| 酸素 - フッ素 - ネオン | |||||||||||||
| 一般特性 | |||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 名称 、記号 、番号 | フッ素, F, 9 | ||||||||||||
| 分類 | ハロゲン | ||||||||||||
| 族 , 周期 , ブロック | 17 (VIIB) , 2 , p | ||||||||||||
| 密度 , 硬度 | 1.696 kg·m-3, no data | ||||||||||||
| 単体の色 | 淡黄褐色 |
||||||||||||
| 原子特性 | |||||||||||||
| 原子量 | 18.9984032 amu | ||||||||||||
| 原子半径 (計測値) | 50 (42) pm | ||||||||||||
| 共有結合半径 | 71 pm | ||||||||||||
| VDW半径 | 147 pm | ||||||||||||
| 電子配置 | [He ]2s 2 2p 5 | ||||||||||||
| 電子殻 | 2, 7 | ||||||||||||
| 酸化数 (酸化物 ) | -1(強酸性 酸化物 ) | ||||||||||||
| 結晶構造 | 立方晶 | ||||||||||||
| 物理特性 | |||||||||||||
| 相 | 気体 (非磁性体 ) | ||||||||||||
| 融点 | 53.53 K
(-219.62 ℃ , -363.32 °F ) |
||||||||||||
| 沸点 | 85.03 K (-188.14 ℃, -306.62 °F) |
||||||||||||
| モル体積 | 11.20 × 10-3 m3·mol-1 | ||||||||||||
| 気化熱 | 3.2698 kJ·mol-1 | ||||||||||||
| 融解熱 | 0.2552 kJ·mol-1 | ||||||||||||
| 蒸気圧 | no data | ||||||||||||
| 音の伝わる速さ | no data | ||||||||||||
| その他 | |||||||||||||
| クラーク数 | 0.03% | ||||||||||||
| 電気陰性度 | 3.98 (ポーリング ) | ||||||||||||
| 比熱容量 | 824 J·kg-1·K-1 | ||||||||||||
| 導電率 | no data | ||||||||||||
| 熱伝導率 | 0.0279 W·m-1·K-1 | ||||||||||||
| イオン化エネルギー | 第1: 1681 kJ·mol-1 | ||||||||||||
| 第2: 3374.2 kJ·mol-1 | |||||||||||||
| 第3: 6050.4 kJ·mol-1 | |||||||||||||
| 第4: 8407.7 kJ·mol-1 | |||||||||||||
| 第5: 11022.7 kJ·mol-1 | |||||||||||||
| 第6: 15164 kJ·mol-1 | |||||||||||||
| 第7: 17868 kJ·mol-1 | |||||||||||||
| 第8: 92038.1 kJ·mol-1 | |||||||||||||
| 第9: 106434.7 kJ·mol-1 | |||||||||||||
| (比較的)安定同位体 | |||||||||||||
|
|||||||||||||
| 注記がない限り国際単位系 使用及び標準状態 下。 | |||||||||||||
フッ素(フッそ、弗素、Fluorine)は原子番号 9 の元素 。元素記号 は F。最も軽いハロゲン 元素。全元素中最も大きな電気陰性度 をもち、化合物中では常に -1 の酸化数 をとる。天然には、蛍石 や氷晶石 として存在する。
歴史
古くから製鉄などにおいて、フッ素の化合物である蛍石 (CaF2) が融剤 として用いられた。例えば、ドイツの鉱物学者ゲオルク・アグリコラ は1530年に著書「ベルマヌス」Bermannus, sive de re metallica dialogus において、蛍石を炎の中で加熱し、融解させると、融剤として適切であると記している。1670年には、ドイツのガラス加工業者のハインリッヒ・シュヴァンハルト (Heinrich Schwanhard) が蛍石の酸溶解物にガラス をエッチング する作用があることに気づいた。蛍石に硫酸 を加えると発生するフッ化水素 は1771年 、カール・シェーレ が発見していた。未知の元素が蛍石 (Fluorite) に含まれる可能性から、フランスのアンドレ=マリ・アンペール は、未発見の新元素に fluorine と名付けた。フッ化水素 と塩化水素 の組成がフッ素と塩素 の違いだけであると、最初に主張したのはアンペールであった。彼はその後、名称を変える。ギリシア語 の「破壊的な」という語から、 phthorine とした。ギリシア語ではアンペールの新名称(Φθόριο)を採用している。しかしながら、イギリス のデーヴィー が fluorine を使い続けたため、多くの言語では fluorine に由来する名称が定着した。名称は定まったが、フッ化水素の研究は進まず、酸素 を発見したラヴォアジェ も単離には至らなかった。
