ミュージカル「スリル・ミー」観劇感想備忘録その2


10/8と10/9の木村達成さん×前田公輝さん回を観劇しました。


達成さんは何作か拝見したこともあり、前々から好きな俳優さんだったので、今回私役が発表された時はめちゃくちゃ嬉しかった。

前田さんは完全に初めましてで、自分が映像方面の俳優さんに疎いこともあり、事前情報も特に仕入れずに観に行きました。


【達成さん"私"】

こんな言い方するの達成さんは嫌がると思うけど、まじで「こういう達成くん"私"が観たかった!!!」に尽きます。

ずっと観たいと思っていた達成くん"私"がそこにいました。ありがとうございます。


あの狂気性ですよ。純粋で直向きで、ただただ"彼"を愛していて、彼と一緒にいられるなら何だってするわけです。

それで"彼"に嫌われるとかは、わりとどうでも良さそう。最後の笑顔を見る限りでは。


前半はちゃんと"彼"に翻弄されてる感があるんですよね。

懇願する側の立場。どうにか"彼"を自分の元に繋ぎ止めておきたい。繋がりが欲しい。身体も心も、契約でも。

『僕はわかってる』のキスシーンですごく嬉しそうな顔をする。当然すぐに曇るけど。

『やさしい炎』での接触も。緊張や不安がありながらも高揚してる。

『契約書』で"彼"の指をナイフで切る側になると思ってるときも嬉しそう。ナイフを渡して貰おうと手を差し出してることもある。


やはり決定的な転換点が『戻れない道』。53歳の"私"と19歳の"私"の交差点。

最後の「信じてた」を歌う表情がまあやばい。だんだん瞳孔が開いていって笑顔になっていく。最高。

達成さん"私"ならではの狂気がしっかりと現れるのはあそこからかなと思っています。


その後はもう止まらないので、各分岐点での"私"の表情をオペラグラスで覗くのが超楽しい。『脅迫状』の「完璧だ」なんかあからさまですよね。

その前の「この悪夢から目覚めたければ他人に言わずに指示に従え」の歌詞から徐々に表情が不自然になっていく。

あの歌詞はそのまま"彼"にも当て嵌まるって改めて感じました。ペアによっては"私"にも当て嵌まるんですが、達成さん"私"にとってはハッピーエンドに向かってますからね。

インタビューにあった通り、「絶対ハッピーエンドにします!」。


長くなるので『99年』まで飛ばしますが、輝かんばかりの笑顔。破顔とはこのこと。

目の前で"彼"が絶望顔しててもお構いなし。"私"のハッピーエンド大勝利。狂気の発露。最高です。

そして珍しく最後の最後、ラストの「スリル・ミー」まで微笑を浮かべて、スポットライトをしっかり浴びた綺麗な横顔で暗転。良い。


率直に言って達成さんのお顔立ちが大変好きなので、あのシーンやこのシーンのお顔がとても美しくて眼福でした。『僕と組んで』のあそことか。


達成さんが持っている「陽」の感じや直向きさが、"私"の無神経さとか一途さとかと相性抜群でしたし、更にそれを達成さん"私"なりの狂気性に持っていってくれたのが流石です。

怖いしサイコパスだけど、不思議と気持ち悪さはなくて、晴々とした感じなんですよね。

いやあ、良いものを観たな。



【前田さん"彼"】

とんでもないですね。前田さんのことを二度と忘れないと思います。ミュージカルは2度目と聞きました。スリル・ミーに出演してくれてありがとうございます。

まず何より演技が上手い。お芝居が上手い。

台詞回しがめちゃくちゃ自分好みでした。句点で息を入れずに滔々と喋る、頭が良くて自分のペースを作るのが好きな"彼"の喋り方ですよね。

前田さんの"彼"というキャラクターを台詞の抑揚やニュアンスに込めるのがまあ上手い上手い。

「お前も同じだよ?」のとことか、聞いた瞬間にあーーこれは好きな"彼"だ!!って思いました。

ちょっとした仕草、表情の作り方、目線のやり方、一挙手一投足が自然で違和感がない。最後の「99年」だけはちょっと過大表現な気もしますが、前田さんの"彼"が一番、壊れていく感じがあるので、マッチしてるとも思います。


