ロボットには、心が有りません。
データをインプットされて、プログラムに従い、情報を処理しつつ、応じて、動作するだけなのですから。
<2wq-WER21> この個体は、公園を管理するためだけに設計された、特化型ロボットです、、、、とはいうものの、部品の殆どがリサイクルされたもので、ソフトウェア自体、とある警備会社が開発し、数年前まで採用していた形式に過ぎません。
仕事は、公園環境の保全・修復、そして、来園者への、基本的なサービス等です。
1ヘクタールにも満たない規模では、これを管理するのに、ロボット一体のみでも充分過ぎる程でした。
ある夜、一つの集団が公園に近付いて来ます。彼らは、14、5歳の少年達です。各々、金属バットを手にしていました。徒、日ごろの憂さ晴らしの為だけに、此処のロボットを破壊しに遣って来たのです。
ロボットは、公園に入って来た彼らを見留めると、不恰好な体躯をガタガタさせながら、直ちに駆け寄ります。
「スミマセン、午後10時以降の入場はご遠慮頂いております。猶、通り抜けの際には、私が出口までをご案内させていただ******」
マニュアルの文言が再生し終わらぬ内、一人のフライングを合図に、無軌道な少年達は、ロボットに襲い掛かりました。取り囲まれ、四方八方から振り下ろされるバット、、、、金属同士のかち合う、耳障りな音響が公園中に駆け巡ります。
「止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい」
「この役立たずが! お前なんか、居ても居なくても同じなんだよ!」
「止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい」
「バーカ! バーカ! バーカ! バーカ! バーカ! バーカ!」
「止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい」
「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」
「止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい」
「指図すんじゃねぇぞ! こら! 鉄の塊が! 抵抗してみろ! こら!」
「止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい。止めて下さい」
「もっと、他の事を言ってみろよ!」
「Stop it. iYa basta. Hör auf. Ça suffit comme ça. Fermi 住手、Tumigil ka」
ロボットは、同じ言葉を頻りに繰り返しています。“止めて下さい”、、、、これは、自分の身の安全を求めているのでは有りません。
確かに、ロボットは、危害を人間に加えてはいけません。また、これに反しない限り、人間の命令に服従しなければなりません。そして、これらに反しない限り、自己を護らなければなりませんが、この個体には、人間の命令に服従するよりも優先されなければならない、二番目に置かれる、もう一つ別の原則が備わるのです。
「こいつ、馬鹿みたいに頑丈で、埒が明かんわ。転ばしちまえ!」
一人の指示にて、少年達は協力し、ロボットの胴体を一斉にひっくり返します。そして、可動する、全ての箇所を集中的に攻撃し始めました。
これでは、再び、仮に起き上がれたとしても、まともな活動は望めません。
ロボットは、特有の、合理的な判断に至ります。自分が、もう、役割の全うしえない事を知ったのです。
「お願いが有ります」
「は? そんな立場じゃねぇんだよ、てめえは!」
「お願いが有ります」
「うるせぇな!」
「お願いが有ります」
「聞いてやれよ。この期に及んで、足りねぇ頭が何の文句を導き出すのか、知りてぇな」
「・・・言ってみろよ」
「お願いします。どうか、この公園を荒らさないで下さい」
少年達は、公園を荒らしに来た訳では有りません。このロボットを破壊しに来たのです。
彼らの思考は、一瞬、停止しましたが、互いが悪ぶる事を競い、それを監視しあう間柄が為、暴虐の挙動を再開せずにはいられません。ロボットへの攻めは執拗に続けられて、遂に、一切の機能停止状態へと陥りました。
少年達は、公園に残る事も無く、この場を立ち去って行きました。
結果として、ロボットは、公園の秩序を守る事が出来たのです。
ロボットには、心が有りません。
データをインプットされて、プログラムに従い、情報を処理しつつ、応じて、動作するだけなのですから。但し、人間の側が感情を投影せずに居られず、パーソナリティが形成される事は有るのです。