゲームを行なっているプレイヤーの脳波
の特徴が痴呆
(認知症)患者のそれに似ているとして、「ゲーム脳
」仮説を提唱した。しかし、これは科学的根拠に乏しく、専門家の多くはこの仮説を支持していない。森は各地の講演で、「『テトリス』はソ連
の軍隊で人を殺すための教育の一つとして開発されたもの」と発言しているが、これは事実ではない。逆に、このゲームを用いて資本主義
国家の生産能力を落とすというデマが流れたこともあった。
ライセンス
発表当時の『テトリス』の版権は旧ソ連
の外国貿易協会
(ELORG
)が持っており、イギリス
のミラーソフト
がハンガリー
のアンドロメダ・ソフトウェア
を経由してライセンス
を取得。
さらにアタリゲームズ
がミラーソフトよりライセンスを取得してアーケード
用・家庭
用『テトリス』を製造・販売していた。
これに対し、1989年
に任天堂
がELORGと直接ライセンス契約を結び、家庭用ゲームにおける独占販売権を得る。ちなみにライセンスの交渉中は冷戦
下だったため、交渉に行った社員には常に公安関係者が付き添っており非常に緊張したとのこと。
アタリゲームズ及び子会社のテンゲン
は、著作権
侵害でNOA(ニンテンドー・オブ・アメリカ
)を訴えたが、ミラーソフトのライセンスはPCゲーム
用のもので、アタリゲームズ及びテンゲンにはそもそも製造・販売権はないとされ、敗訴。テンゲンからライセンスを受けていたセガ
もこれによりライセンスが無効であることとなり、既に生産を終えていたメガドライブ
版テトリスの販売を断念し、生産した商品の破棄を余儀なくされた。2006年
にPS2
用ソフトSEGA AGES 2500シリーズ
Vol.28 テトリスコレクション
への完全移植が実現した。
『テトリス』のルールを完全に踏襲した事実上の2作目、3作目にあたるセガのアーケードゲーム『フラッシュポイント
』『ブロクシード
』は『テトリス』の名前を使っておらず、版権問題発生後に応急的に業務用のみの許諾をELORGから得て販売した。また、『ブロックアウト』(California Dreams)や『ジオキューブ』(テクノスジャパン
)という、『テトリス』を3次元化したようなソフトも存在した。
その後、ザ・テトリス・カンパニー
が版権管理を行うようになり、複数の会社からゲームが発売されたことから、従来のような「独占販売権を得る」という形態はなくなった。
日本では1996年、プレイステーション
向けにBPS
より『テトリスX
』が、ジャレコ
より『テトリスプラス
』が発売された。さらに1998年11月にはNINTENDO64
向けにセタ
の『テトリス64
』とカプコン
の『マジカルテトリスチャレンジ featuring ミッキー
』が同時期に発売された。この間は、各社から様々なアレンジを加えた『テトリス』が登場している。
しかし1999年
、ザ・テトリス・カンパニーは「『テトリス』の商品化は1プラットフォーム
につき1社のみ」という方針を唐突に決定する。これにより、アリカ
より発売が予定されていたプレイステーション
版『テトリス ザ・グランドマスター
』が、ほぼ完成していたにもかかわらず発売が急遽中止に追い込まれてしまう(参考外部リンク: [1]
)。
しかし、その後も1プラットフォームで複数のメーカーから発売される状況は変わっておらず、この方針が何を目的に設けられたのかは不明である。
2005年
12月
には、日本における版権管理のため、テトリスオンライン・ジャパン(株)
が設立され、ヘンク・ブラウアー・ロジャース
が同社の取締役
に就任した。(参考外部リンク: [2]
、テトリスオンライン・ジャパン
)
ミニテトリス(ピコリン55)
1996年
に、液晶
画面と操作ボタンを備え、『テトリス』と同じ内容のゲームが内蔵された小型の携帯ゲーム機『テトリン
』がゲームテック
から発売され、ゲームボーイ
版『テトリス』発売以来の大ブームとなった。ところが、このゲーム機の製造元・販売元はライセンスを取得しておらず、ゲーム性の著作権
、および『テトリス』という名称に酷似しているとして商標
権をめぐり裁判となった。
その結果は、「『テトリス』という名称には商標権が存在するが、ゲームのルールは著作物ではなく『アイディア』であり、著作権としては保護されない」というもので、結局、販売元がゲーム機の名称を『テトリン』から『ピコリン55』に改称して製造・販売を続けるという、非常に興味深い形で幕を下ろした。その後、ブームが去るまで同様の類似品が大量に出回る結果となった。
例えば、『マリオ
などのキャラクター
が存在するゲームであれば、著作権によって保護することが可能』であり、『「テトリス」という名称を定めたゲームであれば、商標権によって保護することが可能』であるが、『「テトリス」のような数学的性質のみによって作られているゲームは保護されない』という事実はゲーム業界に大きな衝撃を与えた。
もっとも、それ以降『ピコリン55』と同様に「テトリスの名を使わず」「テトリスと同内容」の携帯型ゲームを製造・販売されることは(少なくとも大規模には)起こっておらず、ザ・テトリス・カンパニー
が存在する現在では、きちんとライセンス問題を解消した上で堂々と『テトリス』を売ろうというのが業界内での常識となっているようだ(ライセンスを取得して発売されている例としては、エポック社
の『EL-SPIRITS テトリスシリーズ』などがある