会話自体が義務的になっているので、うっかり、適当な事を言ってたとしても、何と無く成立してたりする。惰性でのコミュニケーションが常態化しているから・・・。

例えば、夫が仕事から帰宅し、妻が出迎える際、、、、



夫「ただいま、、、、ご紹介に預かりました麻生太郎で御座います」
妻「おかえり、、、、食事にする? お風呂にする? それとも、解散する?



あるある。




裕福な資産家の邸宅、、、、令夫人は、午後の一時、読書とお茶を楽しんでいた。

そこへ、使用人の一名が遣って来て、ささやかな憩いを中断させる。



使用人「奥様、お坊ちゃまから、お電話が・・・」

令夫人「あら、なにかしら?」

使用人「それが少しおかしくて、、、、お坊ちゃまの携帯電話からなんですが、通話の相手が別人の男でして・・・」



令夫人は胸騒ぎを覚え、直ぐに立ち上がると、電話口にまで急いだ。



令夫人「はい、代りました。失礼ですが、どちら様ですの?」



すると、全く聞き覚えの無い、どすの利いた、野太い声質が言葉を返してくる。



通話相手『今、お宅の息子さんを預かっている』

令夫人「え? そんな・・・! 息子は、私共の宝物なんです! お願いします! どうか返して下さい!」

通話相手『あぁ、こっちの言う事を聞いて貰えれば、ちゃんと帰してやるさ』

令夫人「要求は何です!」

通話相手『お宅までの道順を教えろ』

令夫人「・・・は?」

通話相手『めんどうなら、住所を伝えろ』

令夫人「如何して・・・?」

通話相手『馬鹿にしてるのか!? お宅に連れて行く為だろ!』

令夫人「・・・迷子?」

通話相手『その通りだ』

令夫人「あの、、、、お名前を教えて貰えますか?」

通話相手『ジャック・バウアーだ』

令夫人「24 -TWENTY FOUR-トゥエンティフォー)の?」

通話相手『もう既に、この通話は、24円分を費やしている』

令夫人「知らないけど・・・」

通話相手『早く、道順を教えるんだ!』

令夫人「あ、息子の携帯電話のナビ機能を使って、連れて来て下さい」

通話相手『ナビ機能?』

令夫人「えぇ、衛星を中継する・・・」

通話相手『衛星を? シーズンⅣから、俺が1年半、カリフォルニア州モハーベで潜伏生活を送っている内に、民間の技術もそこまで・・・!』

令夫人「その随分前からの、結構、一般的な用途ですけど?」

通話相手『くそぉー!』

令夫人「あのー、ナビを使うように伝えてくれれば、息子一人で帰して貰っても構わないので・・・」

通話相手『・・・あなた達をこんな事に巻き込んでしまって、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、本当に、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、済ま』



ガチャン! 令夫人は、一方的に通話を打ち切った。



通話相手『あ・・・!』









これを、どきどきキャンプにやって欲しい・・・。
男が道を歩いていると、散歩中の犬が寄って来て、おしっこを掛けられてしまう。飼い主は恐縮しきりで、飼い犬の不始末を必死に詫び、弁償を申し出る。





男「いえ、構いません。丁度、足元が寒かったので、却って助かりました」





男が更に歩いて行くと、後ろから引ったくりに遭い、手持ちの荷物を奪われてしまう。





男「まぁ、いいか。さっきから重たく感じてたし、その分、身軽になったから・・・」





そうして、男が軽快に進み出すと、猛スピードで突っ込んできた自動車に撥ねられてしまう。加害者の運転手が心配そうに駆け寄り、身を案じて来る。





男「そんなに謝らないで下さい。僕なんか丸で役立たずで、自分が遣りたい事も特に持てなかったし、何と無く死にたかったから、絶好のタイミングでした。一切、未練は有りません。逆に有難う御座いました」





男は死んだ。そして、気が付くと、天国への入り口に立っていた。しかし、管理人らしき相手からは、定員オーバーを理由に、入るのを断られてしまう。





男「分かりました。天国なんて、元々、分不相応だし、申し訳ないくらいだから、身を引きます」





男は自らの意思で、地獄へと落ちる。しかし、赴いたはいいが、結局、門前払いの扱いを受ける。





地獄の門番「お前みたいな奴に与える罰は無いな」





男は、困り果ててしまう。地獄が駄目なら、もう、何処にも行くところが無いからだ。





地獄の門番「お前には、屹度、現世で遣り残した事が有るんだろう。一旦、戻って、すべき事をしてから、又、来な」

男「一体、何を・・・?」

地獄の門番「身近なところを言えば、おしっこを引っ掛けた犬は鍋にして、食っちまうんだ。引ったくりの野郎は捜し出して、半殺しの目に・・・。車で轢いた奴は殺して、此処に、一緒に連れて来ればいい」

男「犬に罪は無い。僕の荷物を盗んだ人も、罪を自覚しているからこそ逃げたんだし、実際、悪気は無かったんだと・・・。僕を車で轢いた人なんか、あれ程、僕を心配してくれたし、到底、責められないよ」

地獄の門番「じゃあ、一旦、天国へ引き返して、入り口にいた野郎を、こっちに、地獄に突き落とせ。奴は、“店員オーバー”なんて嘘を吐いて、体よく、お前を追い払った悪党だ」

男「あんたの方を信じろ、と・・・?」

地獄の門番「天国にいるからって、善良とは限らない、、、、連中は大らか過ぎて、“罪悪”の概念を持っていないだけ・・・。結局、俺が一番、親切だったろ?」

男「だったら、僕を、僕の存在を消してくれ」

地獄の門番「我々は、人に罰を与えるのが役目だ。お前が本気で望めば望む程、それは叶えられない」

男「如何したら・・・?」

地獄の門番「もし、“定員オーバー”云々の話が事実とすれば、奴がいなくなると、一つ、空きが出る訳だろ? 我々としては、お前は受け容れられないが、奴なら引き受ける、、、、収まるところに収まる・・・。これが、バランスってもんだ」

男「そうすれば、必然として、僕も地獄に入れて貰える訳か・・・?」

地獄の門番「陥れようとしているみたいに言わないでくれよ? お前は、そのまま、天国に留まればいいだろ?」

男「善意だろうと、悪意だろうと、自らが動かないのなら、結局は一緒、、、、何も無いのと同じ・・・」

地獄の門番「それを知った上で、、、、さぁ、如何する?」

男「とりあえず、、、、負い目に付け入って、犬の飼い主をデートに誘おう」