賑やかな繁華街。
寄り添いながら、睦まじく行き交うカップル達。
その中の一組に、ヤクザ風の男が絡んでくる。
「見せ付けてんじゃねぇぞ、コラ!」
女性は反射的に、彼氏の背後に身を隠す。
男って、こんな設定に酔うよね。ビビりさえしなければ・・・。
この彼は臆しながらも、逃げずに、勇敢に立ち向かったんです。
あ、この先、ヤクザ風の男の存在に留意する必要は全く無いので、チンピラから因縁を付けられて、ギャラリーが周囲に集まり出している状況を認めつつ、二人(恋人同士)の遣り取りのみを追って行きます。
折々、解説が入りますけどね。
彼女は怖がって、彼の上着の背を摑んでいる。
彼は後ろ手に、彼女の手を優しく握り返す。
「大丈夫、僕が付いてるから」
かっこいいーーー!!! ま、この事態に至って、他の事は言えないわな。
「僕が君を守る!」
素直に、単純に、こう言えば良かったんだ・・・。けど、彼は貪欲に、完璧を期したんだな。
「僕が君を守る!」だと、自分が先に来てるので、いかにもエゴ丸出しだし、ナルシストっぽい。ヒーロー気取りで、いけ好かない感じ。
飽く迄も、彼女を守る方が主題で、優先される事なのだから、言葉としても、彼女をメインに置きたい。より大きな効果を狙った、小賢しい程の配慮だけれども、許される範囲の、必要な演出だと思う。
で・・・、
「君は、僕が守る!」
こう言いたかったんだ。ただ、<君は>も、<僕が>も、どちらも主語なので、文体としてのグレードが上がって、ほんの少し、ホント、ほんの少しだけ、難易度が高い。
それでも、普段なら何て事は無い表現なんだけど、危機に直面していて、緊張と興奮の極限状態。加えて、滅多に訪れない、絶好の見せ場で在るのを認識しつつ、彼は、精神上、過剰な負荷を受けて、既に混乱してしまっていたんだ。
で・・・、
「君は、僕を守る!」
致命的な誤用ですな。
「・・・・・・え?」と彼女。
聞き返されて、テンションは下がりつつも、彼の方は、自らの失敗に気付く余裕は無く、やはり・・・、
「君は、僕を守る!」と繰り返す。
「・・・はい?」
冷めた声で、再度、彼女は聞き返す。
しかし、彼の思考回路は、最も短絡的な結論を導き出す。そうか、聴こえなかったんだ、と・・・。
「君は、僕を守る!!!」
彼女は諦めたように、宙を見上げて・・・、
「そうなんだ・・・」
人間なんだし、ミスは有ります。故意で無ければ、微笑ましく受け止めてほしいものです。
勿論、仮の話ですけどね。