共に、不良グループのリーダー格で在る二人は、チキンレースを以て、争いの決着をつけようとしていた。
車を運転して、崖へ向かって走り出し、ギリギリ、落下しないよう、より近くに停まれた方が勝ち、、、、一発勝負だ。万が一、同じ接近距離ならば、よりスピードを出していた側、つまり、速く、早く停まれた方が、勇気を兼ね備えた勝者として、認められるのだ。
二台の車は、所定のスタート地点に並び、チェッカーフラッグの代用、コイントスにて、スタートの合図、、、、両者は一斉に走り出す。
相手を窺いながら、鬩ぎ合い、お互い、加速していく。
そして、ほぼ同時、ブレーキを踏み込んだ、、、、タイヤの性能差か、一方は、車体が僅かに滑り過ぎて、停まり切らず、崖底へと落ちて行った・・・。
一メートル手前に停車した一方は、車から降りると、勝者の雄叫びを上げながら、自らの度胸を誇示し、加えて、賢明な判断力を誉望し、駆け付けて来た仲間に、ハイタッチを差し向けたのだが、、、、冷たい目線で、制されてしまう。尚且つ、勝者にとっては、思わぬ一言を浴びせられる。
「人が死んだかも知れないんだぞ、、、、不謹慎だろ?」
勝者の男は、愕然と立ち尽くすばかりだ。その心中は、、、、
「だったら、最初っから、制止しろや!!!」
無論、こんな極端には顕れないにせよ、、、、“度胸試し”なんて、斯様に軽率で、愚かしく、而も、別の要素が絡んでいたりもするのです。
昔、万引をしようとしている少年を見留めたので、声を掛けました。Gメンでは無いし、店の人や警察とかに突き出す為では無く、単純に、注意を与える為です。
「そんなの、欲しい訳じゃないんだろ? 戻しな」
その少年は、普通のノートを盗もうとしていたのですが、、、、僕を睨んで、泣きそうになりながら、自分のカバンを僕に開いて見せたのです。
「欲しいんだよ!」
そのカバンの中に見えたのは、これまた、普通のノートでしたが、新品では無く、使い古された代物でした。ただ、“使い古された”というのは、正確な表現では無いでしょう。その、何冊かのノートには、表紙にだけでも隙間無く、心無い罵詈雑言の文句が書き込まれていました。恐らく、この少年に対する事なのでしょう。
僕が唖然としている間に、少年は走り去ってしまいました。
後から思うと、少年が万引をしようとしていた理由と、僕に(カバンの中の)ノートを見せた理由とは同じで、屹度、自分の境遇を誰かに知って貰いたくて、必死だったのでしょう。
ま、一概には言えないのですが、、、、チキンレースのドライバーに駆り出されるリーダー格の男は、飽く迄もリーダー格の男に過ぎず、チームを実際に掌る、本物のリーダーでは無いのです。
少年が如何なったか? 情けない話ですが、、、、僕は、そのまま放置しました・・・。