1800年、イタリア のアレッサンドロ・ボルタ が発見した電池が、電気分解 という元素発見に極めて有効な武器をもたらした。デービーは1806年から電気化学の研究を始める。カリウム 、ナトリウム 、カルシウム 、ストロンチウム 、マグネシウム 、バリウム 、ホウ素 を次々と単離。しかし1813年の実験では電気分解の結果、漏れ出たフッ素で短時間の中毒に陥ってしまう。デービーの能力を持ってしてもフッ素は単離できなかった。単体のフッ素の酸化力 の高さゆえである。実験器具自体が破壊されるばかりか、人体に有害なフッ素を分離・保管することもできない。
アイルランド のクノックス兄弟は実験中に中毒になり、1人は3年間寝たきりになってしまう。ベルギー の Paulin Louyetとフランス のジェローム・ニクレも相次いで死亡する。1869年、ジョージ・ゴアは無水フッ化水素に直流電流を流して、水素とフッ素を得たが、即座に爆発的な反応がおきた。しかし、偶然にも怪我一つなかったという。
ようやく1886年 、アンリ・モアッサン が単離に成功する。白金 、イリジウム 電極を用いたこと、蛍石をフッ素の捕集容器に使ったこと、電気分解を-50℃という低温下で進めたことが、成功の鍵だった。材料にも工夫があり、フッ化水素カリウム (KHF2)の無水フッ化水素(HF)溶液を用いた。モアッサンも無傷というわけにはいかず、この実験の過程で片目の視力を失っている。フッ素単離の功績から、1906年のノーベル化学賞はモアッサンが獲得した。翌年、モアッサンが急死した原因は不明である。
性質
単体 は通常2原子分子の F2 として存在する。常温常圧では淡黄褐色で特有の臭い(塩素のようとも、きな臭いとも称される)をもつ気体 。非常に強い酸化 作用があり、猛毒 。
融点 -223 ℃、沸点 -188 ℃、比重 1.11(沸点時、空気を1とする)。反応性が極めて高く、ヘリウム とネオン 以外の殆んどの単体元素を酸化 し化合物 (フッ化物)を作る。
ガラスや白金さえも侵すためその性質上、単体で保存することはほとんどない。もっぱら単体よりも穏やかな化合物の状態で保存され、容器には化合物であっても侵されにくいポリエチレン 製の瓶や、テフロン コーティングされた容器が用いられる。単体はフッ化水素(HF)を電解するか、フッ化水素カリウム (KHF2) を電解することで得られる。
人体への影響
必須微量元素 のひとつであると主張する学術団体がある。欠乏と過剰になる量の範囲が狭い(歯のフッ素症#食事摂取基準 を参照)。フッ素のサプリメントは、日本 国外では製品化されているが、日本国内での製品化は難しいと主張されることもある。主な摂取源は飲料水と動物の骨などである。
フッ素の過剰摂取は骨硬化症 、脂質代謝障害 、糖質代謝障害 と関連がある(フッ素症 を参照)。
フッ素の化学反応
フッ素の単体は酸化力が強く、ほとんど全ての元素と反応する。
- 水素とは高温では光 なしでも反応し、光の存在下では室温でも反応してフッ化水素 (HF) を生成する。水素との1対1混合物を燃焼させると4300K 程度まで達する。
- 酸素 とは放電によりO2F2を生じ、液体酸素とは放電により、O3F2 が得られる。
- カルコゲン元素 (硫黄 、セレン 、テルル )とは六フッ化物 (SF6、SeF6、TeF6) を生成する。
- 水 と反応させるとフッ化水素(HF)、酸素 (O2) と一部オゾン (O3) を生成する。つまり水を燃やす。
- 水酸化ナトリウム 水溶液と反応して、OF2 を生じる。
- 窒素 とは反応しないが、アンモニア と直接反応させると、フッ化窒素 (NF3) を生成する。
- 炭素 はフッ素雰囲気下で燃焼し、四フッ化炭素 (CF4) を生成する。
- アモルファス二酸化ケイ素 (SiO2) はフッ素雰囲気下で燃焼し、四フッ化ケイ素 (SiF4) と酸素 (O2) になる。
- 鉄 などとは即座に反応する。他の金属も室温から比較的低温で反応する。
- ニッケル 、銅 、鉛 は、表面にフッ化銅 (CuF2) など、不動態 の皮膜 を形成するので比較的腐食し難い。
