物凄く慎重で、疑り深い男がいました。他人から言われた話は、客観的な証拠が無ければ、仮令、自分の家族で在っても信用しない程でした。
そんな男の噂を聞いて、悪戯好きの妖精は挑戦心を掻き立てられ、男の許を訊ねます。
男 「おや、あなたは誰ですか?」
妖精「妖精です。覚えてないかも知れませんけど、数年前、ウサギの姿をした私が罠に引っ掛って、身動きの取れなくなっていたのを、あなたは助けてくれたのです」
男 「覚えてませんね」
妖精「それは、罠から放たれた瞬間、私が気を緩めて、妖精の正体を晒してしまったので、妖精界の規則に順い、あなたの記憶を消さなければならなかったのです」
男 「それなのに、何故、今、僕の前に現れるのですか?」
妖精「ちゃんとしたお礼もしないまま、離れてしまって、、、、ずっと心残りだったのです。でも、漸く、管理委員会のお許しを頂けたので、遅くなりましたが、あなたへのご恩に報いる為、参りました」
男 「恩に報いる、、、、というのは?」
妖精「一つだけ、願い事を叶えて差し上げます。何でも仰って下さい」
男 「うーん、信用して良いものか、如何か・・・?」
疑り深い男の警戒心を解く為、先ず、ウサギの姿に変身して見せました。そして、今度は、巨大な竜の姿に変わり、空高く飛翔して見せました。更に、近くの木々達を呼び起し、人間の言葉を喋らせた上に、猶、見事な大合唱を奏でさせました。
男 「これは、見事だ。うん、あなたの話を信じましょう」
妖精は、心の中で、『占めた! 後は、願い事を理不尽な解釈で叶えて、希望から絶望へと、一気に、不幸のどん底に陥れてやる!』とほくそ笑みました。
妖精「有難う御座います。では、願い事を申し付けて下さい」
男 「この幻覚が見えなくなるようにして下さい」