視力の悪い友人が居まして、彼と、数人の仲間同士で、焼肉を食べに行きました。

ある程度、大人数だったし、気楽だろうと思ったから、お座敷の席を予約していました。

さあ、全員が集まり、食事が始まります。一斉に、肉が焼かれ出すと、煙が立ち込めてきます。換気扇の周りが少し弱かったようで、視力の悪い友人の掛けていた眼鏡のレンズが曇ってしまいました。それを見つけた一人が、仲間同士の気安さで、指を差して、笑い始めたのです。


「お前、眼鏡のレンズが真っ白だぞ。自分で、気付かねぇのかよ。今度から、ワイパー付きのやつを持って来いよ。焼肉を食べるとなったら、最初から稼動させとくのな」


眼鏡を使用している人はお分かりでしょうが、こういう時、一度、湯気の付着を拭き取っても、直ぐに又、元に戻ってしまいます。彼は、暫く、様子を見ていただけなのです。しかし、言葉を放ったタイミングが、良かったのか、悪かったのか、、、、座の大爆笑を誘ってしまいまし たので、彼は逆上し、眼鏡を取り外すと、それを、カバンの中に仕舞い込んでしまいました。

気まずい雰囲気が支配して、暫くは、場も盛り上がりませんでしたが、そこは気心の知れた同士、改まって取り計らわずとも、何と無く、普段通りに打ち解けて、最後の方には、賑やかな会合に収まっていました。

さて、食事も済み、帰ろうかという段になって、視力の悪い友人が逸早く立ち上がると、人が出入りする襖戸の方では無く、反対側の窓ガラスの方を引き開けたのです。

それを見て、他の仲間は声を殺しつつも、くすくすと笑い始めました。先程の事も有ったので、彼の機嫌を損ね兼ねないと思ったから、大々的には取り立てられなかったのです。

視力の悪い友人は自分ののミスに気付かないようでしたが、周りの反応が奇妙なのを察して、パニックに陥ってしまったのも知れません。偶々、窓ガラスの側が店の駐車場に面していて、その真下に、偶々、オープンカーの二台が並んで、停まっていたので、彼は混乱しつつも、冷静さを装い、二台のオープンカーを順番に履くと、そのまま歩いて、帰って行ってしまいました。