電車内にて
「この人、痴漢です!」
女性は、近くに居た男の腕を掴んで、高々と掲げた。
腕を掴まれた男は、初め、吃驚していたが、相手の顔を凝視しながら、不可解そうな表情を浮かべている。
慌てふためかず、逃げようとも、抗おうともせず、余りにも爽快な態度だったので、女性の側は、自分の勘違いかも知れない可能性を覚った。
しかし、この男、、、、紛うことなく、痴漢だった。ただ、男は、もう一つ隣の、別の女性を触っているつもりで、警戒しつつも、全く想定していない方から騒ぎ出された為、単に、対応力を失ってしまったが故に、落ち着いているが如く、そう見えただけの事だった。即ち、何方かと言えば、男の側の勘違いだったのだ。
男は、直、自らの不手際と、自らの幸運とに、粗、同時に気付いたのだが、事実は如何あれ、状況的には、相手の、理不尽な言掛りとして、偶々、完全に成立している訳で、堂々と居直り続ける事が出来ていて、又、それが、女性の側の自信をぐらつかせ、圧倒してしまったらしい、、、、、結局、女性は、次のように詫びる羽目に・・・。
「・・・すみません、、、、私の勘違いでした・・・」
男は、内心、ほくそ笑みながら、余裕を見せて、言葉を返す。
「いえ、こちらこそ」
結局、男は、他の乗客からの追及に会い、鉄道保安官の所に突き出される羽目に・・・。