- 金 、白金とは主に500℃以上で反応する。
- キセノン とは加熱あるいは光存在下に反応し、フッ化キセノン (XeF2) を生じる。大過剰のフッ素存在下に400℃で加熱すると、二、四、六フッ化物(XeF2、XeF4、XeF6)の混合物を生成する。クリプトン とは光存在下に反応しフッ化クリプトン (KrF2) を生成する。
- ハロゲン元素 とはハロゲン間化合物を生成し、フッ化塩素 (ClF、ClF3)、フッ化臭素 (BrF、BrF3、BrF5)、フッ化ヨウ素 (IF5、IF7) などが知られている。
- フッ素の酸化還元電位 は+2.89(V )で、他のハロゲン 族元素に比べて非常に高い値である。酸素 の+1.21Vより高いため、他のハロゲン化物塩水溶液と異なり、フッ化物塩の水溶液を電気分解 してもフッ素の単体は得られず酸素が発生する。
用途
その性質上、フッ素を単体で使う場面は少なく、フッ化カルシウム (CaF2) と硫酸 (H2SO4) から生成するフッ化水素 (HF) を介して利用されることが多い。ウラン235 (235U) 濃縮のため、揮発性の高いフッ化ウラン (UF6) を製造する目的で単体フッ素が利用されることは、特筆すべき事柄である。
フッ素の化合物は、一般に極めて安定しており、長期間変質しないという特徴を持つ。この性質は環境中で分解されにくく、いつまでも残存するということを意味しており、その使用には注意が必要である。
フッ素樹脂
一般的なポリマー は主に炭素と水素から構成されているが、水素をフッ素に置き換えると全く性質の異なるポリマーが得られる。代表的なフッ素化ポリマー であるテフロンは、撥水性・耐薬品性・耐熱性などに優れた材料として広範囲に使用されている。家庭ではフライパン の表面のコーティングに用いられている。また、フッ素化ポリマーは近赤外領域の透過性が高いため、光ファイバー の材料としても利用されつつある。
冷媒
フッ化の化合物の一種であるフロン (商品名フレオン)は冷媒 として広く使われていた。しかし、塩素原子 を含む一部のフロンはオゾン層 を破壊することが判明したため、塩素原子を含まない代替フロン やフロン以外の冷媒が使用されるようになった。
絶縁性気体
六フッ化硫黄 が使われる。絶縁性能に優れ、主に容量の大きな電力機器で使われている。
屈折率の制御
フッ素にはガラスの屈折率 を低下させる働きがあるため、光ファイバー など通信 の分野において、その屈折率制御にフッ素が使われている。
ウラン235と238の分離・濃縮
フッ素はウラン235と238 の混合物から、核物質として有用なウラン235を分離・濃縮する際に用いられる[1] 。マンハッタン計画 などにおいては原子爆弾 製造のため、より効率的なフッ素製造法の発見・確立に力が注がれた[2] 。
ロケット
清掃
半導体 や液晶 の製造装置に溜まったシリコン などのかすを除去するためにフッ素ガスが使われている。
歯の強化
歯磨剤 へのフッ化ナトリウムやモノフルオロリン酸ナトリウムの配合[3] 、低濃度フッ化ナトリウム溶液による集団洗口(うがい)、歯科医師 ・歯科衛生士 による2%フッ化ナトリウム溶液の塗布がう蝕 予防を期待して行われている。また北アメリカ とオーストラリア では水道水へのフッ化物添加 にも利用されている。
フッ素の毒性については外部リンク を参照
フッ素の化合物
フッ素の化合物はフッ化物と呼ばれる。
金属のフッ化物
- フッ化アルミニウム AlF3
- フッ化カルシウム
CaF2
- 蛍石 - フッ化カルシウムの鉱石
- フッ化水素 HF
- フッ化ナトリウム NaF
- 氷晶石 - 六フッ化アルミニウムナトリウム Na3AlF6 の鉱石
- 六フッ化ウラン UF6
非金属のフッ化物
- 四フッ化炭素 CF4
- 四フッ化硫黄 SF4
- 六フッ化硫黄 SF6
- フッ化キセノン
- フッ化ケイ素酸
- ヘキサフルオロ白金酸キセノン XePtF6
- アルゴンフッ素水素化物 HArF
フッ素のオキソ酸
フッ素のオキソ酸 は慣用名をもつ。次にそれらを挙げる。
| オキソ酸の名称 | 化学式 (酸化数) |
オキソ酸塩の名称 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 次亜フッ素酸
(hypofluorous acid) |
HFO (-I) |
次亜フッ素酸塩 ( - hypofluorite) |
- オキソ酸塩名称の '-' にはカチオン 種の名称が入る。
その他
- モノフルオロ酢酸 CH2FCOOH
- テフロン
- ポリフッ化ビニル
- マジック酸 FSO2OH•SbF5
- 六フッ化リン酸リチウム LiPF6