前田さんの"彼"は悪魔的で露悪的で蠱惑的。

ナチュラルにサイコパスなタイプの彼でしたね〜。

もちろんいろんな劣等感とかプライドとかも根底にはあるんでしょうけど、そもそもがちょっとやばい人な感じ。

作中での犯罪行為も、"私"への態度も、装ったり作ってるわけじゃなくて『素』なんだろうなと感じさせます。これは前田さんの演技の自然さから来てるとも思う。

諸々の犯罪行為もちゃんと楽しんでるんですよね。放火や窃盗じゃ満たされなくて殺人へ向かうのも納得感がある。

"彼"にはスリル以外に必要なものがあったはずなんですが、少なくとも前田さんの"彼"はめちゃくちゃスリルに飢えてるし楽しんでる。殺人の後「超人」のシーンのまあ楽しそうなこと。


"私"への愛はまあ無いだろうなと思いました。あくまでも支配対象、かつ複雑な感情の行き着いた先なのかな。"彼"は自分を特別だと思ってるし他を見下しているけど、たぶん孤独にはなりたくないんだろうな。

自分を成り立たせるために他人が必要なタイプ。

なので、ある意味「お前じゃなきゃ駄目なんだ」に説得力がありました。確かに"彼"は犯罪行為を"私"とする必要があったのだろうなと思います。


そんな"彼"の「死にたくない」が絶品じゃ無いはずもなく、いやあ堪らなく良かったですね。

99年で"私"の暴露を聞いてからの変化も、信じたくない、受け入れられない、現実もとい"私"から逃げたい、でも目の前にあのキラキラの達成さん"私"がいるっていう、絶望感が最高でした。


ビジュアルもすごく素敵でした〜。スーツお似合いだし、何よりピチッと纏めた前髪が乱れてからが超好きですね。「僕と組んで」以降のビジュがめちゃくちゃ好みです。いやあ、やっぱ「死にたくない」最高だったな。



【総括】

"私"と"彼"のバランスがとにかく良い。

観後感としては王道なスリル・ミーだったんじゃないかなと思いました。

完全に初見の友人を連れて行ったんですが、このペアの回で良かったと心底思っています。

戯曲が持っているストーリー性や構造の巧さ、テンポ感なんかが伝わりやすくて、舞台作品としてある種のカタルシスもある。いまいちな言い方をするとエンタメ性が強い。

イニシアチブの移り変わりも見事だし、"私"と"彼"のキャラクター的な作り方も実に観やすい。

もちろん台詞も聴き取りやすいし歌唱力も申し分ない、というか、達成さんはともかくとして前田さんは何で歌も歌えるんですか??ミュージカル2作目なんですよね??

大阪は日程がタイトだしこの作品マチソワしんどいので、どのペアも1回ずつのつもりだったんですが、このペアだけ2回行くことにした過去の自分に感謝しています。


そういえば、日本スリル・ミーで"私"と"彼"の身長が変わらないのは珍しいですね。若干"私"の方が高く見えた気がしたけど、靴とか衣装のせいか錯覚でしょう。

尾柿以外は全ペア"彼">"私"なのかな?どうしても"彼"の方が背が高いビジュアルを見慣れてしまってるので、その点でも新しいキャラクターを見られてのは嬉しいです。


スリル・ミーってやっぱりペアで作品が出来上がるから、あくまでもこの2人のペアだからこそ生まれた"私"と"彼"なんだと思いますが、これお互い相手役が変わったらどんなスリル・ミーになるのかな〜とかつい妄想しちゃいます。それくらいお2人のパフォーマンスが良かったし、また違うものを見せてくれそう。

お2人ともとも初だし、是非またこのペアでも、ペア違いでも、スイッチでも!再演してくださると!良いですね!