いつものシャンピニオンといっしょに、
「無塩バターを1ポンド分けて欲しい。」
そうお客様がおっしゃいました。
「パンに付けるのは、バターとマーガリン、どちらが本当なの?」
とも。
「どちらも美味しいです。バターが美味しい日もあれば、マーガリンの方が美味しい日もあります。」
「いやね、実は昨日見つけた本に、有名なパン屋さんのオーナーの話が載っててね。フランスパンは塩味のパンだから、無塩バターで食べるのが「通」の食べ方だっていうのよ。」
「試してごらんになるといいですよ。」
翌日、
「なんだか後味が油でしつこくて私の口には合わなかったわ。」
「そうですか。僕も好きじゃありません。ふつうに塩が使ってあるバターやマーガリンの方が、パンを含めて、その味や風味がより引き立って美味しく感じます。」
「そうよね。」
「そういったコメントは、新しい食べ方を知る参考やきっかけにすればいいんですよ。それしかない、正しい回答というわけではないと思いますよ。たしかに、無塩バターしか使わないフランス人を何人か知ってますが、彼らとは味覚も嗜好もずいぶんちがいますからね。もっとご自分の味覚を信じて、食べることそのものを楽しんじゃっていいんじゃないかと思います。」
「そう?」
「はい。」
まさか僕が、その「オーナーさん」のことを知っていて、
彼はあまりパンが好きじゃなく、
いつもパンを食べ残すことや、
その話が誰からの受け売りであるということまでは、
さすがにお話しできませんでした。
ヤなヤツだな、俺。 パン衛門
