ビルの屋上にて、飛び降り自殺をしようと、柵を乗り越え、その縁ギリギリに立ち尽くしている男。
「早まるんじゃない! 戻るんだ!」
警察官の呼び掛けにも、一切、反応を見せない。
説得工作も煮詰まったところに、自殺しようとしている男の友人が駆け付けた。
「おい! 俺だ!」
男は振り返り、その友人を認める。しかし、黙ったままだ。
「なにやってるんだ! お前は! 馬鹿な事は止めろ!」
友人の、必死の叫びに、漸く、男は応える。
「もう駄目なんだよ。俺は、此の世の、何の役にも立っていないし、誰の為にもなっていない。生きてたって仕様も無い人間なんだ」
「馬鹿やろう! 勝手に決め付けてんな! お前が気付いてないだけで、お前の人生には、善きにしろ悪しきにしろ、多くの人間が関ってるんだ! これ以上、手を煩わせるんじゃない!」
「そういう事じゃない。電車の席で、偶々、隣に座り合わせただけで、どれ程の印象が残る? 所詮、皆、他人に過ぎない。お前には分からないだろうが、ずっと、俺は孤独だったんだ」
「お前、自分だけが阻害されていて、不幸なつもりか?」
「そうさ。だから、これが最初で最後の、俺の存在証明になる!」
「俺は、、、、俺は、、、、お前の事が好きだ! 愛してる!」
近くに居た警察官は驚いて、目を丸くし、思わず、後ずさった。愛の告白をされた男にしても、ポカンとして、絶句していた。
実は、これは、男が両親を既に亡くしていて、天涯孤独の身の上で在り、それを知っていた友人の、急場凌ぎのアドリブだった。どんな形にしろ、此の世との繋がりを示して、思い留まらせる為の方便だったのだ。許可も得ずに、無関係な、別の人を巻き込む訳にもいかず、尊くも、自らを犠牲にした訳だ。
「これが、此の世に、お前が深く関っていた事の証しだ。死ぬんなら、ちゃんと後始末してからにしやがれ!」
男には、迷いが生じ始めたのか、その、一切の動きが停止してしまった。しかし、やがて、、、、、、、、、、、、、、、
男は、今、友人の目の前に立っていた。自殺を留めて、戻って来たのだ。
「・・・良かった・・・」
友人は、安堵の言葉を述べた。しかし、次の瞬間、男に引き寄せられ、熱烈に抱き締められたのだ。
「え?」
「嬉しいよ! これで、俺が死ぬ理由は無くなった! 有難う!」
「え? え?」
この後、激しいキスが、、、、